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お姫様の恋 ~ハーボルト王国 王室に嫁いだ姫君たち~  作者: 松本せりか
見た目は17歳、中身は12歳の悪役令嬢
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第29話 リリーの捜索 負担のバランス

 クラレンスは、私の手を取った。なんだか、戸惑っているみたい。

 何か言いたそうにしたけど、意を決したように、私を賢者の石がある布の方へ連れて行く。

 そして、二人で布の中に入った。


 キレイ。

 

 賢者の石は、楕円形でクラレンスの背より少し高く、ダイヤモンドのようにカットがされているせいか、色とりどりの光を放っていた。

 多分、宝石とかに興味ない人でもこれはキレイだと思うんじゃないかな。


「キャロル……いや、ユウキ嬢。抱きしめるけど」

 クラレンスが遠慮がちに言ってきた。

 いけない。ここに入った目的を忘れてしまうところだった。

「あっ、はい。どうぞ」

 改めて言われると少し照れる。

 ふわっという感じで、本当に優しく抱きしめられた。なんだか暖かい。

 私は目を閉じてしまったから分からないけど、クラレンスの方は、クリスに合図を送ったみたいだった。


いきなり、賢者の石からぶわっと光が増す。目を閉じていても関係ないくらいの光。

息が出来ない。体がバラバラになりそうなくらいの痛みと衝撃が来た。

時々、クラレンスが私の背中を撫でてくれている。それが無かったら、私は意識が無くなっているところだ。


 それでも、少しずつその感覚が軽減されている。

 その代わりと言うように、私を抱きしめるクラレンスの手に力が入っているようだった。

 思わず、クラレンスの顔を見る。

 目を強く閉じ。歯を食いしばって耐えてる。顔には脂汗が浮かんでいた。


「クラレンス殿下」

 私が名前を呼ぶと、そんな状態なのに目を開き、笑ってくれる。

 その次の瞬間、

「うぐっ」

 と、呻き声をあげ、体をのけぞらせた。すごい衝撃が来たみたい。

 私には全く来なかったから、全部引き受けてくれたんだ。

「クラレンス殿下」

 なんで私にコントロールが出来ないの? このままじゃ、クラレンスが死んじゃう。

 

 焦っていたら私の後ろから、にゅっと手が出てきて、クラレンスに触った。

「全部、引き受けるような真似をするなって言ったろ」

 その瞬間、クラレンスの体から力が抜けた。

「もう少しの間、頑張ってくれるかな? ユウキ」

 そう言いながら、私をクラレンスから引き離している。

「クリス様?」

「これだけは、誰も肩代わりできないから。クラレンス、ユウキを離して」

 クラレンスは、何か不穏なものを感じていたのだろう。クリスが引き離そうとしたのに、私を抱きしめたままでいた。

「しかし……」

「君がいたら賢者(わたし)が入れない。おいで、ユウキ」


 え? 体が勝手に、クリス様の下に行ってる。何? なんで……。

 怖い。

 そう思っても、勝手にクリスの腕の中に体がおさまってしまった。

 その瞬間。バチッと何かが弾けた気がした。体が裂けてしまったかのような。

 声も出せなかった。

 賢者の石からの光が無くなっても、クリスの腕の中でぐったりしていた。


「もうっ、無茶するなぁ。賢者の奴」

 クリスが怒ってる。

「クリス……殿下?」

 雰囲気もだけど、服装も変わっている。第二王子を賢者がこっちに引き寄せたのかもしれない。


「しゃべらないで、キャロル。そうだよ、僕は第二王子の方。賢者は今君の中にいるからね」

 なんだか、体の内側から暖かくなって痛みが和らいでいくような感じがする。

 私を支えたまま、クリスはクラレンスの方を向いて

「ああ。もう良いよ、帰って」

 私の腕をクラレンスの方にかざす。賢者の間から、クラレンスが消えた。


「何をしたんですか? クリス殿下」

「執務室に戻しただけだよ」

 信じらんない。だって、さっきまで私の分まで衝撃と痛みを受けてたんだよ。

 それを、そのまま帰すなんて。

「あのまま、戻したんですか?」

 クリスはうるさいなぁって顔をしている。


「あのさぁ。もともと、あいつのせいだろ? 庇うのなんて当たり前だよね」

 やっぱり、賢者と情報共有している。クラレンスの状態を知ってて帰したんだ。

「そうかもしれないけど……そうだとしても」

 今、リリーが追いかけられているのは私の所為だ。

「いい加減にしてくれないかな。僕だって、賢者からリリー捜索の為に呼び出されたんだ。なんで、あいつの為に僕がただ働きしないといけないんだ」

 最後の方は、もう独り言のようになってるけど。何だか態度が、冷たい。

 クリスは、手をかざし大きな水晶を出す。

「国中探さないといけないかもしれないのに」

 そう言うともう、こちらの方なんか一切見ずに、水晶で探索を始めた。

 そんなクリスの態度に、思わず涙が出そうになるけど、私の内側から『大丈夫だよ』って聞こえる。


 さっき、私の腕を持って能力を使ってた。

 大丈夫、私の中には賢者の能力がある。

 お願い。私の中の賢者様、クラレンス殿下の所へ連れて行って。


 次の瞬間、私は賢者の間から消えていた。

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