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第10話 異世界の食事

「お腹へったー!」

 私、コムギーノ・カホ! 14歳!

 ド田舎育ちのパン屋の娘で、チコク魔法学校2年生!

 詳しくは第1話を見てね!


【説明しよう!

 ここ、チコク魔法学校は――


 天才魔法使い!


 魔法IQ200のクイズ王!


 シリーズ累計1200万部『魔法のスパイス』の著者!


 など!


 数々の有名人を輩出している由緒正しき魔法学校である!】


 今日はお弁当忘れちゃった!

 だから学生食堂でお昼にするよ!

 どんなメニューあるのかな?

 楽しみー!

 ……ってあれ?

 みんな無表情で機械みたいに、ただ食べ物を口に運んでる……。

 おいしくないのかな?

 あっ! クラスメイトのモーブくん発見!


「何食べてるの?」


「なにって……パンだよ、見ればわかるだろ?」


 パン!?

 これが!?


【説明しよう!

 ここ、チコク魔法学校のある『イケナイ国』の主食はパンである!

 しかしそのパンは!

 小麦粉を少量の水で練って焼いただけのパンなのである!

 つまりこの世界の食事は――

 かなり遅れているのである!】


「食事といえばこれが常識だろ?」


 そう言ってモーブくんはそのパンをガリガリと食べ始めた。

 よく見たらみんな同じものを食べてる……というか、そもそも食堂にメニューが無い……。

 そのとき――


「ほんとかよヘンリー!」


 食堂の一角で驚きの声が上がった。


「はい、このパンを大量の水に漬けると……見ていてください」


 そう言うとヘンリーくんはバケツに用意された水にパンを突っ込んだ。

 食堂にいた全生徒が注目している中――


 『ザバァッ……!』


 ヘンリーくんは水の中からパンを取り出した。


「このように、ふにゃふにゃになって食べやすくなるんですよ」


「「「えー!!」」」


 さっきまでガチガチだったパンが、短時間でブヨっと柔らかくなっていた。


「めっちゃ柔らかいぞ!」


「おいおいヘンリー、どんな魔法使ったんだよ!」


 ヘンリーくんはメガネをキラッと光らせる。


「これは魔法ではありません、科学というものですよ。

パンは濡れると柔らかくなるんです」


 その瞬間、食堂内は大歓声に包まれた。


「おまえ、天才かよ!」


「いえいえ、お風呂でパンを食べていたときに、たまたま発見しただけですから」


 メガネをクイッと上げ、ヘンリーくんは微笑んだ。


「それじゃだめだよ!」


 あっ……思わず叫んじゃった。

 全生徒からの視線を感じる。

 ……こうなったら!

 

「わ……私が『本当のパン』を教えてあげるよ!」


 ◇


 『本当のパン』の噂を聞きつけて、食堂内にはたくさんの人が集まってきた。


「ヘンリーくんのパンよりうまいものが作れるのかよ?」


「あの柔らかさを超えるなんて無理だ!」


 ……たしかに、ヘンリーくんのやったことは究極に柔らかくもできるすごい方法だ。

 でも今から私がやるのは――


【長くなりそうなので、ここからはダイジェストで観客の反応をお楽しみください】


「あいつ……1からパンを作る気だ!」


「バカな!

パンはもう完成された料理!

作る工程に手を加えるなんて不可能だ!」


 !!


「おい、生地に布巾をかけたぞ!」


「作るのをやめた!?」


「やっぱり無理だったんだ!」


 〜50分後〜


「あれ?

さっきより生地が大きくなってないか?」


「諦めて放置してたはずの生地を切り分けたぞ!」


「『本当のパン』なんて大層なこと言ったんだ、そうでなきゃ困るぜ!」


「おい!

また作るのやめたぞ!

いい加減にしろ!」


 〜さらに20分後〜


「……オーブンで焼き始めたな」


「気が変わりすぎだろ……」


「うーん……『2度も作るのを諦めた』以外は変わったことはしてなさそうだが……」


 〜そして15分後〜


【通常に戻ります】


 できた……!


「これで完成だよ!」

「さあ、食べてみて!」


 観客たちはおそるおそる、私の作ったパンを見てる。


【説明しよう!

 カホは!

 異世界物でいう『現代知識』!

 ごく普通のパン作りをしたのである!

 しかし!

 この世界の住人にはそれが――

 見たことのない物体にしか見えないのである!】


「これがパン!?

見た目が全然違うじゃないか!」


 モーブくんから……いや、あちこちからヤジが聞こえる。

 けど……!


「食べてみて!」


 モーブくんは渋々パンを手に取り、


「ふん……こんなの何も変わら……あれ?

……!」

「柔らかい……」


「なに!?

見せてみろ!

……。

え……!」


「本当だ!

水に漬けてないのに柔らかいぞ!」


 食堂内に驚きが広がる。

 そして――

 パクッ……もぐもぐ……


「「「うまーーーーーーーーーーい!!」」」

「「「ふわふわもちもちだー!!」」」


【数日後、全世界から噂を聞きつけたパン職人が、カホに弟子入りを志願。

 全世界の商人もカホとの専属契約を求め、チコク魔法学校に殺到した。

 そして、その集まった人々の重さで、チコク魔法学校が崩壊した。】


「もしかして私、またやっちゃったー!?」

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