手助け
時は少し遡って、フィオナが部屋から出るほんの少し前。俺は手持ち無沙汰にしているルッカに話を切り出した。
「ルッカ、買い物に行こうか」
ルッカはきょとんとしながらも頷く。
「分かったんだぞ。何を買いに行くんだぞ?」
普段はフィオナとルッカが買い物に行ってくれるし、フィオナがご飯を作ってくれるが。
「たまには出来合いの物でもいいでしょ?フィオナに今日は休んでもらおうかと思ってね」
ルッカは名案だと言うように手を打って賛同してくれる。
「肉!……野菜も多めにするんだぞ」
フィオナのことを思ってか、そう言うルッカの頭をよしよしと撫でる。少し照れたように俯きながら、甘んじて撫でられるルッカ。
「スーパーにいくんだぞ?」
話題を変えるようにルッカが聞いてくる。
「今日はね、デパートに行くよ」
俺はそう言うと、フィオナが出てきた時のために温かいお茶と、買っておいたサラダスティックを机に置き、書き置きを挟んだ。準備が整うと、ルッカを連れて家を出る。
「デパートはスーパーとは違うのか?」
俺はうーんと唸りながら、なんて説明しようかと考える。
「スーパーは必要な食材を買うお店だよね」
ルッカは「そうだぞ」と、なんでそんな当たり前のことを聞くのかという顔で答える。
「デパートはね、『特別』を買うお店なんだよ」
ルッカはさらに不思議そうな顔になる。頭の上に?マークが浮かんでいるようだ。
「例えば、スーパーで買えるものは手軽な値段で毎日のご飯になるけど、デパートは違うんだよ。デパートで売ってるお惣菜は、それぞれ専門のお店が作っていたり、野菜やお肉もより良いものをと選び抜かれたものだったりするんだ。その分お値段は高いけど、普段とは違うちょっと贅沢な、特別な日にしちゃうんだ」
ルッカは「特別なご飯……」と、今にもヨダレを垂らしそうな顔でどこか違うところを見ている。沢山の美味しいものに囲まれている自分を想像しているのだろうか。
「辛いことがあったり、悲しいことがあってもさ、そういう特別な日にしちゃえば、今日は結局いい日だったなって思えるじゃない?そう思えたら幸せじゃない?」
「なるほど、確かにその通りなんだぞ!今日は特別な日にするんだぞ!」
2人で大きな通りを歩きながら、どんな料理が食べたいか、フィオナには何を買って帰ろうかと、今日を特別にするための話し合いをした。
「すごく……大きいんだぞ……」
スーパーとは比較にならない建物の大きさに、一瞬たじろぐルッカ。
「食べ物以外にも沢山売ってるからね……」
エスカレーターで地下へ下り、お惣菜のお店が並ぶエリアへとやってくる。いわゆるデパ地下である。
「色々あるよー、迷っちゃうね」
隣を見るとルッカがいなかった。はぐれたかと思って慌てて周囲を探すと、ルッカは店の前でショーケースを食い入るように眺めていた。近づくと、ルッカは俺に気付いてショーケースを指さす。
「あ、あれを見るんだぞ!肉のお寿司だぞ!」
綺麗にさしの入った肉が上に乗った、見事なお寿司の盛り合わせ。ルッカのテンションは最高潮だ。
「美味しそうだね、少し値段は張るけど……」
少し悩んだが、ルッカが食べたいならと三人分注文することにした。
「食費分は出すんだぞ?」
以前、食費を自分で稼いだルッカが足していたことが発覚してからも、ルッカは「お世話になりっぱなしは良くないんだぞ、出させてほしいぞ」と食費を出してくれている。すごくありがたいのだが、そのたびに隣でフィオナが申し訳なさそうな顔をするのが少し辛い。
「今日は気にしないでいいよ。いつもありがとう。普段稼いでくれているルッカへの、頑張ってくれているフィオナへの感謝の証でもあるから」
「すごく嬉しいんだぞ、ありがとうなんだぞ!」
包んでもらった肉寿司を、斜めにならないよう上機嫌で大事そうに持つルッカだった。




