表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
異世界の王女は現代で異世界の夢を見るか  作者: うあこ
第四章 二人の王女とお店経営
PR
100/107

クリスマス・パーク

 翌日の朝、俺は爆睡していた。プレゼント作戦を決行する為に休みを取っていて本当に良かった。色々あり過ぎて脳もお疲れモードなのだ。そんな俺を待ちきれないとばかりに、ルッカがウキウキとした顔で起こしにきた。


「凪、起きるんだぞ!」


「んー……もう五分だけ……」


「そんな漫画みたいなこと言ってないで起きるんだぞ!」


 布団を剥ぎ取られて無理やり起こされた。眠たい目を擦りながら布団から這い出ると、急かすように布団まで片付けられてしまう。


「プレゼントを開けるんだぞ! 朝ごはんも出来てるんだぞ!」


 どうやら開封は我慢していたらしい。微笑ましく思いながら、俺はルッカに「着替えるから」と声を掛け、先にダイニングへ行ってもらう。


 身支度を整えて向かうと、既に朝ごはんが用意されていた。


「今日は御寝坊さんね」


 そう笑うフィオナは、昨日の事など無かったかのようにいつも通りだった。


「おはよう、まぁたまにはね」


 席に着くと、皆で食べ始める。昨日の夜が重めだったので、今日の朝はあっさりめのメニューになっている。


「今日も美味しいよフィオナ」


「ありがとう。そう言って貰えると作りがいがあるわ」


 和やかな朝ごはんの時間を楽しんでいると、唐突に黒いモヤが発生した。カルミラたちがやって来たようだ。


「邪魔するぞ」


 ヌッとモヤから顔を出すカルミラに、ルッカが食べながら答える。


「邪魔をするなら帰るんだぞ」


「それは失礼したのう」


 本当に顔を引っ込めたカルミラに、俺は思わずツッコミを入れた。


「いや、新喜劇かよ!」


「ナイスツッコミじゃ凪よ。もう教える事は何も無いのう」


「最初から何も教えてもらってないよ」


 何だか妙にテンションが高い。そう思っていると、モヤから這い出てきたカルミラの後に、ゼラとセレフィアも続いて出てきた。


「セレフィアはお店があるからよく会うけど、ゼラはなんだか久しぶりな気がするね」


「僕もそー思う。もっと遊びに呼んでくれたりしてもいーんだよ?」


 プルプル震えながらそう言うと、ゼラは凪の肩へぴょんと飛び乗った。


「わっと」


 少し驚いたが、ゼラは難なく着地する。


「それで、今日はどうしたのかしら。店は今日はお休みだって言ってあったわよね?」


 フィオナの言う通り、今日は店を休みにしている。せっかくのクリスマスだし、皆で何かして遊ぼうかと話し合っていたのだ。


「わしらも混ぜて貰おうかと思っての。セレフィアから聞いたぞ? 今日はクリスマスとやらで遊ぶのじゃろ?」


「ルッカから聞いたもんねー!」


 セレフィアがにししと笑う。どうやらルッカから話を聞いたセレフィアが、更にカルミラへ話したらしい。


「遊ぶのはいいんだけど、実はまだ何をするかも決まってないんだよね」


 色々話し合ってはみたものの、これだというものに決め切れないまま今日を迎えてしまった。


「そうじゃのう。本番は夜じゃからな。夜はパーティをして、プレゼント交換などが良かろう。盛り上がる事間違いなしじゃ」


「まぁ、その辺は定番だけどね。それまで何をしようか」


 問題は夜までの時間だ。皆で楽しめる何かを考えていると、俺はふとイーリンへ視線を向けた。


「イーリンも一緒に楽しめるようなのがいいな。外に出るなら認識をズラす魔法は必須だろうけど、出られない訳じゃないから色々選択肢があって迷っちゃうね」


「はーい! ルッカに提案があるんだぞ!」


 キラキラした目をして、元気よく手を上げたルッカは、そのまま勢いよく提案する。


「皆でユ〇バに行くんだぞ!」


「ユ〇バかぁ」


 俺はすぐさまスマホを取り出し、チケットの販売状況を確認する。


「やっぱりエクスプレス・パスは売り切れだね。クリスマスは激戦区だから……普通のチケットならなんとか買えそうだけど、アトラクションはあんまり乗れないかも。それでもいい?」


 ルッカは残念そうに肩を落とした。


「そうなんだぞ……」


「まぁいいじゃない。クリスマス感を味わいながら楽しみましょうよ」


 フィオナが優しくルッカの背中をトントンと叩いて慰める。


「認識をずらして順番を入れ替えたら早かろう? いくらでも乗れるぞ?」


 そんな悪魔みたいな事を言うカルミラを、俺はすかさず窘めた。


「ダメに決まってるでしょ。悪用厳禁です。というか、アトラクションに乗る度に魔法を使わないといけないんだよ? 魔力が物凄く必要になるんじゃない?」


「そうね、ちょっと現実的じゃないわね」


 フィオナも俺の言葉に頷く。自分たちの為に、他人の楽しい時間を奪うなんて許されるはずがない。


「僕は行ってみたいなー。楽しいところなんだよね?」


 ゼラはすっかり乗り気らしく、楽しそうにプルプルしている。


「あーしも興味ある! 絶対楽しいっしょ!」


 セレフィアも賛成なようだ。俺はそのままネットでチケットを購入する事にした。


「えーと、何人分必要なのかな」


「わしじゃろ? 凪とフィオナとルッカ、それにセレフィアで五人かの。ゼラとイーリンは子供枠で良かろう」


「じゃあ大人五枚と子供二枚でいいかな」


 何とかチケットは購入出来た。後は時間との勝負である。


「よし、そうと決まれば急ごう。ユ〇バは待ってくれないぞ!」


 急いで朝ごはんを片付けると、俺たちは出掛ける準備を始めた。カルミラたちは特に準備するものもないので、ダイニングの隅で俺たちが終わるのを待っている。


 準備を済ませ、庭へ出るとイーリンを回収し、ゼラと共にフィオナに魔法を掛けてもらった。これで二人は周囲から子供のように見えるらしい。


「よし、行くぞ!」


 俺自身、テンションが高まっているのを感じながら、皆で家を飛び出した。


 電車に揺られる事一時間四十分。到着した頃には、ちょうど九時で開園時間だった。


 俺はスマホを取り出してQRコードを表示させると、読み取り機へ翳す。そうして全員がゲートを潜り、中へと入っていった。


 クリスマス当日ということもあり、パークの入り口から既に華やかな空気に満ちていた。巨大なリースに、赤と金の装飾。通りに響く陽気なクリスマスソング。見渡す限り、どこもかしこも祝祭一色だ。


「わぁ……本当に素敵ね」


 フィオナが感嘆の息を漏らす。エメラルドの瞳は、きらきらと輝く飾り付けを映していた。


「すごい人なんだぞ!」


 ルッカはきょろきょろと辺りを見回しながら、落ち着きなく胸を躍らせている。尻尾でもあれば、今頃ぶんぶん振っていたに違いない。


『はやく行こうよ!』


 イーリンがホワイトボードを掲げる。もちろん周囲の人には、可愛らしい子供がボードを見せているようにしか見えていない。


「そうだね。でも、はぐれないように気を付けて」


「迷子になったら楽しむどころでは無くなるからのう」


 黒い日傘をくるりと回しながら、カルミラがくすりと笑う。冬の日差しは弱いとはいえ、吸血鬼である彼女には少々眩しいらしい。


「お腹もペコペコになっちゃうねー」


 ゼラがのんびりとした口調で言う。


「まぁまぁ、今日は一日遊び倒すっしょ! クリスマスとかテンション上がるし!」


 セレフィアは両手を広げ、その場でくるりと回った。


 七人で歩き出すと、それだけで周囲の賑わいが更に増したように感じられる。


 まず彼らが向かったのは、〇ョーズだった。


 ボートに乗り込み、静かな水面を進んでいく。最初は余裕そうだったフィオナも、巨大なサメが飛び出した瞬間、思わず凪の腕へしがみついた。


「きゃっ……! な、なかなか迫力があるのね」


「ふふ、少し驚いたかの?」


 カルミラがからかうように笑う。


「カルミラだって、少し肩が揺れてたよ」


「み、見間違いじゃろ。わしは吸血鬼じゃぞ?」


 俺の指摘に、カルミラはそっぽを向きながら強気に答えるのだった。


 次に立ち寄ったのは、クリスマス限定のフードワゴン。温かなチュロスや、見た目も華やかなホットドリンクが並んでいる。


『これ食べたい!』


 イーリンがボードを掲げて指差したのは、赤と緑のトッピングがされたクリスマス仕様のチュロスだった。


「僕もそれー!」


 ゼラもぴょんぴょん跳ねて賛同する。


「じゃあ、皆で色々買って分けようか」


 凪の提案に、全員が賛成した。


 甘い香りに包まれながら食べ歩きを楽しみ、時にはショップを覗き込む。クリスマス限定のぬいぐるみやオーナメントに、フィオナとセレフィアは目を輝かせ、ルッカは細かな装飾の作りに感心しきりだった。


「この細工、なかなか見事なんだぞ」


「だねー、めっちゃかわいくて綺麗だよね!」


 昼にはアトラクションをいくつも巡り、笑い声は絶えなかった。


 そして、日が傾き始める頃。パーク中央にそびえる巨大なクリスマスツリーの前へとやって来る。


 無数の光をまとったその姿は、昼間ですら圧倒的な存在感を放っていた。


「夜になったら、もっと綺麗なんだろうね」


 凪がそう言うと、皆一斉に頷いた。


 やがて空が藍色に染まり、ツリーへ灯りがともる。


 その瞬間、周囲から一斉に歓声が上がった。


 無数のイルミネーションが宝石のように輝き、まるで星空がそのまま地上へ降りてきたかのようだった。


「……綺麗」


 フィオナがぽつりと呟く。


『すごいね!』


「キラキラだねー」


「これは見事じゃの」


「やば、めっちゃエモいんだけど!」


 誰もがしばし言葉を失い、その光景へ見入っていた。


 やがて始まった夜のショーでは、音楽と光、そして舞い散る雪の演出が一体となり、幻想的な世界を作り出した。


 降り注ぐ白い雪に、イーリンとゼラは大はしゃぎだった。


『雪だー!』


「本物みたーい!」


 セレフィアも笑顔で手を伸ばし、ルッカは降る雪を掌で受け止めようとしている。


 カルミラは日傘を閉じ、柔らかな雪を見上げて目を細めた。


「こういうのも、悪くないの」


 その表情は、とても穏やかなものだった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ