3 魔法適正
魔法の実践。
わくわくしたのはいいが、どうしたら発動するのかその概念が分からない。
本棚の本は読み漁ったが、魔法に関する詳しい記述は発見出来なかった。
確認できたのは、この世界には魔法属性として、火、水、風、土、聖、闇の6つの属性で成り立っているという事。
行使出来る魔法の属性は最大3つまでと言う事。
魔法には魔力が必要であり、術式を組むことで発動するという事。
それ以外なかなか掘り下げた解説が見つからないのだ。
両親に聞いてみようか?
聞いてもおかしくない頃合いだしな。
ただ、3年間生きてみてただの一度も魔法に関しての話題が2人から出ていない。
これはどういう事だろう。
この世界では魔法が使えたら、スーパー戦士確定みたいな感じなのだろうか?
ファンタジーでよく見る魔法世界では、生活に便利な生活魔法の一つや二つ普通の村人がしれっとやっていてもおかしくはないはずなんだけど。
「パパ、魔法の使い方教えて」
ド直球に言ってみた。
「ん? ユーベル。俺もマリアンも魔法なんて使えないぞ。魔法なんて邪道だろ? 邪道。男だったら剣だろ? 剣! この疾風迅雷のハンスが稽古つけてやる」
愕然とした。
女神様が授けてくれたはずの枯渇しない無限の魔力は何処行った?
両親二人が魔法使えないという事は、俺だってかなり不利にはならないか?
「ええ~!? でも僕魔法が使ってみたいな~」
ここで食い下がるわけにはいかない。
「ユーベル、ごめんね。わたしも農民だったし、パパも剣士の傭兵だったから、魔法とは縁のない生活をしているの」
「ん~。お前に魔法の資質があるか判別する方法はあるにはあるな。教会に俺の傭兵時代の仲間の僧侶がいてな。そいつなら判断出来るんだ」
「じゃあ教会? そこに連れてって!」
「それじゃあ、そこで判断してもらって魔法の才能がないと分かったら、パパと剣の修行をする事。それでいいか?」
「あなた! ユーベルにそんな押しつけがましい事……」
「ママ、僕魔法が使えるか知りたいの。ダメだったら剣やるから大丈夫」
「だったらわたしも一緒に行きます。ちょうどこの子の為のお祈りもしたいし」
そう言うと、マリアンはかなり大きくなったお腹をさすった。
そう、家族が増える予定だ。
性別は出てくるまで分からない。
ここは出産前診断が出来る前世と違うところだが、基本的に俺は妹、弟どちらが出来ても嬉しいし、楽しみでもあった。
「そうか、マリアン無理するなよ。ユーベル、覚悟はいいか?」
「うん」
僕達は村の中心にある小さな教会へ向かった。
田舎の村のさびれた感じだが、広場が立派だった。
「マリアン殿、調子は如何ですかな?」
白髪の神父が声をかけてきた。
「神父様、おかげさまで元気に過ごしております。この子もお腹を蹴るのが好きなようでして」
かなりお腹をさすっていたので、本当に蹴られているんだろう。
生まれ出てきたらサッカーでも教えてやろうか。
「神父様。こんにちは」
俺も挨拶した。
優しそうな爺さんという印象だ。
「神父様、オベールのやつは今いますか?」
「ああ、おるよ。相変わらず忙しそうじゃがな。ただそろそろ治療も終わる頃じゃろ」
聞いたところオベールは腕の良い僧侶であり、ハンスが傭兵時代パーティーを組んでいた。
今は引退し、ここ辺境の村アイルで毎日来る腰痛や怪我の患者を聖魔法で治療しているそうだ。
神父様がオベールのいる部屋へ案内してくれた。
「オベール、治療で疲れているところ悪いな。ちょっとうちのユーベルの魔法の資質を見てもらいたくてな」
「こんにちは」
「オベールさん、うちの人がまたご迷惑おかけしましてすみません」
「構いませんよ。疾風迅雷のハンスを知らない人はいないし、その仲間であったというだけで、僕もこの人気ですからね。その名声を利用させてもらっているんですよ」
疾風迅雷のハンス。
自称で二つ名語ってるだけじゃなかったのか。
「ユーベル君、こんにちは。もう随分大きくなったね。魔法に興味あるのかい?」
このオベールって人、優しい目をしている。
ハンスの名声がなくてもきっと人気あるんじゃないかな。
中性的な顔立ちで、歳もハンスと同じくらいだろう。
「はい、どうしても魔法が使えるか知りたいんです」
「分かったよ。じゃあこの水晶に手をかざしてみてくれるかい」
「はい」
俺は言われるがまま水晶に手をかざしてみた。
だが、いくら待っても何も反応がない。
「どんな些細なものでも魔法適正が少しでもあるのなら反応はするよう設定はしてあるんだけど……」
「全属性ないってことなのか?」
ハンスが問いかけた。
「うん。結果から言うとそういう事だな」
……そんな。
これじゃあ、女神様から授かった能力は宝の持ち腐れじゃないか。
でも、こうなってしまった以上どうしようもなかった。
俺には魔法の才能がない。
それが全てなのだ。
「ユーベル。わたしはあなたに魔法が使えないって分かってほっとしているの。もし万が一すごい才能の持ち主だとしたら、きっと戦争かなんかに連れ出されちゃうもの」
「オベールの診断は絶対だ。だけど、ユーベル、気を落とすな。男は剣だ! 剣で勝負だ! 魔法なんて邪道なものはいらないのさ」
「まあ、僕はその邪道なもので商売させてもらってるんだけどね」
受け入れるしかない。
よくよく考えれば俺は、元々前世で下手打って死んでしまった身だ。
それが、こうして人間としてしかも優しい両親の子供でいられる。
それだけで幸せじゃないか。
落ち込む要素はないはずだ。
「分かった。オベールさん、ありがとう。僕もうスッキリしたから大丈夫だよ」
「力になれなくてごめんね」
「ユーベル、男に二言はない。明日から剣の修行を始めよう。大丈夫、きっと俺のように強くなれるさ」
「あなた、ユーベルはまだ3歳なんだからほどほどにしてね」
この世界、実際のところ、魔法も存在すれば、魔物も数多くいることが分かっている。
魔法の場合は、適性はあるにしても、実用的なレベルまで持っているかは人それぞれ。
そして魔物が徘徊する限り、何らかの自衛の方法は持っていた方がよいのは確かだ。
俺は翌日から、ハンスに師事することにした。




