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お姫様の恋 ~ハーボルト王国 王室に嫁いだ姫君たち~  作者: 松本せりか
見た目は17歳、中身は12歳の悪役令嬢
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第21話 これって、交渉ですらない不毛な会話だよね

「クリス殿下は、クラレンス殿下が行動を起こしたらわかりますか?」

「わかるよ」

 クリスは、なんでもないように返事をする。


「あの。クラレンス殿下の行動を止めてもらえないでしょうか?」

「イヤだよ。自分でやれば?」

 プイっという感じでそっぽ向かれた。何だか子どもっぽい。

 う~ん。やっぱり無理か。

「じゃ、行動を起こしたら教えて…………」

「それもイヤ。なんで、僕がそんな事しないといけないのって話だよね。あ~もう。こんなところでしていい会話じゃなくなってる」

 クリスがそう言った途端、周りの音がキレイに消えた。


「で? どんな会話がしたいんだい? 聞くだけは聞くけど」

 ものすごく機嫌が悪くなっているけど、一応こっちを向いてくれた。

「クラレンス殿下がリリー様を助けたいと思っているのは分かるんです。でも、助けに行くだけでも、同罪になってしまうでしょう? だから……」

 目の前のクリスの顔が、怪訝そうな顔になっている。

 あれ?


「リリーを見捨てろって言えって? 僕がクラレンスに?」

「見捨てろなんて」

 そんなこと言ってない。

 クリスから呆れた顔で見られてる。本当に、何で?

「言ってるんだよ。リリーを助けたら罪になるから、助けようとする行動を止めてって事だろ?」

「あ……」

「あ、じゃない。それに君は忘れているみたいだけど、僕はもうクラレンスを見限って、廃嫡に持っていこうとしてるんだよ」

 そう……だった。どうしよう。どうしたら良いんだろう。

 

「あざといねぇ。そこで泣くんだ」

 クリスから(わら)われた。

 え? 私、泣いてる? 思わず自分の頬に手を当ててみる。

 夜会用の手袋がじんわりと湿る。涙が出ていたんだ。

「泣いたら、男が動いてくれると思っているのかい?」

「そんなこと」

 思った事もない。

 仕方ないじゃない。賢者のクリスにそっくりなんだもん。つい、気を抜いて泣いてしまっただけなのに。ひどい。


「うん。知っているけどさ。その姿で、このタイミングで泣いたら、そう取られても仕方ないだろう? ああ。ダグラスの目の前で泣いて見せたら、命を懸けて動いてくれるかもしれないけど。頼る相手を間違えたねぇ」

「そんな……」

 命を懸けてなんて言えるわけない。

「僕には言うのに?」

「だって、クリス殿下は」

 賢者と同じ立場じゃない。


「僕の立場でも、王太子であるクラレンスの行動を止めるとなると、ましてやリリーを助けるなんて、命がいくつあっても足りないという感じだよね。今ここにいる僕は何の権力もない、賢者の能力も制限された、ただの第二王子なんだからね」


 そう……なんだ。

 兄弟でも、王太子とただの王子では身分が違う。クラレンスの不興をかったら、不敬罪も成り立ってしまう。リリーを助けるなんて論外だ。


「賢者様。賢者様なら何とかなるんじゃ」

「どこまで甘えるつもり?」

 私のセリフをさえぎって、クリスが言ってきた。私の事を睨んでる。

「出来る出来ない以前に、しないよ。賢者は戦争でも起きない限り、人間に関与しない。それが秩序ってものだろう?」

 最後の方は、少し優しい感じに戻っていた。

 ハンカチを取り出して、私の頬を拭いてくれている。


「もう良いかな。この会話、すごく不毛だから。君が交渉をすると言うのならまだしも。差し出せるものも、覚悟も、何も持ってきていないよね」

「交渉?」

「そう……交渉。人はね。メリットが無いと動かないよ。そうだな。僕なら、君が手に入るなら動いても良いかな。多分、ダグラスも同じだよ」

 それじゃあ、意味が無い……よね。私を手に入れるって、王太子になりたいって事だもん。


「そう。クラレンスはその時点で廃嫡されちゃうよね。ユウキも頭良いじゃない」

 頬の、クリスがハンカチ越しに触っていた部分が少し暖かくなった。

 それと同時に、周りの音が聞こえだす。

「さて、ラストダンスの前に、クラレンスに君を返さなきゃ。そうそう、泣いた後はちゃんと消したからね。お化粧もばっちりだよ」

 クリスからおいでって、手を差し伸べられる。

 私はその手を取って、夜会会場に戻った。 

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