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お姫様の恋 ~ハーボルト王国 王室に嫁いだ姫君たち~  作者: 松本せりか
見た目は17歳、中身は12歳の悪役令嬢
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第33話 リリーの探索 リリー様 国外脱出完了

「クリス殿下。リリー様、見付かったんですか?」

 クラレンスの部屋から賢者の間にたどり着き、クリスにそう言った途端、胸に激痛が走る。

 バランスを崩して倒れそうになるのを、一緒に連れて来たクラレンスに支えられた。

「大丈夫か?」

 クラレンスが心配そうに訊いてきた。

「あ……はい。平気です」

 まだ少し痛みの余韻が残っているけど、まだ大丈夫なはずだ。私はクラレンスの方を向いて笑顔を作った。


「何も飛んでこなくても良かったのに。ああ、ここ。この山間(やまあい)。貴族令嬢を連れてよくこの山に入ったよね」

 水晶には、険しい山道……と言うより、崖に沿った道が映し出されている。

 一歩間違ったら、谷底に真っ逆さまという感じだ。


 リリーはもう貴族の装いではなくなっていた。村娘が着るような、簡素な服で靴も歩きやすそうな、しっかりしたものになっている。

 横には、長身で体格の良い黒髪の男性が寄り添うように、庇うようにあたりを警戒し、リリーを支えながら歩いていた。


 この山を越えてしばらく行けば、隣の国に入ることが出来る。

 双方の国の猟師か木こりか、そういうのを生業としているものしか通らないので、国境など無いに等しいところだった。

 このルートを選んで、しかも貴族令嬢連れでここまで来れるという事は、連れの男性はかなり優秀なのだろう。


「キャロル。行ける?」

 クリスが、キャロルの方に手を出しながら訊いてくる。

 まだ体は痛いけど、大丈夫だ。

「行けます」

「キャロル? まだ体が」

 私の即答にクラレンスが焦ったように訊いてくるけど、その腕をしっかりつかむ。

「行きましょう。クラレンス殿下」

 次の瞬間、クリスとキャロル、クラレンスは賢者の間から、水晶に映っている山間まで飛んだ。


 クリス殿下と賢者が、私を内外から支えてくれているのがわかる。

 私は体の痛みを訴えることなく、リリーたちがいる崖の所に着いた。


「リリー様」

 リリーの姿を見付け、思わず叫んでしまう。

 横にいた男性が、警戒をしたのかリリーを自分の背に隠してしまう。

「追っ手か」

「違うよ。捜索隊は別の所を探している。まさか、こんな険しい山を行っているとは思わないさ」

 男性の問いには、クリスが答えていた。

 クリスは、少し浮いたような感じで、楽々と崖の道の上に立ちリリーに訊く。

 少し、怖い感じがした。

「リリー。その男が好きかい?」

 

 男性の方は、更にリリーを隠そうとしたが、リリーは前に出て男性を庇うように両手を広げた。

「この者は関係ありません。私が騙して連れて来た者です」

 リリーは、必死になって叫んでいた。

 そのリリーを、男性は必死に自分の後ろに庇おうとしている。


「ふ~ん」

「どうか、連れ帰るのはわたくしだけにしてください」

「リリー様!」

 男性はリリーを後ろから抱きしめた。

「連れて帰られたら、どうなるか分かっているの?」

 クリスは冷静に言っている。

「はい。わたくしはどうなっても構いません。ですから」

 あの夜会の時は、青くなってガタガタ震えていたのに、リリーは覚悟を決めたようだった。


「だってよ。王太子殿下」

 クリスは私たちの方を振り返り訊いてくる。どうする? って。


 私の側を離れ、クラレンスはリリーの方に向かう。

 そして、懐中時計から外した純金の鎖を渡した。

「リリー。私の所為でこんな目に遭わせてすまなかった。これを換金して生活の足しにしてくれ」

 そして男性の方に向き合った。

「リリーをどうかよろしく頼む。出来れば幸せにしてやってくれ」

 そう言って頭を下げた。


「賢者様の能力で、この先の国境を越えたところに飛ばしますので、二人共なるべく……そうですね。抱き合って下さい」

 私が二人にそう言うと、クリスが私の側に寄り添ってきた。


「え? どうして、キャロル様が」

 リリーが戸惑っている。

「幸せになってくださいね」

 二人にかざした私の手のひらから、まばゆい程の光が生まれる。

 

 リリーたちが降り立つ位置。安全性。すべてのコントロールは賢者とクリスが担当する。

 そしてまばゆい光はだんだんと大きくなり、リリーと男性を包み込んで消えた。

 クリス達が支えていても、体の激痛は免れなかった。

 痛む体で最後の仕事をする。

 私たちが、賢者の間にたどり着いたところで、私の意識は途絶えた。

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