第18話 女の子が次々と集まってくるんだけど、もしかしてやっちゃいましたか?
「もう朝!?」
「いっけなーい! 遅刻遅刻ー!」
【まだ少し肌寒い空気を浴びながら、商店街の歩道で慌てふためく女の子。
彼女の名前はコムギーノ・カホ、14歳。
くわえた食パンに舞い降りた桜の花びらからは、春の香りが漂ってきていた。】
久しぶりに寝坊しちゃったな!
私が見通しの悪い曲がり角を曲がったそのとき――
『ゴチーーーーン!』
いたたた……って!
大丈夫!?
目の前には私と同じ制服を着た女の子が倒れていた。
「脚すりむいてるよ!
ヒール!
はい治った!」
「あ……ありがとうございます……。
あ、あれ……?」
もしかして、まだケガしてる!?
「まだ痛むの!?」
「えへへ……びっくりしちゃって立てないみたいです」
大変!
この子もチコク魔法学校の生徒なら……もう遅刻だ!
私はこの子を抱えて立ち上がった。
「え……!?
きゃっ!」
「しっかりつかまってて!」
「はい……♡
あの、お名前はなんていうんですか?」
「コムギーノ・カホだよ!」
「カホさん……」
「わ、わたし!
1年のユーリ……『ユーリ・ガーチ』っていいます!」
ユーリちゃんって言うんだ!
でも――
「そんなことより!
早く行かないと遅刻しちゃうぞ!」
ユーリちゃんの鼻をちょんと突っついて、遅刻の危機を教えてあげた。
「はい……カホ様♡」
そうしてユーリちゃんを抱えて全速力で学校へ向かった。
◇
ユーリちゃんを教室に送ったあと、急いで走る。
教室まであと少し……!
あれ?
目の前に走ってる女の子はもしかして!
隣のクラスの『ツンデ・レイ』ちゃん!
……って!
「ちょっと待って!」
必死で引き止めると、レイちゃんは立ち止まって気づいてくれた!
「え……なんですか?
あなたは……同じ学年のコムギーノ・カホさん……?」
レイちゃんの元へゆっくりと近づき……サッと髪をなで――
「きびだんご……髪についてたよ」もちっ
「え……♡
か、顔が近いですわっ!」
本当だ!
顔と顔の間、距離にして5センチメートルだった!
「よかった!
きびだんごが落ちちゃうとこだったよ!」
「そ、そんなことで呼び止めないでくださいな!
もう授業が始まるんですのよっ!
早く行かないと……」
たしかに、いつ廊下の向こうから先生が見えてもおかしくない時間だ!
「せっかくお話してたのにちょっとさみしいけど……」
「な、何を言ってますの……?」
「きびだんご貰ったし……私、レイちゃんと一緒に遅刻ヶ島に行く『お供』だね!」ニコッ
「……♡」
「レイちゃん?」
私を見つめて固まってる?
「はっ!
ぜ、全然!
素敵な笑顔だなんて思ってないんですからねっ!
ごきげんようっ!」
そう言い残して、レイちゃんはそそくさと教室に入っていった。
どうしたんだろう?
◇
1時間目が終わったし、食堂行ってジュース買おっと!
朝急いでたから喉乾いちゃった!
何にしようかなー?
……ってあれ?
小さい女の子が自販機の上のボタンを押そうと一生懸命背伸びしてる!
「どれがほしいの?」
「ひ、ひとりで押せるから……」
「無理しないで!
これだね!」
私は女の子のすぐ後ろから缶コーヒーのボタンを押した。
『ガコンッ!』
「……ち……ちかいよ……♡」
「あっ!
ごめんね!」
小さい子だと思って、左手で引き寄せるように抱きしめてたけど、この子もチコク魔法学校の生徒で12歳以上ということだ。
さっきレイちゃんに近いって言われたばっかりなのに、反省しなきゃ!
「ううん……なんだかボク……ドキドキしてる……♡」
「ドキドキ?」
どうしたんだろう?
「ボクは3年のヤンデ・レイ」
「あっ、私は2年のコムギーノ・カホ……って! えっ!?」
先輩だったのー!?
「カホ……好き♡」
えっ、うれしいー!
「私も先輩可愛くて好きですー!」
「だめ、ヤンデって呼んで♡」
「ヤンデ先輩!」
「呼び捨てにして♡」
「ヤンデ!」
「カホ……♡
ボクだけを見て……♡」
「見てるよ!」
そのあと家に帰るまでヤンデは私にぴったりくっついてきたけど授業大丈夫だったのかな?
◇
次の日のお昼休み。
今日はヤンデが私にお弁当を作ってきてくれたみたい!
待ち合わせ場所の校庭に到着すると――
「カホせんぱーーーい♡」
「あっ!
ユーリちゃん!」
「せんぱいにお弁当作ってきたんです♡
食べてください♡」
ユーリちゃんも!?
うれしー!
「カホ……」
あっ、ヤンデ!
もう来てたんだ!
「その女……だれ?」
するとユーリちゃんが元気に返事した。
「わたし、ユーリっていいます!
昨日カホ様に、初めて……きゃー♡」
「コムギーノ・カホ!
一緒にお弁当食べてあげてもいいんだからねっ!」
「……ってヤンデお姉様!?」
あっ!
ツンデ・レイちゃんも来た!
……ってヤンデお姉様!?
姉妹なの!?
「カホ……ボク以外の女と……。
許さない許さない許さない許さない許さない許さない許さない許さない許さない許さない許さない許さない許さない許さない許さない許さない許さない許さない許さない許さない許さない許さない許さない許さない許さない許さない許さない許さない」
「えっ!?」
「もしかして私、またやっちゃったー!?」
【なんやかんやあって皆で仲良くお弁当を食べることになったカホ。
ヤンデのお弁当に入っていた大量の睡眠薬をバクバク食べても何の変化もなく、ヤンデは困惑したという。】




