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師弟


 彼らを俺の部屋まで案内し、生き残り同士が顔を合わせる。

 思えばこういう展開って初だよな。映画ではよく見るよ。……後々悲惨な目に遭わなければいいが。


「うお! 本当に黒川と藍沢が居る!」

「女率高いですね……」

「まさか三馬鹿に会うとはね」

「あぁ? その呼び方やめろっつっただろ!」

「くるみ先輩、以前お話しした裏口の壁を脚立で抜け出すトリオはこいつらです」

「な〜る、頭文字を取って三馬鹿とかいう……」


 各面々が互いに再会の喜びを分かち合っている。分かち合って……ない?


「え? くるみ先輩ってあの“男割りのくるみ”で有名な学園のマドンナっすか!?」

「はぁ……その呼び方定着してたのね」

「先輩、残念ながら皆知ってます」

「馬場、お前妙に詳しいのな」

「髪がピンクだから気付かなかったけど、各学年男子の六割がファンクラブを作ってたらしいぜ」

「すげーな……」

「告白してもフラれる率百パーとかいう」

「マジかよ……」

「最後には鋼鉄の処女アイアンメイデンってアダ名が――」

「ちょっとなによそれ! 聞き捨てならないわ」


 今度は俺と雫が蚊帳の外で美優ちゃんも全然会話に入っていないが、過去話も面白いもんだ。くるみがそこまで人気あったとは恐れ入った。

 そのファンクラブ会員共に、くるみのあの淫乱モードをお断りしたなんて知られたら、ゾンビの群れに放り込まれるぐらいじゃ済まないだろう。


「まぁまぁ先輩はガードが堅いって意味ですよ」

「智香! あんた知ってたわね?」

「まさかそんなマドンナがここに居るなんて……勇真さんも隅に置けませんね」

「違う違う、雫は無言でつねるのやめて」

「勇真さん、師匠と呼ばせていただきます」

「なんで!?」


 そんなこんなで初顔合わせも無事に済み、二人も雰囲気になじめたようだ。

 歳は三つしか違わないはずなのに、やはり高校生ってエネルギッシュで若いな。

 高校生以外の雫とくるみは別の意味でエネルギーがあり過ぎて困るし、俺はもはやゾンビをひたすら観賞し研究しているお爺ちゃんみたいなもんだろう。


 我ながら青春をゾンビに捧げるってどうなんだ……。まぁそのおかげで、今こうして孤独じゃなく命があるんだけども。

 なんにせよ皆が打ち解けるのはいいことだ。くるみの半ゾンビ化を彼らに教えるのはまだ先でいいか……いきなり言われても信じないだろうし。


 後は彼らを含めて一度遠征をしてみたい。この辺で集められる情報も少ないし、政府がラジオで言っていた船の件も気にはしている。

 これも映画や海外ドラマの受け売りだが、政府がわざわざ放送する時は何か裏がありそうで、簡単には信用はできない。

 安全とうたいながら実験体を集め人体実験に関与していたり、辺り一帯を消毒するために誘き寄せて殺していく等、生存者にはメリットがなく方法は様々だ。


 この国は……どうだろうな。お偉いさんだけとっとと避難して、数年後までシェルターにでも閉じ籠っていそうだ。

 太陽の光も届かない暗い地下施設であーだこーだ何の実も結ばない会議をしてくれるより、研究者を集め原因究明やワクチンの開発をしてくれた方がよっぽど助かるんだがなぁ。

 日本には救助にしろ人材にしろ、そこまで力を持ったスペシャルチームが居ないし、期待するだけ無駄か……。



「あの……勇真さん考え込んでどうしたんすか?」

「いつものクセね。一度考察すると長いのよ」

「いつも……ねぇ」

「何か言いたそうねくるみ」

「別にぃ〜、雫が勇真にお熱なのはいつものことだし。それより勇真は気持ちに気付いてんの?」

「た、多分……いや鈍感だし……って何高校生の前で言わせてんのよ!」

「あ、俺らはお構い無く。馬場、今からキャッツファイトが始まるぞ」

「えぇ!? なんで鹿田は分かるんだよ」

「ダメねそれじゃ。いっそのこと夜中にベッドで襲いかかったら?」

「それはあんたでしょ! 私まで淫乱にする気!?」

「よくもバラしたわね!? あ、あたしは酒に酔っただけだもん!」

「とかいって、あなたも勇真を狙ってたんでしょ?」

「違うわよ! この箱入り娘!」

「何よこのアバズレ!」



 鹿田君に肩を叩かれ現実に戻された。若干焦った様子で雫達の言い争いを止めろと訴えてくる。考え事をしているうちに何かあったようだ。


「あぁ、あれいつものことだから」

「いやいやあれ勇真さんが原因っすよ?」

「また俺が巻き込まれてんのか。鹿田君放置が最適だ。収まるまで待とう」

「巻き込まれるっつーか渦の中心だと思うんですけど」

「師匠は本当に鈍感なお方だ……」


 結局二人が疲れるまで続き、約一時間もの時を費やした。その間に彼らには武器のことやゾンビの特徴を伝え、今後の方針も粗方決まったからいいけどね。



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