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禁断スパイスと“急成長”の副作用

地下倉庫の「秘密の宴」が始まってから、数週間が経った。


リゼットは今日も、ザックが持ち込んだ魔物肉を手際よく捌きながら、


古文書のメモを片手に“禁断スパイス”の調合を試していた。


「……よし、この“黒い粉”を少しだけ……。

三百年前の料理人が“封印した”って書いてあるけど、祈りを込めれば大丈夫よね!」


「おい、封印されてるもんを勝手に使うな。死ぬのは俺だろ」


ザックは呆れながらも、リゼの作る料理の香りに抗えず、木箱に腰を下ろした。


その時、ザックはふと違和感を覚えた。


「……なあ、リゼ。お前……なんか最近、会った時より……その、デカくなってねえか?」


「え? 背が伸びたかな?ザックの持ってくるお肉が美味しいからだわ!」


リゼは無邪気に笑い、胸元をぽんと叩いた。


――ボインッ。


ザックはスープを吹き出した。


「ぶっっ!!

お、お前……! その……! 目のやり場に困るんだよ、ガキのくせに!」


「ガキじゃないわよ! 17歳よ!

それに最近、服が苦しくて……。

ほら見てザック、この制服、洗ったら縮んじゃったのかしら?」


地下倉庫の隅で、リゼ(リゼット)は胸元を何度も引っ張りながら顔をしかめていた。


入城した時はブカブカで、ハンスから「子供が親の服を着ているようだ」


と鼻で笑われた制服が、今やボタンが弾け飛ばんばかりにパンパンに張り詰めている。


ザックは顔を真っ赤にして叫んだ。


「縮んだんじゃねえ! お前が“膨らんだ”んだよ!!

こっち向くな! 飯に集中できねえ!」


「もう、動きにくくてしょうがないわ! 潜り込んで食材を探す時も、ここが引っかかって邪魔だし……。 ほら見て、ザック。こんなにぽよんぽよんしてたら、鍋の中を覗く時にも邪魔で……」」


「……ぶっっ!!」


ザックがスープを吹き出した。


「お、お前……! 年頃の女が、そんなことするな! 少しは恥じらいを持て!」


「えー? だって料理の邪魔なんだもん。」


ザックは顔を背け、耳まで赤くして猛然と肉を咀嚼した。


出会ったときは、折れそうなほど細い手足をした「小娘」だったはずだ。


それが、ザックが持ち込む高ランク魔物の肉を毎日食べ続けた結果――。


魔物の生命エネルギーは、リゼの「祈り」によって極限まで精製され、成長期の体にダイレクトに吸収された。


余分な脂肪は一切つかず、しなやかな筋肉と、そして女性としての「出るところ」を劇的に押し上げたのだ。


ザックは頭を抱えた。


(……こいつ、魔物肉を毎日食ってるせいで……

成長期に魔力が直撃してやがる……)


リゼットはそんなザックの心配など知らずひたすらに鍋をかき混ぜ、禁断スパイスをひとつまみ入れた。


ふわりと、甘く濃厚な香りが地下に広がる。


その香りは石壁を抜け、

上階の廊下へと漂っていった。

疲れ切った魔術師が、

その香りを吸い込んだ瞬間――


「……あれ……?

魔力の乱れが……整っていく……?」


また一人、勝手に回復してしまった。


地下では、リゼが皿を差し出していた。


「はいザック! 禁断スパイスの蛇団子よ!

祈りを込めたから、絶対美味しいわ!」


ザックは一口食べて、目を見開いた。


「……うまっ……!

なんだこれ……体の奥が熱くなる……!」


「よかった! ザックのお肉のおかげね!」


「……いや、お前の腕のせいだよ。

……それと、これ以上成長したら本当に外に出せねえぞ。」


「もう、ザックは過保護なんだから!」


リゼはケラケラと笑い、

ザックの皿におかわりを盛った。


彼女はまだ知らない。


この“魔物食による急成長”が、

後に北の砦でガイアス公爵を悶絶させ、

王都の騎士たちを鼻血の海に沈める

最強の天然兵器を生み出していることを。



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