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お姫様の恋 ~ハーボルト王国 王室に嫁いだ姫君たち~  作者: 松本せりか
見た目は17歳、中身は12歳の悪役令嬢
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第22話 夜会から抜け出したクラレンス殿下

 クリスと夜会会場に戻ってから、クラレンスの姿を探す。

 会場のどこにもいない。ラストダンスの時間になっても、私達の元にやって来なかった。

 クリスは、会場内にいないと分かると、壁際でじっと目を閉じて何かに集中している。


「今日は、王妃側が主催している夜会だから、ダグラスもいないのか」

 いきなり目を開けたかと思うと、やれやれという感じで、クリスは言った。

 そして、自分が連れて来た使用人に指示を出していた。

 私はというと、そんなクリスの横で呆然としてしまっている。たいていの理不尽には慣れたと思ったのに、夜会に置き去りにされるなんて初めてだ。

 どうすれば良いのか、分からない。


「おいでキャロル。君の馬車はもう屋敷に帰したから、僕の馬車にお乗り」

 クリス? なんで?

 疑問に思っている間に、馬車に乗せられている。

「クラレンスも行動が早いよな。もう私室に戻っているんだから」

「私室って……、王宮の?」

「他に無いだろう? 今の僕は能力を使うのも大変なんだから、少しは大人しくしてくれないかな、全く」

 横に座ってブツブツ文句を言っている。クリスがいてくれて良かった。

 だけど、協力しないって言ったのに。


「あの。協力してくれるんですか?」

「しないよ」

 クリスから何を言ってるんだって顔をされた。

「でも、王宮に連れて行ってくれてるし」

「ああ、そうか。じゃあ代償を貰おう」

 頬にクリスの唇が触れて、チュッて音がした。反射的に手で頬を押さえる。

 その様子を見てクリスが笑った。

初心(うぶ)だねぇ」

 心なしか嬉しそうに聞こえる。

 なんだか、その笑顔が懐かしく感じた。




 王宮に着いたら少しざわついていた。

 荷物と剣を持って出て行こうとするクラレンスを、近衛騎士たちが遠慮がちに止めようとしている。ダグラスとは口論になっていた。


「ああ。やっと帰ってきたか。クラレンスを止めるのを手伝ってくれ」

 私たちを見つけるや否や、ダグラスが言ってくる。

「どうしたのです」

 私では無く、クリスに言っているのだと分かっているけど。

「このバカが、王宮から出て行こうとしてるんだ」

 いや、王太子に向かってバカって。今さらか、ダグラスは……。


「そこの近衛騎士たちに取り押さえさせたらいいじゃないか」

 なぜそうしないのかとばかりに、クリスは言っている。

「そんな事したら、近衛騎士たちが不敬罪で投獄されてしまう」

 ダグラスのその言葉を聞いて、クリスは長い溜息を吐いた。


「ったく。どいつもこいつも。何で僕がこんな事を……」

 そう言いながら、クリスはクラレンスに近付き、思いっきりぶん殴った。

 ガタンッとすごい音がして、クラレンスの体が壁にぶち当たる。


 私は悲鳴が出そうになるのを押さえるのが精一杯だった。

 怒鳴り声だけでも怖いのに……。


「何をする」

 クリスに殴られて切れてしまったのか、口の端から血が出てる。

「それは、こっちのセリフだよ。夜会にキャロルを置き去りにして、何やってるんだよ。最低だな、君は。キャロルはそんな君を心配して僕に相談をしていたのにね」

 クリスのそのセリフに、クラレンスは呆然としたような顔をして私を見る。

 私の方に寄って来たクリスが、ハンカチを渡してくれた。また、涙が出ていた。

 ハンカチを受け取る手が震えている。


「行きたければ、どこにでも行けば? もう、いい加減うんざりだよ」

 クリスは私の肩を抱き、王宮の奥に進んでいこうとする。

「クリス殿下。そんな言い方は……」

「何? まだかばうの?」

 また睨まれてしまった。これ以上はもう許さないって感じがした。

 

「おい。キャロル嬢をどこに連れて行く気だよ」

 ダグラスが、焦った感じで訊いてきた。

「野暮だよ」

 そんなダグラスに、クリスは笑って言い返してた。

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