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悪人面の魔王でも友達になってくれますか?  作者: 梅三六角
第十三章 消えない柵
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万事休す

 周りはダヴィドの部下で囲まれている。どうしようもなく絶体絶命である。


「ここで俺を離さないと、あの娘の首が飛ぶって言いたいところだけど、まさか聞くわけないよなぁ?いくらお前が大甘ちゃんだとしてもさぁ?」


 ダヴィドはにやにやと笑いながら問う。俺は唇を噛みしめながらも、ダヴィドを解放する。


「底なしの甘さだなぁ、お前。ここで俺を始末すれば、少なくとも自分は助かったってのによ。

 まあ、良い。本当にあの娘が大事だってんなら動くなよ。」


 俺はただダヴィドを睨み返すことしかできない。悔しさで視界が白くなりかける。


「お前ら、始めようぜ。魔王討伐をさぁ。だけど、とどめは俺だからな。そこんとこは分かってるよな。」


 ダヴィドの部下の男達が剣や槌を出す。


「やれ。」


 ダヴィドの命令と共に、部下の一人が俺の肩から剣で斬り付ける。斬られた場所から血が噴き出す。既にかなりのダメージを受けていた俺はその場に片膝を付く。間髪入れずに、槍で後ろから突かれる。槌で後頭部に一撃を入れられる。


「う…ぐ…」


 俺は地面に倒れる。すると、ダヴィドは俺の髪を引っ張り、立たせる。


「まだ寝るのは早いんだよ。」


 そう言って鳩尾に拳を放つ。息が詰まる。


 万全な状態であればさほどでもないダメージも、今は全てが苦痛に感じた。直後に周りの部下達からも殴る、蹴る、斬り付ける等の暴行を受ける。腰に槌の一撃を喰らい、再び地面に倒れる。今度は倒れたところに蹴りを入れられる。ダヴィドが俺の頭を踏み付け、体重をかけてくる。


「懐かしいよな。学生の時も、こんなことやってたっけな。あの頃は愉快だったな。

 俺はクラスの優等生でお前は落ちこぼれ。俺はどこへ行っても女どもからちやほやされるし、教師にとっても、模範生だった。おかげで、お前を陰でどれだけ殴ろうが蹴ろうが金を巻き上げようが、周りの奴らをけしかけようが主犯が俺だと気付かれなかったよ。

 お前をうっかり殺しちまった時は、憲兵にばれるんじゃないかって心配もしたが、俺が練習中の事故だって言ったら、教師共は何の疑いもなく信じてくれたよ。いや、本当に楽しかったさ。」


 ダヴィドは当時を振り返って宙に目をやる。そして、すぐに俺に視線を戻す。


「そんな俺がよ。今じゃ指名手配犯だ。こんな馬鹿な話はないと思わないか?あのアーサーの爺はいずれ始末する。

 それよりもだ、お前を殺したら俺は魔王よりも強いことが証明される。そうすりゃあ、周りの奴らも俺においそれと手は出せないだろう。そして、いずれは俺が魔王の代わりに世界を支配するのさ。」


 そう言って、踏み付ける足に力を入れる。


「馬鹿を言うな!お前のような私利私欲の塊の男に、世を治められるか!」


 俺は力を入れて顔を持ち上げようとする。


「調子に乗るんじゃねえ!魔王もどきが!」


 ダヴィドが起き上がろうとする俺の腹部に蹴りを入れる。


「ぐ…!」


 俺は咳き込んでその場に崩れ落ちる。


「良いか?お前は魔王の立場を甘く見過ぎなんだよ。学校の教科書にも書いてあっただろうが。

 先代の魔王は暴虐の限りを尽くし、人間共から金や食料を奪うなんて当たり前。気に入らない人間や邪魔をする人間は容赦なく殺してきた。ただ楽しみのためだけに女子供を傷付けることさえあった。奴隷として、多くの人間を道具同然に扱って、用がなくなればボロ雑巾のように始末した。

 逆にそういう奴がいたからこそ、世界は魔王を倒そうと一致団結し、国同士の争いは減った。そういう立場の奴が必要だったんだよ。

 俺が魔王になったら、それぐらいのことをやってのける自信がある。言ってることが分かるか?今の世界は魔王として、お前よりも俺を必要としているんだよ。

 先代の魔王はやられたようだが、俺ぐらいの頭を持ち合わせていれば、生涯倒されることはない。お前の代わりに悠々自適の人生を送らせてもらうよ。」


 ダヴィドはそこで近くにいた部下に目をやり、


「おい、こいつを押さえていろ。」


 そう指示を出すと、二人の部下は俺の両腕を押さえ付ける。そして、ダヴィドは部下の一人から剣を受け取る。


「さて、そろそろお遊びは終わりだ。飽きてきたからな。

 じゃあな、魔王。あの世でさっきのメイドに会えるといいな。」


 ダヴィドが剣を振り上げる、その時、


「魔王様!?」


 クレアの声が、見当違いな方向から聞こえた。何とか顔だけ向けると、森の木々の間からクレアがこちらに走ってくるところだった。俺はそこで気付いて声を上げる。


「来るな、クレア!近付くな!」


 その直後、ダヴィドが振り下ろした剣が俺の胸部、心臓部をばっさりと斬り裂いた。


 全てがスローモーションのように見えた。走ってきたクレアが足を止め、その目から輝きが消えていく。敵に人質にされていたクレアが消えていく。そして、敵の中には、先程ダヴィドに爆破されて殺されたはずの執事服の男がいた。


(そうか…。捕まっていたクレアは、幻覚だったのか…

 あの部下の男を殺したように見せたのは、幻覚と悟られないようにするため。こんな単純な手に気が付かないとは…俺は…本当に…)


 俺は地面に倒れる。意識が急速に遠のく。


「魔王様!魔王様ーーー!!」


 クレアが叫ぶ声だけが、森の中に木霊した。

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