高バイパス比ターボファン
本業が忙しく、土曜日も通院でゆっくり休めずぐったりしていたので、今日は短いです。
2026/2/23:書き忘れていたところがあったので加筆
「そうですか……わかりました。ぜひとも協力させてください」
「よろしくお願いします」
耀子から「日本への脅威が差し迫っている」と言われ、さらに国家機密である新材料の提供も行うといわれた土光は、覚悟を決めてアフターバーナーの共同開発に乗り出すことにした。
「ところで、タービン入口温度の話に戻しますと、直近では70℃上げてほしいといっておりましたが、この先の話については決まっておりますでしょうか」
「そうですね、最終的にはドライ推力……アフターバーナーなしでの推力で2100kgf程度まで向上させることができればよいと考えておりますが」
そういって堀越は土光にメモを差し出す。
F-0A:1017kgf タービン入口827℃
F-0AR:Dry1017kgf/AB1415kgf タービン入口827℃
F-0BR:Dry約1070kgf/AB約1700kgf タービン入口温度を向上
F-0CR:Dry約1150kgf/AB約1900kgf タービン入口温度を向上、圧縮機を軸流式にして多段化
F-0DR:Dry約1300kgf/AB約2200kgf タービン入口温度を向上、圧縮機をさらに多段化
F-0ER:Dry約2100kgf/AB約3000kgf タービン入口温度を向上
「……いやあ、なんとも遠大な計画ですなあ」
「難しいですか?」
「いや、むしろワクワクしてきますよ。すこし、この最終型の燃焼温度を計算してみましょう」
そういって土光はまたゴリゴリとメモ帳に計算を始めた。
「そうなるとタービン入口温度は……1400℃以上! 今の倍近い値ですな!」
(やべ、やっちまったかな)
土光から聞かされたタービン入口温度があまりにも高かったため、耀子は内心焦りを感じる。
「これだけ高いと、さすがに今すぐやれというのは無理ですよね」
「ええ、さすがに難しいでしょう。だからこそ、こんなに改良を刻んでいただいていると理解しております」
平然と確認する堀越に対し、土光はうれしそうに答えた。高い目標に対して、十分な時間を持って解決にあたってほしい、という想いをちゃんと受け取ってくれたようである。
「ありがとうございます。各改良型の具体的な設計完了時期はまだ決められておりませんが、とりあえず、このように性能向上計画を立てていただけるとありがたいです」
「承りました。一緒に頑張っていきましょう」
とりあえず、会議の目的は達成できた。まだ時間がありそうなので、耀子はついでに別の開発計画についても土光に振ってみることにする。
「そういえば、バイパス比をさらに大きくしたエンジンを作ることは可能ですか?」
「バイパス比を? やってやれないことはないでしょうが、そうすると今より推力は減少すると思いますよ?」
ターボファンエンジンにおけるバイパス比とは、ファンが発生させた空気の流れのうち、そのまま後方に噴出する流量と、圧縮機、燃料室、タービンがあるコアに入っていく流量の比である。
「そうですね。そこが難しいところなんですが……現在、輸送機や旅客機のジェット化を考えておりまして、そのために燃費の良いエンジンが欲しいと思っているのです。コアはF-0系と共通にして、バイパス比が2ぐらいになるようにファンを大径化できたりしませんか?」
21世紀の旅客機では、燃費改善のために非常に大きなバイパス比のエンジンを採用していることを耀子は知っていた。例えば三菱スペースジェットに採用予定だったPW1000G系エンジンのバイパス比は9~12と、今生とは比べ物にならない高バイパス比を誇っている。いきなりこのレベルを求めるのは酷だと考えたため、まずはバイパス比を1からに2に上げる方向で話を持ってきたのだった。
「なるほどそういう事情ですか……ファンの付け根にかかる遠心力が不安ではありますが、先ほどのアフターバーナーの開発よりは簡単そうですな。あとは人手が足りるかどうか……」
石川島も大きな会社ではあるが、そもそもこの当時の日本は高等教育を受けた技術者自体が不足している。いくら史実より国力があって景気が良くても、あれもこれも開発できるほど人材がいないのだ。この問題は耀子の歴史介入が始まってからも常に存在し続けている根深いもので、彼女自身、女子高等師範学校から卒業生を引き抜くなど、あの手この手で技術者を確保しようとしている。
「まあ、ジェット旅客機に関してはまだ設計を始めてもいないので、優先度は低くてよいと思います。まずはアフターバーナーの開発を最優先にしつつ、タービン入口温度の向上を継続していただければ」
「技術的難易度を考えると、その優先順位になりましょう。開発する部品を極限して、限られた人員で手を広げられるようにやっていきたいですな」
このようなやり取りがあり、F-0Aのアフターバーナー付バリエーションの開発の他、より大型で緩慢な機体用のエンジンとして、バイバス比を高めたF-1系エンジンの開発が決まった。F-1エンジン搭載機の設計はこれからであるが、河原鳩の改良型になるだろうと耀子は考えている。
石川島重工業 "F-1"
形態:1軸ギヤードターボファン
バイパス比:1.99
圧縮機:遠心式2段
総圧縮比: 9:1
タービン:軸流式3段
入口温度:827℃
推力:963 kgf(地上、静止)
直径:0.69 m
今日の更新がこんな短い話で申し訳ありませんが、辺境伯家の食客はしっかり描いてます。
最新話はこちらです。
https://ncode.syosetu.com/n7555jm/42/
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