知識の墓場は『知の宝庫』 ――地下倉庫の読書術
地下倉庫の奥深く。
カビ臭い棚の隙間で、リゼットは埃まみれの古い記録帳を広げていた。
「……へぇ、このひからびた根っこ、『龍の髭』って言うんだ。煮込むとちょっと苦いけど、脂身と合わせると魔力の巡りが良くなる……メモメモ」
王宮の誰もが忘れた“知識の墓場”。
しかしリゼットにとっては、宝物庫そのものだった。
棚には、歴代の料理人たちが書き残した
裏レシピ、異国の食材の記録、魔物の解体方法、古代の調理式――
王宮の表舞台には絶対に出せない“禁断の知識”が山のように眠っている。
そこへ、獲物を担いだザックが現れた。
「リゼット、お前またそんなボロ紙読んでんのか? 飯はまだかよ」
「ちょっと待ってザックさん! 今すごく面白いことが書いてあるの。
……三百年前に絶滅した『氷晶トカゲ』の保存方法。
これ、ザックさんが持ってきた“雪解けウサギ”にも応用できるかも!」
ザックは呆れたように眉をひそめた。
「……お前、その汚い字の古文書、全部理解してんのか?」
「字は汚いけど、書いてあることは“美味しい”の話だもん。
読んでるだけで口の中に味が広がるのよ。不思議ね!」
リゼットの脳内には、
読んだレシピ、嗅いだ匂い、味わった成分が
そのまま“味の書庫”として保存される。
これが彼女の隠れた才能――
《完全食感記憶》。
ハンスたちが「カビでも数えていろ」と押し込めたこの地下倉庫は、
リゼットにとっては王国最大の“食の図書館*だった。
「この赤い実は南方では解毒に使うけど、北の岩塩と合わせると旨味が十倍……。
あ、こっちには『魔術師の魔力を強制活性化させる劇薬』って書いてあるわ。
……ふーん、ハンスさんみたいにいつもイライラしてる人に飲ませたら面白いかも」
「やめとけ。死人が出る」
ザックはため息をつきながらも、
リゼットが次々と古文書を読み解いていく様子に、
背筋がひやりとした。
(……こいつ、ただの料理人じゃねぇ。
王宮が忘れた“禁忌の知識”を全部拾い上げてやがる……)
リゼットは本を閉じ、ぱっと笑顔になった。
「よし、覚えた! ザックさん、お待たせ!
今度はこの古い記録にあった“封印された禁断のスパイス”を使ってみるわね!」
「……おい、封印されてるもんを勝手に使うな。死ぬのは俺だろ」
「大丈夫! 祈りを込めれば“美味しい”に変わるから!」
ザックは頭を抱えた。
「……お前、いつかこの国を胃袋から滅ぼすんじゃねえか?」
その予感は、半分当たっていた。
この地下倉庫でリゼットが吸収した膨大な知識は、
後にガイアスを驚愕させ、
カシアンを震え上がらせ、
シグルドを唸らせ
王都の権力構造すら揺るがす“食の革命”の種となる。
そして今日も、
地下倉庫の片隅で、
リゼットの“楽しい読書タイム”は続いていた。
リゼットの豊富な知識はここで蓄えられたという設定です。
それらの知識が前作ではこのように活躍するわけです。
https://ncode.syosetu.com/n6607lr/21/
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