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悪人面の魔王でも友達になってくれますか?  作者: 梅三六角
最終章 魔王が生き続ける意義
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いつか見た魔物

 再度ルドルフの方に視線を戻す。


「さあ、来るが良い。それとも、万策尽きたか?」


 ルドルフが余裕の笑みを浮かべながら言う。


「お前を倒すのに、策等いるか!!」


 俺は魔力の剣を作り出す。立ちあがってルドルフの方に駆けだした。ルドルフが剣圧を放とうと、剣を振り上げる。その瞬間を狙って魔力の剣を投げつける。想定外の行動か、ルドルフは一瞬表情をしかめて剣でそれを受ける。


「今だ!」


 俺は軽く指を鳴らすと、剣が爆発を起こす。


「うぐっ…!」


 ルドルフは剣で防御していたために致命傷は防ぐが爆発によるダメージを受け、さらにこちらを見失った。俺はルドルフから少し間合いを取った、左側に陣取る。


「そこか!?」


 ルドルフが俺に気付いて剣を振り上げるその直前に、俺は爪を伸ばし、相手の脇腹を貫いた。


「貴様っ!」


 ルドルフの脇腹から血が流れ落ちる。


「どうだ!?一発くれてやったぞ!!」


 俺が言った直後、相手が振り下ろした剣でバターの如く俺の爪が両断される。


(くそっ、一発当てた後のことは考えていない。剣圧を喰らう前に逃げるか!)


 俺はその場を飛び退く。


(エクスプロージョンか!剣圧か!?)


 俺は相手の様子を観察する。ルドルフが剣を振り上げるのを確認した。


「剣圧でくるか!?」


 俺の方目掛けて剣圧が迫ってくる。俺は右の方に避けようとする。


(だが、待てよ。)


 俺は右に飛ぼうとした時に、ルドルフの目が光ったのを見た。俺は方向を急転換して左に避ける。突如右方向がエクスプロージョンで爆破された。


「そう来るだろうと思っていた!二度は通じるか!」


 俺はそのままルドルフから距離を取る。その時、ルドルフは剣圧を放つでもなく、剣を振りかぶってそのまま投げてきた。俺は飛んできた剣を右にかわす。剣は俺が先程までいた場所の地面に突き刺さった。


(これはまさか!?早く離れなければ!)


 俺が退避するより早くルドルフが指を鳴らすと、剣が大爆発を起こす。


「ぐわあああ!!」


 距離が離れているというのに、爆発はこちらまで十分に届いた。剣も出していなかった俺は魔力の爆発を受けて吹き飛ぶ。


 俺が起き上がるより先に、ルドルフがこちらに歩いてきていた。地面に倒れた俺を、ルドルフが見下ろしながら言う。


「魔力の剣にあんな使い方があったとはな。気付かせてくれたのには、礼を言うぞ。

 だが、所詮お前は俺の出来損ない。お前ができることは、俺にも全てできる。」

「くそ…」


 ルドルフは俺に向かって剣を振り上げる。


「自分の体を斬るのは気が進まないが、まあ良い。過去の未熟な自分への決別だと思うことにしよう。さらばだ。」


 その時、


「魔王様!」


 クレアがこちらに走ってくる。剣を手にかけている。彼女が何をしようとしているのか、すぐに分かった。バーサーカーのアビリティで相手の剣を受け止めるつもりだ。


「待て、よすんだ、クレア!!」


 バーサーカーは自分の身体能力を大幅に上昇させる。だが、強化されるのは肉体だけで、武器までは強化されない。既に先程の戦いで何度もルドルフの攻撃を剣に受けている。今ここでルドルフの魔力の剣に勝てる見込みはない。振り下ろされた剣を、クレアが受け止める。そのすぐ後に、剣にひびが入る。


「っ!!」


 クレアが目を見開く。俺はすぐに立ち上がって剣を生成し、相手の剣を受け止めにかかる。


「魔王様!?大丈夫なの!?」

「大丈夫でないのはお前の方だ!クレア、早く逃げるんだ!」

「でも!!」


 言っている間に、クレアの剣は折られた。俺にかかる力が増えて押されかける。


「いいから早く!このままだと、私がやられたら、お前も死ぬんだぞ!!」

「でも、魔王様を見捨てて逃げるなんて、絶対に嫌!!」

「私は、ミレイユに続いてお前までも失いたくはない!それに、お前の命はお前だけのものでも、私だけのものでもない!

 お前が死んだら、ライラはどうする?ロアは?お前の母親だって、どう思うって言うんだ!?」

「それは…」


 クレアは言葉に詰まる。


「くそっ!!許せ、クレア!!」


 俺は神通力をクレアに向かって放った。


「きゃああっ!!」


 神通力を受けたクレアは吹っ飛ばされ、ルドルフの攻撃範囲から離れた。


「大した余裕だな。小娘の心配をしている暇があるのか?」


 ルドルフが剣に力を込める。俺も押し返そうと防御する。剣が交わったところで、周囲に魔力が弾け飛ぶ。


「悪足掻きはここまでだ!!」


 ルドルフは俺の剣を勢い良く振り払った。


バキッ!


 その音と共に、俺が持っていた魔力の剣が折れるのを見た。そのまま俺が持っていた剣が弾けて消えた。


(俺の……魔力の剣が……!)


 その光景がまるでスローモーションのように見える。ルドルフが剣を俺目掛けて振り下ろす。もはや、防御しようにも剣がない。


(いや、まだ諦めるな!!)


 俺は手に神通力を纏わせると、ルドルフが振り下ろした魔力の剣を白刃取りの要領で挟む。


「お前だって知っているだろう!相手の放つ魔力に振れていれば、魔力を自分の方に流せる。この剣の力を、私のものにしてやる!」


 ルドルフは表情一つ変えない。


「俺がお前なら、そんな真似はしなかっただろうな。理由は簡単だ。魔力を十分に吸収するより早く、お前が力尽きるからだ。」


 俺の体に衝撃と電撃が物凄い勢いで流れ込む。だが、一か八か、逆転するチャンスはこれしかない。


「ぐっ……、諦めるか!!」


 俺は、魔力を自分に移していく。本来なら、魔力を十分に吸収したなら、ただちに剣から手を離し、相手から距離をとらないといけない。頭では分かっていたが、最悪なことに体力の消耗が激しすぎて体は動かせなくなっていた。もはや痛みも熱さも感じなくなっていく。


 体中から、力が抜けていき、しまいには目が霞んできた。挟んでいる剣が次第に抑えられなくなっていき、少しずつ俺の方に迫ってくる。


(身を呈しても勝てないというのか……!!すまない、クレア、ロア、ライラ、それに、ミレイユ……!!)


 剣があと少しで俺の手を抜け、俺が真っ二つになろうという時、足元から地響きが起こる。俺もルドルフも気を取られる。俺達がいる足元の地面に亀裂が入り、どんどん広がっていく。


「ちっ!!」


 ルドルフは剣を俺から引き上げて、後ろに飛ぶ。俺も数刻遅れて、亀裂を飛んで避ける。亀裂が広がり、隙間から水が噴き出してくる。


「これは……、この大雨のせいか!?」


 俺は周りを見る。今俺達が居る場所は、川の真ん中に浮かぶ中州のような場所だ。大雨が降れば流される恐れがある。


 しかし、それを差し引いても、異常だ。地面から噴き出す水の量が増え、さらに亀裂のせいで足場が崩れ始める。


「う……、これは、いったい……?」


 ロアが頭を抱えながら起き上がる。


「ロア!よく聞くんだ!見ての通り、この島はこの大雨でもうすぐ流される!その前にクレアとライラを連れてこの場から離れてくれ!」


 ロアはようやく状況が飲み込めたようで驚愕の表情になる。


「それは……!できるけど、でもあなたは!?」

「まだやることが残っている!ルドルフを片付けたら、すぐに向かう!」

「勝算は!?勝算はあるの!?」

「生意気に私の心配をしている場合か?心配するな!これでも魔王の端くれだ。約束は守る。」


 ロアは悩んだ様子だったが、頷き、クレアとライラの元へ行き、テレポートのアビリティを発動させる。足場が崩れ、狭くなった足場は川に流されていく。その川の中から大きく水飛沫が立ったかと思うと、水の中から巨大な水龍、リヴァイアサンが姿を現した。


「ちっ、後少しのところでこのような邪魔が入ろうとは。」


 ルドルフがリヴァイアサンに身構える。


(リヴァイアサン?最近、見たぞ。)


 俺はリヴァイアサンを見上げる。リヴァイアサンと、少しだけ目が合った。一瞬、リヴァイアサンとミレイユの姿が重なった気がした。


「ミレイユ……?お前なのか?」


 だが、それに気が付く前に俺が乗っている岩盤に鉄砲水が飛んできて、俺はその勢いに川に転落した。


「ミレイユ!!」


 俺は流される中、リヴァイアサンとルドルフが対峙しているのを見た。向かうどころか、俺はどんどん離れていく。そうこうしている間に水に沈んでいく。


 不思議だった。あれほどのダメージを受けたというのに、俺の体にはまだ強い魔力が湧いてくるような感覚があった。


「ここでくたばってたまるか!」


 俺は体を動かし、どうにか水面に移動しようと足掻いた。

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