【閑話】取れたての新鮮なカエル野郎
テルエルの戦いも終わり、スペイン内戦の戦局は国粋派へと傾いた。共和派の支配地域はカステリョン・デ・ラ・プラナで南北に分断され、特にフランスとの連絡を絶たれた南側は物資不足に悩まされ始めている。
「おお、これがあのときの……」
「ええ、ドイツ軍を足止めさせたフランスの新型重戦闘車です。捕虜の供述によると、B2Bというそうですよ」
おそらく分断状態を解消するため、共和派は最後の総攻撃を仕掛けるだろうと国粋派と反共義勇軍は予想していた。つまり、共和派が戦力と物資を集結させるまでの間は、こちらも態勢を整える時間があるということである。
そんなわけで、チベット陸軍のミカとキャロリンは、共和派から鹵獲した、露仏から軍事支援として送られたのであろう装甲戦闘車両を、日本軍のデポに検分しに来たのだった。
BDR B2B
車体長5.5m
全幅3.1m
全高2.5m
戦闘重量:26.5t
乗員数:5名(操縦手、無線手、車長、砲手、装填手)
主砲:90mm CA mle 1926 mod.1936
口径:90mm
砲身長:40口径
砲口初速:750m/s
装甲貫通力:135mm/90°@100m、125mm/90°@500m
装甲
砲塔正面:80mm
砲塔側面:80〜60mm
砲塔天蓋:20mm
砲塔背面:60mm
車体正面:60mm35°~(曲面)
車体側面:60mm90°
車体背面:20mm35°~(曲面)
車体上面:20mm
車体下面:20mm
エンジン:パナール 機械式過給水冷直列6気筒4ストロークスリーブバルブ
最高出力:350hp
最高速度:35km/h
「これ車重はいくらだったんですか?」
「全備重量で26.5t。うちの中戦闘車より10t以上重いですね。その分強力な主砲と車体装甲を備えています」
ミカの質問に日本軍の整備兵が答える。現行の十二年式戦闘車2型改でようやく16tほど、この当時開発中の最終型である3型でようやく20tほどだから、日蔵にとっては驚異的な重戦車だった。
もちろん、日蔵に限らず、反共義勇軍全体でこの戦車の情報は共有されており、史実のT-34ショックのような影響を各国の兵器開発に与えている。
「主砲は90mmか……正面装甲厚は?」
「車体正面が60mm、砲塔正面が80mm+防盾80mmですね」
「硬った……こっちのAPは絶対抜けないじゃん。HEAT撃って正解だったわ……」
車体正面は曲面なので当たり所にはよるだろうが、垂直装甲に換算すると110mm以上の防御力はあるだろう。
「平面上で撃ち合ったら、今の日蔵軍に真正面から正面装甲を貫通できる徹甲弾は存在しないよね? ミカ」
「うん。日本軍が75mm砲用の無旋転HEAT弾を開発・配備してくれていて本当によかった。もし九四式穿甲榴弾がなかったら……ハルダウンさせた囮部隊で注意を引き付けて、別動隊を側背面に回りこませるか、ドイツ軍の88mm対空砲に狙撃してもらうかの二択になっただろうね」
この当時、APDSである九八式徹甲弾系はまだ反共義勇軍に配備されてない。ロシア戦争の経験もあり、チベット軍人にとって十二年式戦闘車は無敵の騎兵隊であり、相対した敵は難なく撃破されるのが当然であった。だから、その十二年式が苦戦する車両が出現したことは非常に衝撃的だったのである。
「……せっかくだし動かしてみたいけど……それよりあの大きいの、気になるよね」
「うん。私もそう思った。なんだろうあれ」
そういってミカたちはB2Bの横に置かれている巨大な装甲戦闘車両に目を向けた。
FCM VCI2C bis
車体長9.0m
全幅2.95m
全高4.1m
戦闘重量:69t
乗員数:5名(車長兼分隊長、砲手、装填手、操縦手、無線手兼車体機銃手)+兵員8名
主砲:75mm CA mle 1897 mod.1921
口径:75mm
砲身長:36口径
砲口初速:500m/s
装甲貫通力:65mm/90°@100m、58mm/90°@500m
副兵装:オチキス 8mm重機関銃 mle1914×6(車体正面×1、車体側面×2、車体上面銃架×2、車体後部銃塔×1)
装甲
主砲塔正面:35mm+防盾
主砲塔側面:35mm
主砲塔天蓋:8~22mm
主砲塔背面:35mm
車体正面:45mm90°
車体側面:22mm90°
車体背面:22mm90°
車体上面:8mm
車体下面:8mm
エンジン:パナール 機械式過給水冷直列6気筒4ストロークスリーブバルブ×2
最高出力:350hp×2
最高速度:28km/h
「こいつはフランス製の重突撃車ですよ。グアタラハラの戦いで鹵獲したものだそうです」
「これが噂の……」
「なんだこれは……たまげたなあ」
一次大戦後、欧州では歩兵戦闘車のさらなる戦闘力強化が追及され、ついには「超重歩兵戦闘車」ともいうべき巨大な歩兵戦闘車が一部の国で作られるに至った。その1つが本車である。史実のシャール2Cによく似ているが、戦車ではなく歩兵戦闘車であるため、目的地に着いたら車体後部から分隊員を降ろせるようになっていた。
「でも突撃車だし、車体側面に40mmの貫通痕があるということは、装甲はペラペラだったり……?」
「はい。九三式突撃車の長砲身40mm機関砲やイギリス軍の2ポンド対物砲で撃破できたと聞いています」
重歩兵戦闘車路線が放棄された理由がこれである。車体に歩兵分隊を収める必要があるため、車体長が長くなってしまい、装甲厚のわりに重量がかさんでしまうのだ。このため、より小型で安価な戦車にあっさり撃破されることがロシア戦争のころからわかっており、今回も同じことが起きたというわけである。
「そう聞くと、なんか哀愁を感じるよね。時代の徒花的な」
「まあ、ほんのちょっとね。……あ、あそこにあるのは、ロシアから鹵獲した車両じゃない?」
そういってキャロリンは別の場所にまとめておかれている車両群を指さした。
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