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悪人面の魔王でも友達になってくれますか?  作者: 梅三六角
最終章 魔王が生き続ける意義
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過去との決着

「どういうつもりかは知らないが、邪魔をするなら始末するぞ!」


 ルドルフがエクスプロージョンを放つ直前でリヴァイアサンは水中に潜った。


「川の中か。濁流で水が濁っているせいで、これではどこにいるのか見当がつかない。」


 その直後、ルドルフの背後からリヴァイアサンが顔を出すと、息を大きく吸い込む。


「貴様!」


 ルドルフはリヴァイアサンの方を向こうとしたが一瞬遅かった。リヴァイアサンは、口から強烈な水流を放った。ルドルフは直撃して吹き飛ばされ、川の中に落下した。そのまま水中深くに落下していく。


(どこにいる!?)


 ルドルフが相手を探そうとした時、右後方から気配を感じた。ルドルフが向き直って剣を振ろうとする直前で、リヴァイアサンがルドルフの体に喰らい付いた。


「ぐおおおおおっ!このっ……!」


 ルドルフは更に水中へ引き摺りこまれていく。


「この魔王ルドルフを、舐めるな!」


 ルドルフの目が光ると、リヴァイアサンにエクスプロージョンのアビリティが数発命中する。リヴァイササンが呻き声を上げ、拘束する力が緩む。ルドルフはリヴァイアサンの口から脱出した。


「自由になればこちらのものだ!」


 ルドルフは魔力の剣を作り出し、剣圧を放った。リヴァイアサンは剣圧を受けて大きく仰け反るが、まだ向かってくる。


「水中のせいで威力が足りないか?ならばもう一撃だ!」


 再度剣圧を放とうとした時、何かが水中に勢い良く飛び込んできた。


■■■


 俺は川の水面からどうにか飛び出し、飛行しながらリヴァイアサンとルドルフを探していた。そんな時、川の水面に爆発が起こったような飛沫があがっていた。そこを目印に、俺は拳に魔力を集中させ、自分の体諸共飛び込んだ。


「そこだ!!」


 川が割れるのではないかという勢いで、俺を中心に水が上へと押し上げられた。


「ルイ・アントワール、お前か!?」


 狙い通り、ルドルフとリヴァイアサンを川の中から見つけることが出来た。吹き飛ばされたルドルフは川に落ち、そこに流れてきた巨木に掴まり、這い上がった。俺は川底から飛び上がって水面上に出ると、巨木の上、ルドルフとは逆の端に降り立った。


「あのような化け物を、何故庇う?あれがミレイユだとでもいうのか?」


 ルドルフの問いに


「分からないな。ミレイユではないかもしれないし、仮にミレイユ本人であったとしても、あの怪我ではもう手遅れかもしれない。

 だが、あれがミレイユで、その上助かる可能性が万が一にでも残っているなら、やらないわけにはいかないだろう。」


 そう宣言し、俺は魔力の剣を作り出す。俺が作り出した剣は、先程までルドルフが作り出していた剣とまるで同じ大きさだった。


「そうか、貴様、俺の魔力を吸収していたな。」


 ルドルフも同じく剣を作り出す。


「だが、俺の魔力を多少吸収したところで、俺の方が上なのは変わらん!」


 ルドルフは剣圧を放った。俺は剣を使って受け止める。その時、ルドルフの目が一瞬光ったのが見えた。


「うおおおお!!」


 俺は渾身の力で剣圧を払い飛ばして、ルドルフの方に突っ込んだ。その後ろで爆発が起こる。


(川の流れの勢いが増している。俺達が乗っている大木の速さが変化してるせいで、ピンポイントの座標を狙えない!)


 エクスプロージョンを使うには不適だと判断したルドルフは剣を構え、こちらに斬りかかってくる。巨木の中央で互いの剣がぶつかり合う。

 両者共に剣を振り払い、間合いを取る。直後、先に距離を詰めて斬りかかってきたのはルドルフの方だった。俺はルドルフの剣撃を防御する。


「私のことを、筋肉馬鹿だと言ったな。悔しいが、その通りのようだ!」


 俺はルドルフの剣を跳ね返して、次々に剣撃を放つが、ルドルフに全て受け止められる。埒が明かないと判断した俺は、最後に剣を全力で振り切るが、ルドルフは後方にジャンプしてかわし、こちらと距離を取った。ルドルフは剣を上に掲げると、そこに巨大な紫色をした魔力の球が形成されていく。


(この技は、さっきライラ達に使った奴か!なら、俺だって!)


 俺も後ろに飛んで同じく剣を上げて魔力を集め出す。だが、集めたかと思うと、魔力がすぐに散ってしまった。


「何だ!?魔力はあっても、扱い方が間違っているのか!?」


 そうこうしている間にもルドルフは溜め終わり、こちらに魔力球を放ってきた。


「くそう!!」


 俺が再度魔力を込めると、魔力の球こそ出ないものの、剣が更に巨大化した。巨大化した剣で、飛んできた魔力球を斬り付けるが、跳ね返すことは容易ではなく、俺の体が後ろに押されていく。このままでは、川の中に転落する。


 俺はあと一歩のところで踏み止まり、更に力を込めると、魔力球が真っ二つになった。同時に、球が爆発を起こした。


「うわっ!?」

「むっ!?」


 爆風を受け、俺もルドルフも怯む。爆発が過ぎ去った後、ルドルフは目を丸くする。


「消えた!?今の爆風で川に転落したか、それとも……」


 ルドルフがこちらを見つけるより早く、


「ここだ!!」


 既に飛行し、空中から攻撃態勢をとっていた俺は巨大化した剣を振り上げ、急降下と同時に斬りかかる。今の爆風を受けてかなりのダメージを受け、血もどくどくと出ている。もうそろそろこちらの限界が近い。


「何度も言ったはずだ!お前にできることは俺にもできると!」


 ルドルフも剣を巨大化させて、俺を迎え撃った。剣が鍔迫り合いの形になり、俺もルドルフもひたすら力で押す。力が拮抗していると思ったその時、ルドルフの剣に亀裂が入った。


「何!?」


 ルドルフの剣の亀裂が広がったかと思うとそのまま弾けて消滅し、その間に俺は剣でルドルフの体を両断、さらに地面に着地し、駄目押しでもう一撃真正面から切り刻んだ。


(馬鹿な!?この私が、負けた……!?こんな、魔王の出来損ないに、魔王であるこの私が……!?)


 ダヴィドの体から出てきたルドルフの魂とも言える赤い光は、とうとう魔力を使い果たし、弾けて消滅していった。ダヴィドの視界が俺の姿を捕える。


(何故だ?何故負ける?俺は昔からこいつには勝っていた。頭の出来も、武術も、人望だって、全てにおいて俺の方が勝っていたはずだ!

 この俺がこんな奴に負けるなんて……あり得ない!)


 ダヴィドの体はバランスを崩し、倒れると共に巨木から転落し、川に沈んでいった。俺はその場に座り込む。


「我ながらこんな体で、よく、動いたよな。だが、もう、無理だ。」


 俺が乗っていた巨木は流され、滝壺に差し掛かって、下へと落下していく。落下中、俺は先程まで俺に協力してくれていたリヴァイアサンが同じく滝壺から落ちてくるのを見た。


■■■


 光の中に、俺は倒れていた。目を開き、上を見上げると、そこにはミレイユの姿があった。


「ミレイユ!」


 俺は起き上がり、その名を口にした。


「ここは……、どこだ?俺は、また死んだのか?」


 ミレイユは微笑んだまま、何も言わない。俺は諦めて苦笑した。


「俺は、昔から魔王だったようだ。それが勇者に倒され、人間として転生して、そこでもまた死んで再び魔王となった。そして、また死んだ。

 俺はつくづく、この世に向いていないらしい。そもそも、俺のような半端な魔王が生き続ける意義なんて、どこにもないしな。」


 俺は宙に視線を走らせ、そしてまたミレイユを見る。


「ここにいれば、この先はミレイユと一緒にいることになるのか?そうするのも悪くないな。

 いや、まあ、ミレイユが嫌じゃなければの話だが。」


 慌てて取り繕おうとした俺に、そこでようやくミレイユが口を開く。


「いけませんよ、ルイ様。あなたがここで死んだら、クレアのことはどうするつもりですか?」


 俺ははっとした。クレアとずっと一緒にいると約束したのはついさっきだった。俺が死んだらクレアがどういう思いをするかも、その時分かったはずだった。俺は悲劇のヒーローぶってる最低な男だった。


「御尤もだ。俺はここで死んではいけない。俺のような奴のことも、待ってくれている人間がいる。だから、俺は戻るよ。」


 ミレイユはゆっくりと頷く。


「だから、ミレイユ。」


 俺はミレイユに近付いて言った。


「お前も戻って来てくれ。礼がしたい。

 あの時、お前が守ってくれなければ俺は死んでいた。まだ報酬も支払っていないじゃないか。いくら感謝しても足りないぐらいだ。いくらでも払う。お前の望むことなら、何でも聞く。だから……」


 俺がミレイユの方に手を伸ばした時、再び俺達は光に包まれていった。

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