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悪人面の魔王でも友達になってくれますか?  作者: 梅三六角
第六章 乗っ取られた魔王城
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魔王としてあるまじき失態

 魔王の玉座の部屋まであと少し。なのだが、最後の門番というべきか、俺はミノタウロスと死闘を繰り広げていた。


 俺はミノタウロス目掛けて拳を突き出すが、相手は何のこともなく掌で受け止める。相手は力自慢の魔物であることに加え、こちらは疲労している。真正面からの攻撃では埒が明かない。ミノタウロスは俺の手を掴んだまま、もう片方の手に持った斧を振りかざしてきた。


 咄嗟に相手の手を振り払い、後ろに飛び退くが、肩の辺りに掠って血が噴き出す。ミノタウロスは背後に避けた俺にさらに斧を横に薙ぎ払ってくる。俺がジャンプしてかわすと、背後にあった柱が斧で真っ二つにされる。


 クレアもマチルダも無論手が出せないでこちらを見ているばかりだ。


(こうなったら、仕方がない。この手はできる限り使いたくなかったのだが……今使わなければここでやられるんだ!)


 ミノタウロスが斧を構えて突っ込んでくる。俺は相手が間合いに入るのを待ち、


「これならどうだ!」


 カマイタチを放った。ミノタウロスは斧で防御するが、持っている斧に罅が入る。


「まだまだぁッ!!」


 俺は構わずカマイタチを乱射する。合計五、六発は放ち、ミノタウロスが持った斧の刃が砕け散った。


 最後の一撃と共にミノタウロスに接近した俺は、武器がなくなって動揺している相手に爪で上から二撃斬り付けた。二発とも確かな手応えがあり、ミノタウロスは倒れた。


 俺は、床に両膝、両手を付いて崩れ落ちる。


(やっぱりだ。カマイタチ連射は魔力の負担が大きすぎる。その上、ここまでの道中で体力もかなり消耗した。

 これじゃ、魔力が使えないどころか、満足に歩けないぞ。)


 乱れる呼吸をどうにか整えようとしていると、


「魔王様!」


 クレアが心配して走り寄る。


「大丈夫だ、これぐらい。さあ、ミレイユはすぐそこだ。」


 俺は肩の怪我を押さえながら、根性で立ち上がる。


「でも、これじゃ魔王様、本当に死んじゃうよ。」

「万全の状態でもミレイユには敵わなかったのでしょう?ここで挑むのは無理、無茶、無謀ですぞ。」


 クレアに加えてマチルダにまで心配される。それだけ今の俺は傍から見てもひどい状態のようだ。どうにか回復できる手段がないかと考えていたら、思い出した。


「問題ない。玉座の部屋の前に回復ポイントの魔法陣を作っておいたのだ。」

「何故そのようなものをわざわざ設けたのですか?」


 マチルダが不審そうに聞いてくる。


「ここまでやってきた勇者に対する敬意みたいなものだ。」


 俺達は玉座の間の前に来るが、確かにそこに魔法陣があった。


 だが、ここで一つ気になることがある。そもそも、ミレイユは隠してあった宝箱を魔物に変えるような奴である。こんな分かりやすい場所にある回復ポイントをそのままにしておくだろうか。クレアが尋ねてくる。


「魔王様、どうするの?」

「まあ、待て。こういうものは、常に最悪の事態を想定して動くものだ。」


 俺は考える。仮にこの回復ポイントが罠だったとしよう。その場合、今の弱った状態でかかろうものなら、今度こそ命の保証はない。逆に、このまま回復ポイントを使わずにミレイユに挑んだ場合、前回より厳しい戦いになるのは必至だが、相手の手の内は分かっている。勝てる可能性は零ではない。


「決めた、この回復ポイントは使わずに行く!」

「でも、そんな怪我でミレイユと戦えるの?」

「厳しい戦いにはなるだろう。だが、ここで罠にかかって勝機が零になるよりは、まだ可能性がある。」

「待って、魔王様!それなら…」

「止めてくれるな。私が同じ相手に何度も負けるはずはない。」


 心配そうなクレアを余所に、俺は意気揚々とドアノブに手を掛けた、瞬間。


「げぴょおおおおおお!!!」


 突如、俺の体に強烈な電撃が走り、思わず奇怪な叫びを上げる。どうやらこのドア自体が罠だったらしい。その発想はなかった。俺はよろけ、そのまま背後にあった回復ポイント(?)を踏んでしまった。そのとき、回復ポイントは強い光を発する。まさか、本当に回復ポイントだったか?


ドグオオオオオン!


 俺の望みは大きな爆音と共に、打ち砕かれた。


 ああ、もう駄目だ。俺は歴史に名を残してしまう。雇ったメイドに城を乗っ取られ、それだけに飽き足らずに自分の城の罠で死んだ間抜けな魔王、頓馬王として。


「魔王様ーーーー!!」


 最後に見たのは、必死で俺に手を伸ばそうとするクレアの姿だった。そこで俺の意識は途切れた。


■■■


「魔王様!魔王様!」


 体を揺すぶられて目を覚ます。


 目の前に心配そうな顔のクレアがいた。最近、クレアにこんな顔をさせてばかりだな、と思った。俺は体を起こす。


「ここは、一体どこだ?」

「クレアの部屋でございますよ。あの後、罠で瀕死の重傷を負った魔王様を我々二人でここまで運び、クレアが手当てしていたのです。人を運ぶのは、老体にはきついものですな。」


 部屋の隅にマチルダがいる。


「私の部屋なら回復アイテムが蓄えてあるから、ここまでたどり着けて良かったよ。」


 クレアの言葉に納得がいった。クレア、マチルダ、俺の居住スペースから玉座の部屋までは、迷いさえしなければさほどの距離はない。だが、居住スペースのドアには鍵が掛かっており、その鍵を持っているのは俺とマチルダとクレアのみだ。ドアは頑丈に作ってあり、短時間で破壊するのはとても無理だ。


 さすがのミレイユも、居住スペースに侵入して罠を仕掛けることはできなかったようだ。


「しかし、アイテムがあったならどうしてもっと早くに教えてくれなかった?」

「教える前に、魔王様が玉座の部屋の罠にかかっちゃったんだよ。」


 クレアの言うとおり、彼女の話を最後まで聞かなかった俺が悪い。何はともあれ、これで体は随分楽になった。


「世話になったな、クレア。それにマチルダ。今度こそミレイユを倒して、この城を取り戻してくる。」

「本当に大丈夫?私も行こうか?」

「大丈夫だ。だから、ここで大人しく待っているんだぞ。」

「分かったよ。魔王様を信じてる。」


 俺はベッドから起き上がり、部屋を後にする。


■■■


 俺は玉座の間の扉を神通力でぶっ飛ばした。衝撃音と共に、壊れたドアの部品が床に落ちる。


「ずいぶんと無茶な入り方をするのですね。」


 玉座の間の椅子近くに佇んだミレイユが呆れたように言った。


「お前が扉に罠を仕掛けたからだろうが。」

「そうでしたね。あちこちに罠を仕掛けたせいで、どこに何を仕掛けたか忘れていました。」


 ミレイユは悪びれもせずに答え、階段から下りてきてこちらと同じ高さの床に立つ。


「今すぐこの城から出ていくというのなら、許してやろう。と言っても、聞かないのだろうな。」

「いえ、構わないですよ。」

「何だと?」


 予想外の答えに俺自身驚く。


「私に勝てれば、ですけどね。」


 ミレイユは再び杖を掲げると、足元の魔法陣からゴーレムが出現する。ミレイユはゴーレムの肩の上に乗る。


「自分で言うのもあれだが、ここは女性が住むような洒落た場所ではない。それでもここに居付くつもりか?」

「外見だの気品だの、そういう問題ではないのです。ここを居住地にすれば、お金を稼ぐには困らない。それだけです。」

「そうか、では仕方がない。私も雇ったメイドにやられるようでは魔王の名折れだ。全力で行かせてもらう。」

「宜しいでしょう。あなたの本気を見せて頂きます。」


■■■


 制御室。


 ミレイユがゴーレムを召喚すると共に、ガーゴイルが姿を消す。


「魔王様!?来てくれたんですね!?あんな女、すぐにでもやっつけちまってくだせぇ!」


 オークは魔王の到着に気付き、喜び勇んで椅子から降り、走って部屋を出ようとしたところで、転んだ。

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