おっさん、少女を助ける
「これが異世界か……」
熊の魔物……普通の熊すら動物園でしか見たことないが、それよりもずっと大きく爪も牙も長く鋭い。
いざ目の前にすると足がすくむ。
「た、助けて……」
少女は既に足に大怪我をしていた。
「おい!
なんとかならないのか!?」
《全属性魔法適性を確認……。
電気魔法を推奨。》
「魔法だって!?
どう使うんだよ!?」
《魔法補助開始。
対象に手の平を向け、脳内で矢をイメージしてください。》
そんなんでどうにかなるのか……?
でも、今はこいつに頼るしかない!
《魔法認証完了。
詠唱開始。》
その瞬間、右手から電気が発生し、矢を形作った。
『バシュンッ!』
「ガアアァァァー!」
熊の魔物は激しく痙攣し、その場に倒れた……。
一撃だ。
「すげぇ……」
これが魔法……!
いかん!
そんな場合じゃない!
少女はかなり出血し、意識もなくなっているようだ。
「おい!
魔法……回復魔法はないのか!?」
《激しい裂傷を確認。
《ハイキュア》を推奨。
対象に手の平を向けてください。》
「わかった!」
優しい淡い光が両手に発生し、少女を包むように光が移っていく。
《対象の回復を確認。
意識回復まで残り32分。》
「そこまでわかるのかよ……」
チートスキル様々だな。
このまま放っておけない……この少女が目を覚ますのを待つか。
◇
「ん……私……」
「気がついたか!?」
「え?
きゃ……きゃーーー!」
目を覚ました少女がぽかぽかと殴りかかってきた。
「いててててててて!
おい、よく見ろ!
人間だ!」
「あっ!
……なんで!?
私……キングベアーに襲われて……足も……」
「あいつはこの俺が倒した!
ついでに、その傷もな!」
少女はそれを聞いてしばらくポカンと動かなくなった。
もしもーし、大丈夫ですかー?
「キ、キングベアーを1人で倒すなんて……総ステータス5000万クラスのAランク冒険者でもないと不可能です!」
いきなり勢いよく口を開く少女に圧倒され思わず防御姿勢を取った。
ってAランク冒険者……?
《キングベアー。
危険度Aランク。
野生種最強クラス。》
そんなヤバイやつだったのか……Aランク冒険者ってのも名前の通り最上級クラスの冒険者なんだろう。
というか戦い方も知らん俺がそれを倒すとか、チートスキル凄すぎないか?
「あの……いくらお支払いすればよろしいでしょうか……?
……といっても、私に冒険者を雇うお金は……」
「金?
いらんいらん!」
「そういうわけには……あっ、そうだ!
もうじき日が落ちますし、ぜひ私の家に泊まっていってください!」
「いやいや!
女の子が簡単にこんなおっさんを泊めちゃいけません!」
この世界は貞操観念というものが無いのか?
俺の言葉を聞いた少女は少し顔を赤らめ、
「は、母も住んでますから!
……あなた様は見たところ流れの者みたいですし、泊まるところを探していたのでは?」
そういうわけではないんだが……『ぐぅ~』
腹が鳴った。
「……お食事も用意しますよ?」
「……そ、そういうことなら仕方ないな」
腹が減ってはなんとやらというからな……。
「申し遅れました」
「私、マーナと申します」
◇
町に着いて、マーナの家に入る。
家の中はきちんと整頓されていてマーナの生真面目さが伺えた。
「トスロー!
そこのテーブルで少し待っててください!」
町に向かう途中で自己紹介は済ませたが、やはりこの世界では俺の名前は珍しく発音が難しいみたいだ。
そして、マーナが病気の母親のために森へ薬草を採りに行っていたことも聞いた。
なんだか、日本に残してきた親父のことを思い出す……。
まてよ?
俺のチートスキルでマーナの母親を治せるんじゃないか?
《スキル《鑑定》を推奨。》
でかした《賢者》!
「マーナ!」
俺はマーナの元へ向かうと、マーナは母親に作った薬を飲ませているところだった。
「トスロー?
どうしました?」
「ちょっと見せてくれ!」
《鑑定》!
『ハーナ・フローラ
人間族
状態:病
ヘルラットウイルスに侵されている』
ヘルラットウイルス……?
《魔物、ヘルラットに噛まれたときに発病する確率が高いウイルスです。》
《診断中……。
ハーナ・フローラの健康状態は一刻を争います。
病状の進行具合から、死亡まで推定3ヶ月。》
なんだって!?
どうすればいいんだ!?
《スキル《錬金術》でエリクサーを生成可能。》
《必要素材一覧。
アオギリ草
世界樹の葉
綺麗な水
魔物の爪。》
……よし!
魔物の素材は高く売れるとマーナに聞いたから、さっきの熊はアイテムボックスに入れてある。
それに、町へ向かうときに綺麗な川の水も汲んできている。
あとは!
「マーナ!
アオギリ草と世界樹の葉はあるか!?」
「えっと……アオギリ草は今日採ってきたものがあるけど……?
世界樹の葉は最高級品で手が出ないのもあるけど、採取場所も限られてて取り寄せるだけでも半年は……」
くっ!
助ける方法はすぐそこにあるのに……。
《計算完了。
キングベアーの爪の鮮度を考慮。
世界樹の葉なしでのエリクサー生成の成功確率63%》
確実とはいえないが……世界樹の葉を待ってられるほど時間は無い!
……やるしかない!
「錬金!」




