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お姫様の恋 ~ハーボルト王国 王室に嫁いだ姫君たち~  作者: 松本せりか
見た目は17歳、中身は12歳の悪役令嬢
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第23話 真夜中のインスタントラーメン 

 うん。なんとなくわかってた気がする。

 クリスがゲストルームの前でおやすみって挨拶をしてくれて、中に入ったら賢者の間に繋がっていた。


 日本の一般家庭に普及しているユニットバスで、私はのんびり湯船に浸かっている。

 いやもう、考えたら負けだ。気持ち良いし。

 今日は特にイヤな思いと怖い思いのダブルパンチ食らったから、馴染んだ空間があるとホッとしてしまう。

「寝間着。ここに置いておくからね」

 脱衣所の方からクリスの声がしている。って、何してるんでしょうね。賢者様は。


「お風呂、お先に頂きました。クリス様も入るんでしょ?」

 お風呂から出てきたら、賢者の間が和風空間に……というか、日本の斎藤家の和室を再現している。

「いや。僕には必要無いからね。第二王子の方ならまだしもって、髪の毛ちゃんと乾かさないと、風邪ひくよ」

 ドライヤーでなんてことはなく。手をかざされて、一瞬で髪を乾かされた。


「夜会服は、君の屋敷に送ったし、替えのドレスはゲストルームにあるから、明日の朝、侍女たちに着替えさせてもらったら良いよ」

 こっちのクリスは、世話好きなのかな。頼るなって言うくせに甘やかしてくれる。

 実際、この空間に癒されてるもの、私。


「えっと、今日はありがとうございました」

「あっちは僕じゃないけどね。多分、伝わってるよ。クラレンスも自分の部屋に戻ったみたいだし」

「結局、協力してもらって」

 そう言う私の口をクリスが手で止めた。少し考えるふりをして

「なるほど、ユウキは僕らがわかるんだね」

 感心したようにそう言った。

「王宮に入った時、少し雰囲気が変わったから……」

「そっか、僕が入っても、あの体じゃ能力使えないからね。結局、クラレンスを殴って止めちゃった。怖い思いさせてごめんね」

「全く、使えないんですか?」

「王妃とキャロルの体の方はフルに使えるんだけど。第二王子の体は少し強いだけの、普通の人間だからね。賢者の石の方が私より制限されてないんじゃないかな。結界も使えてたし」

 ふ~ん。そんなもんなんだ。


「本当にありがとうございました」

 私はペコンと頭を下げてお礼を言った。

「ここは、僕と二人だけで誰も来ない空間だから、あまり今日の事は蒸し返さない方が良いよ」

 なんで? お礼言っただけなのに。

「見返りを求められても困るだろ?」

 見返り? 

「まぁ。分からないよね。まだ中身12歳だし。大丈夫、僕はそういう欲はもう無くなっているから。だけど、王子の方は気を付けてね。()()()()()も、しっかりあるからね」

「意味が分からないです」

「そうだねぇ」

 と言ってクリスはまた目の前で考え出した。どう説明したら良いのかと悩んでるみたい。

 

 その内に、私の方をクリスが見つめてきた。

 なんだか、怖い。大声出された時のような怖さじゃなくて。……なにか、身がすくむような。

 気が付いたら、側に来ていて抱きしめられていた。


 すぐにでも、逃げ出したい気分になる。やめてって言いたいのに声が出ない。

 耳元に息がかかってる。たすけ……。

「塩と醤油と、とんこつと……あと、みそ……どれが良い?」

「へ?」

 今までの怖さが無くなってる。

 クリスを見上げたら、面白がってる顔が見えた。


「ちょっとは、身の危険感じた?」

「なんか、怖かったです。けど、何ですか? 塩とか醤油とかって」

「ラーメン。お腹空いたよね。何が良い?」

「塩」

「塩……ね。了解」


 クリスが台所でインスタントラーメン作ってる。

 キャベツとか野菜やウインナー入れて、卵を最後に落として……。

 お父さんが作ってくれたラーメンと同じだ。

 料理が得意でないお父さんが、それでもインスタントは体に悪いからと、野菜をたくさん入れてくれていた。


「クラレンスを止めたのは、君のお願いじゃなかったからね。あっちのクリスは放置する方針だったようだし。だいたい、ダグラスが止めれないのが悪い」

「それでも、ありがとうございます」


「はい。どうぞ」

 ラーメンが二人分できていた。ラーメンをおいたちゃぶ台も、私の家のものが再現されている。

 体に悪い……というか、太りそうだけど真夜中のラーメンって、美味しいんだよね。


「この世界で、ラーメンを食べれるなんて思いませんでした」

「第二王子を選んだら、ここにいつでも来れるよ。ラーメンでも何でも、また作ってあげる」

「え? これってそういうアピールなんですか?」

「うん。そういうアピール。僕はユウキの事、好きだからね。せっかくこうして向き合う事が出来ているんだ。一緒に居たいよ」

「その割には、どちらも私に意地悪なんですけど」


「それは仕方が無いね。僕らに頼る事を覚えてしまったら、とても貴族社会で生きてはいけないよ。自分で考えて行動することを覚えてもらわないと。僕に頼り切ってたら、また理不尽な事をしてしまうよ」

 また、不穏な事を言っているけど。


「この会話が、ラーメン食べながらっていうのが、なんか」

「僕もそう思うけどね」

 そして食べ終わった後、二人で食器とか片付けて、私達はお布団を敷いて寝てしまった。

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