7 再び教会へ
――俺、ユーベル7歳、妹、シエラ3歳にそれぞれ成長した。
それぞれ思うところはありながらも、すくすく成長していた。
俺は、ハンス曰く過酷な修練で目に見えるような上達ぶりが伺えたそうだ。
もともと集中力と忍耐力は自信ある方だから、何度やられても体が倒れて全く動かなくなるまで、諦めない性分だ。
その代わり、シエラと二人になった時の小言が激しい。
「お兄ちゃん、これじゃあ、いつか死んじゃうよ。もう少しお父さんに手加減してもらえないの?」
正直言うときつい。
だけど手加減されたら、それこそ今までの努力が無駄になる気がする。
心が、身体がハンスの手加減を拒否するのだ。
だから、つらくはない。
それに帰ればそこにシエラがいる、それだけで十分だ。
「いや、シエラ。正直これが毎日だろ? もう慣れてきたっていうか、やっと剣の道の何たるかを認識してきたところなんだ。ほら? 大きい傷も随分少なくなってきただろ?」
「擦り傷が青痣にグレードアップしてるだけです。ほんとに、もう……」
そして兄弟部屋を出て行った。
「ママ~。にぃにがまたいたいいたいしてる~」
切り替えはや!
でももう少しで幼児言葉は卒業できそうだな。
そんな平和な日常を送っていると、ある日。
「ねぇ、お兄ちゃん。わたしもお兄ちゃんを守れるようになりたいから、魔法の資質があるか知りたいんだけど……」
突然そんな事を言い出した。
確かに俺に魔法の才能がないからと言って、シエラにないとは限らない。
そう言えば、俺が魔法の資質を調べてもらったのも3歳児の時だった。
このアイル村は辺境にある為、魔物の襲撃があった際、自警団による自衛に頼るしかない。
確かにもし魔物達が徒党を組んで襲撃でもしたら、村は壊滅状態に陥るだろう。
幸い、周囲の魔物は性格上おとなしい種が多く、滅多に村に攻め入る事はない。
ただし、それだけだ。
安全が担保されているわけではない。
「そうだな。別に知っておいて損はないからな」
もし万が一シエラにすごい才能があった場合でも、オベールさんなら秘匿にしておいてくれるはずだ。
今日はハンスは狩りに出かけている。
マリアンは俺が資質を調べてもらった時、才能があった場合の事を心配していた節がある為、今回は二人で教会に行くことにした。
「母さん、シエラと散歩に行ってきます」
「うん、わたし今手が離せないから、お願いね」
最近はよくシエラを連れ散歩もしている為、特別怪しまれることもない。
アイル村はそこまで活気こそないが、住民同士のつながりが濃く、7歳3歳の兄妹子供二人組が歩いていても安全と言える。
見ない顔、よそ者がうろついていたらすぐに分かるからだ。
教会に着いた。
小さいながらも荘厳な造りにシエラが驚いている。
「お兄ちゃん、わたし前世の日本では教会ってあまり行ったことがないから、新鮮な感じがするんだよね」
言われてみればよほどの殉教者じゃなければ、日本では日曜ごとの教会でのお祈りも行くことはないのかも。
ただし、この世界ではどうだろうか?
「おや? 珍しい来客じゃな。ユーベル君にシエラちゃん。こんにちは」
「神父様。こんにちは」
「おじいちゃん、こんにちは」
「今日はどうしたんじゃ?」
「はい。シエラの魔法適正を調べてもらいたくて」
「そういう事か。ちょうどオベールも一段落したところじゃな」
早速、オベールさんのいる治療部屋へ案内してもらった。
「おっ? これは珍しいお客さんだ」
「オベールさん、今日はシエラの事で……」
「確かユーベル君の魔法適正を調べたのも今のシエラちゃんくらいの時だったね」
「わたし、魔法が使えるのなら、お兄ちゃんの助けになりたいんです」
「ハンスとマリアンさんにこの事は?」
「父さんは今日は狩りに行っています。僕にオベールさんを紹介してくれたぐらいだから適性診断は構わないと言ってくれると思うけど、母さんの方には実は内緒です。僕の時、心配そうにしていたので」
「……きっとそれだけじゃないんじゃないかい? 君たちがこんなに自分達の資質かな? そこにこだわる訳は」
オベールさんは着眼点が驚くほどするどい。
あっ! だからこそ幾多の治療がスムーズに出来るのか。
そう、実はシエラと二人きりの時、話していた事がある。
俺達が二人とも転生者である事を両親に話すべきかどうか。
これを知ったら、父さん、母さんは俺達を今まで通り愛してくれるのだろうか?
そして、もしシエラが特殊な資質持ちだった場合、拒絶されないか。
知ったところでどうにもなるわけじゃないが、知っておきたくなったのだ。
俺は、幸いにも凡人だった。
だけどシエラがそうでなかったとしたら、この世界ではあり得ない能力を持っていたら、両親はどう反応する?
「信じられないかい? ハンスとマリアンさんの事」
こう聞かれると即答出来なかった。
単純に怖かった。あんなに優しい父さん、母さんが俺達の秘密を知ったらどうなってしまうかが。
18年+7年生きている俺がそうなんだ。
15年+3年のシエラには重すぎる問題だった。
いつかは言うべきなのか? ただ遅ければ遅いほど言いづらくもなるし、俺達が父さん達を信じていなかったという事になってしまう。
一歩前に進みたい。
その為には……
「シエラ。オベールさんは信用出来る人だ。俺が保証する」
シエラの顔を見た。
するとシエラも無言で頷いた。
「オベールさん、どうしても聞いて欲しい事があるんです」




