14 オベールの提案
オベールさんの導き出した答えに驚いてはいたが、よく考えてみると魔法自体が100%使えないはずの俺に魔力の塊が出せているという事実がおかしいのではないかと思う。
魔法を使わず魔力の塊が出せるはずは現実的にないのだ。
「本当に皆目見当もつかないんです。あの剣は魔力の集合体で間違いない、ただしユーベル君自身には魔法の適正属性がないので、魔法を媒介に剣を出す事は出来ないはずなのです。これが答えと言うべきか答えとするしかないんです」
「つまり魔法はわけわからんと?」
父さんは根本から勉強しなおした方がいい気がする。
「ユーベル、あなた魔法よりもすごい魔法使っているのね。すごいわ」
それもちょっと違う気がする。
「でもわたしにも感じたよ。さっきの剣のスケールというか、威圧? 魔力の凄さ。やっぱり魔力の塊なんだと思ったもん」
「そこでちょうどご家族皆揃っているので、これは提案なのだけれど。ユーベル君のこの能力、本人による制御が出来ているという事が大前提なんだけど、王都の確たる機関で調べてもらうべきかなと思う」
「可愛い息子を国に売れと?」
「まさか。こちらが利用するんだよ。王都には魔法や武術を研究している王国アカデミーがあるんだ。通常は中等部から入ることが前提だけど、高等部へ上がる年、つまり満16歳になる歳にだけ編入も可能なんだ」
「高等部。16歳になる年……僕は今年がそれにあたるんだけど」
「まさか。ユーベルを王国アカデミーへ編入させてみるとかか?」
「あの王都の貴族の方々御用達の王国アカデミーですか?」
「うん、自分自身分かっていない能力を持っているのって、やっぱり気持ちが落ち着かないというか、罰が悪い気がすると思うんだよね。でも、僕にはお手上げだった。幸い、王都の王国アカデミーは僕が昔お世話になっていた大司教様が理事になっているんだ。編入試験はあるけれども、僕の紹介であれば確実に受けさせては貰えると思う」
俺は平民だ。
王国アカデミーの名前くらいは知っている。
騎士や剣士の武術専攻でも魔法専攻でも王国最高設備がそろっていて、しっかり卒業できればそれだけで相当な箔がつくし将来が約束されると評判だ。
ただし、ほぼ貴族の為の学園であり、平民は試験を受けるだけで馬鹿にされかねないらしい。
でも、オベールさんの提案は的を得ている。
もしかしたら俺のこの奇妙な能力もそこでなら解明出来る気がする。
実際この世界で起こっている事象なのだから、ここの図書館の古文書なんかにも運が良ければ載っているかもしれない。
「お兄ちゃん、王都に行っちゃうの?」
「そうなればそうなるね」
「でもさすが師匠、意外とそこに答えがあるのかも。お兄ちゃんはもう剣士としてはお父さんに負けないくらいだよね? もし剣士学科に行ったとしても、魔法の授業にも出て探れば答えが見つかるかもしれないね」
驚いた。
否定的だと思ってたシエラがこう言ってる。
半分本心は王都にいっちゃうの?
……かもしれないが、もう半分は俺がやりたいようにやって欲しいと言ってくれているのかも。
「ただし、問題もある。この王国アカデミー。中等部からの新入学より、高等部からの編入の方が試験が格段に難しいんだ。例えば剣士学科志望として、実技試験はパスしても、学科試験は相当難しいと思う。ただし特待生枠に食い込めば授業料、寮費が全額免除となる」
もしオベールさんの提案を受け入れるとしても、俺はこの歳まで教育施設に通っていない。
もともとこの世界では、義務教育制度などはなく、貴族はともかく、平民は教育施設はあったとして村の小さな教会とかで文字の読み書きをなんとか覚える程度だという。
だが、俺はこの時点で18歳+15歳。
しかも転生時既に文字の読み書きまで出来ている。
だてに33年間生きてないところを見せたい!
狙うは特待生枠のみだ。
それ以外は受け付けない。
「あなた、お金どうします?」
「いざとなったら、あの宝剣あったろ? 俺がファイヤードラゴン倒して持って帰ってきたやつ。あれ売ればいけるんじゃないか?」
あれ?
二人は何の話をしてるんだ?
「まあ、ここまでの話はあくまでも提案なんだけどね。ユーベル君は15歳になっているから、冒険者ギルドにも登録可能だ。ダンジョン探索での一攫千金も狙えるしね。王国アカデミーとかはまあ、そういうケースもあるかな……くらいで」
「お父さんお母さん、お兄ちゃんさぁ、元がかっこいいんだから、王国アカデミー行ったら、貴族に馬鹿にされないようちゃんと制服もそろえなきゃ駄目だよ」
「そうねぇ。でも早く見てみたいわ。ユーベルの制服姿」
「まあ、ユーベルには、修行と言いつつ散々無駄な重労働させてきたからな。俺だって王都のカッコいい学生っていう晴れ舞台の一つや二つ用意してやれればなって思ってはいたんだ」
駄目だ、家族3人とも俺が王国アカデミーに行く前提になっている。
まずい。
このままではオベールさんが責任を感じてしまうじゃないか。
「父さん、母さん、シエラ。確かに俺自分の能力が何なのかは気になるけど、王国アカデミー行ったからと言って100%答えが出るか分からないし……」
「でも受けたいんだろ?」
「じゃあ、特待生枠狙ってみるよ。勉強頑張ってやれるだけやってみる」
「いや、それは無理だろ。だってお前、俺の息子だろ」
「そうなのよねぇ。そこが問題よね」
「お父さん、お顔だけは一級品なのにね」
うすうす気付いてはいたが、どうも父さんは元々賢さに問題があるようで、その息子はダメだろうという結論みたいだ。
「まあ、金は俺が何とかするから」
「お父さんを信じてあげて」
父さんだから信じられないんじゃないか。
「もし、本気で王国アカデミーの特待生枠狙ってみるなら、僕が一肌脱ごうかと思うんだけど。元々提案したの僕だしね」
マジか!?
オベールさん神だ。




