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第25話 悪役令嬢

「むにゃむにゃ……」

 ん……。

 ……あれ?

 たしか授業を受けていたはずなんだけど、いつの間にか寝ていたみたい。

 私の名前はコムギーノ・カホ、14歳。

 詳しくは第1〜3話を見てほしいけど、なんだか今はそれどころじゃないかも。

 ここはどこ?

 大きな天蓋付きのベッド。

 広くてよく整理された豪華な部屋。

 なんだか花のようないい香りもする。


「おはようございます、お嬢様」


 誰!?

 声のするほうを見ると、白髪で黒い燕尾服を着た初老の男性が立っていた。


「えっ……?」


「朝食のご用意が整っております。

お支度が済みましたら、お越しくださいませ」


 そう言うとその人は部屋を出ていった。

 ……ご飯って言ってたね!

 よくわかんないけど、食べに行こっと!

 私はそのへんに置いてあった服に着替える。


「わー……素敵な服!」


 ドレスみたいでなんだか貴族になった気分だなー!

 テンション上がって、つい30分くらいコサックダンス踊っちゃった!

 よく見ると部屋の隅に全身鏡があった。

 私は振りのチェックをしようと鏡の前に――


「あれ?

……えー!」


 そこに映っていたのは……私じゃない!

 なんだかちょっとキリッとした目つき、金髪でドリルみたいな髪。

 ……夢?

 まあいっか!

 そろそろご飯食べよ!

 るんるんで部屋を出て、ご飯を探してるんだけど……。

 ここ広すぎて、どこ行けばいいかわかんないよー!


「お嬢様、どうなさいましたか?」


 あっ、さっきの人!


「ご飯どこにあるの?」


 その人は少し困ったような顔をして私の顔を覗き込む。


「まだお目覚めになっていないようですね。

ではご案内しますので……」


「ありがとー、おじいちゃん!」


 今度は不思議そうな顔をして私をじっと見つめてきた。


「お嬢様、わたくしはここ『アクヤク家』の執事『セバス』でございます」


【説明しよう!

 あらゆる作品の執事の名前は――

 だいたい『セバスチャン』を元にした名前なのである!】


「じゃあセバスさん!

食べに行こ!」


「……?」


 セバスさんは不思議そうな顔を崩すことなく私をご飯の元へ連れて行ってくれた。


 ◇


 わたくしの名前はセバスチャン。

 元Aランク冒険者です。

 その戦闘の腕をアクヤク伯爵様に買われ、執事をしています。


【説明しよう!

 あらゆる作品の執事は――

 だいたい強いのである!】


 今日のお嬢様……『レイジョ様』の様子がおかしい。

 現在15歳のお嬢様は、9歳の頃からわたくしをゴミを見るような目で見ているはず……。

 それに、いつもなら少し近寄っただけで――

 『臭いから近寄らないでくださいまし!

オホホホ!』

 と、酷い言葉をお使いになる。

 今、目の前にいるお嬢様は素直で、元気で、可愛い。

 まるで9歳未満だった頃のよう。

 今日のお嬢様の笑顔は――眩しすぎる……!


「おいしかったー!」


 お嬢様はシャトーブリアンのステーキをわんぱくに食べ終えた。

 そこであることに気づく――

 間違いない……。


「お嬢様……少々お話があるので、訓練場までお越しいただけますか?」


「わかったー!」


「では、こちらへ……」


 そうしてわたくしは、屋敷から少し離れた訓練場へお嬢様を案内した。


「お嬢様……いえ、あなたは何者ですか?」


「なにもの?」


 とぼけているのですか……!?


「あなたはステーキの付け合わせに入れてあるピーマンとニンジンのグリルをおいしそうに食べました。

お嬢様の健康を考えてご用意しているものですが、お嬢様は野菜嫌いで小さい頃から一切手を付けたことがありません!」

「9歳未満の頃から!」


 きっと悪魔に身体を乗っ取られ……いや、天使か?


「お嬢様はそんないい子じゃありません!

正体を現しなさい!」


 ……しかし、それなら今のほうが良いのでは?と思っていたそのとき!


「あっ!

そういうことか!」


 その天使は自分の頭を掴み――

 ズルっと見知らぬ少女を取り出した。


「いやーこの人、私じゃないと思ってたんだよね!

……ってセバスさんが倒れちゃった!?」

「もしかして私、またやっちゃったー!?」


【セバスチャンは気絶していた。

 目が覚めて元のお嬢様に戻っていたのを見て、なぜか悔し涙を流したという。

 カホが抜けたお嬢様は、激しいコサックダンスの影響で2年間ずっと筋肉痛に悩まされたという。】

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