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麻痺無双!~ぶっ壊れスキルを手に入れた俺は、異世界まるっと麻痺らせる~  作者: スギセン
5章

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200/201

199話 馬車の旅路

 カタコト、カタン――馬車は往く。

 俺たちゃ三人、空の下。


 どこまでも続く平坦な道はまるで、終わりの見えない人生を彷彿とさせ――長い長いこの旅路が、俺に一曲歌わせた。


「車輪の~♪軋む音に首筋が~~ゾクリ~~♪」

「変な歌やめてくださいませんこと? 手元が狂いますわ」


 淡々と馬車を操縦するベルから、ピシャリ。

 

「……怒られちまったよ。 ラヴィ、慰めておくれぇ」

「今のは、仕方ない。 拙者も、ゾワッとした」

「ブフォァッ!!」


 淡々とおやつをつまんでいるラヴィから、グサリ。

 御者席でベルが盛大に吹き出し、馬車がガタンと揺れた。


「おぉい!? 安全運転で頼むぜっ!?」

「い、言ったじゃありませんか!手元が狂うって! ブフッ」

「……んのやろー。 御者席にいるから麻痺かけられないのが悔やまれるぜ」

「なんなら、操縦変わってさしあげま――」

「すみませんでした、ベルお嬢様」

「……よろしいですわ」


 カタコト、カタン――馬車は往く。

 今日も明日も明後日も、三人乗せて馬車は往く――。


 * * *


 街を出発してから、二週間が経過した。

 道中、何度かモンスターとのエンカウントはあったけど、ラヴィの一刀両断によりなんの問題もなく馬車は進み続けた。


 さすがにベルに操縦させっぱなしは悪いので、俺もちょこちょこ馬車を操縦することもあった。

 最初は全く進めなかったが、ベルの熱血指導の下、練習を繰り返しているうちになんとか形にはなってきた。

 続けることって、大事。


 それからまた数日が過ぎた。

 俺とベルは交代で操縦しながら、着々と馬車を進める。

 試しに一度だけラヴィに操縦させてみたら、なぜかウィリーやら片輪走行を披露してくれたので、今後は絶対に触らせないことにした。


 食料がそろそろ無くなりそうになったが、必要な分はラヴィが獲ってくれるのでそれほど困らなかった。有言実行、えらい。


 そうして過ごしているうちに、いつの間にか辺りの様子が変わっていることに気付いた。

 季節は春だというのに、やや肌寒さを覚える。

 そして、街の近くでは見かけない針葉樹が一帯に広がっている。


 ラヴィは荷台から身を乗り出して、辺りの様子を伺っている。 

 そして、尻尾をパタパタ――可愛い。

 これは、もしかしないでも――。


「ラヴィ、もしかして、ここら辺に見覚えでもあるのか?」

「……うん! あと二、三日で村につく!」

 ラヴィの嬉しそうな明るい声が響いた。


「ふふっ、良かったな」

「うんっ! へへっ……」


 ラヴィ、尻尾をフリフリ。

 可愛い。


「あぁ、もう可愛すぎますわラヴィちゅわん!! 待っててくださいまし!ベルお姉さんが、す~ぐ連れていってさしあげますからねぇっ!? ハイヤァッ!!」


 ベルはそう言うと、力強い掛け声を出して馬車を急加速させる。

 荷台はガタガタと激しく揺れ、それに合わせてラヴィの歯がカタカタと音を立てる。

 ……楽しんでいるようだが、舌噛んでも知らんぞ。


 ビュンビュンと風切り音が心地良い。ラヴィは笑顔で「もっと早く!」なんて言ってる。

 あいつはいつぞやのドレイク戦の時に、馬車から吹っ飛んでいったの忘れたんだろうか……。


「あんまり飛ばし過ぎるなよ、ベル! 俺もう、ロケットラヴィを見て肝を冷やしたくないからな!」

「ロ、ロケットラヴィさん!? それはそれで見たい気もしますが……了解ですわ!!安全運転でかっ飛ばしますわねっ!」

 

 そう言ってベルは、ノリノリで手綱を振った。


「いや、”安全運転”と”かっ飛ばす”は相乗りできな……まあ、もういいや」

 このスピードなら、案外サクッと村に着いちまうかもしれない。それはそれでOKだ。

 まあ……この馬車が壊れなければ、だけど。


 こういうマイナスなこと考えてる時に限って、不思議とその通りになるもんだ。

 快速で飛ばしていた馬車が突然大きく揺れ、耳をつんざくような馬の鳴き声が響いた。

 

「――!! 二人共、掴まってくださいましっ!!」


 ベルの声に、俺はとっさに荷台の端を掴んだ。

 

「どっこい……ですわぁっ!!」

 ベルが謎の掛け声とともに全身の力で手綱を引くと、ガクンと馬車が揺れ、みるみるうちに減速していく。


「あーー」

 そしてラヴィは、宙を舞った。呑気な声を上げながら。

 大きく身を乗り出していたラヴィは、慣性に身を任せてそのまま発射――ほぅら、言わんこっちゃない!! 


「ラヴィっ!!」

 咄嗟に叫ぶが、当の本人はというと――空中でくるくる回って、シュタッと華麗な着地を決めた。

 十点!

 ただ、問題はラヴィの方ではなく――その向こうにいる二体のモンスターだ。


 ゴフゥッと、荒い鼻息を立てる巨大なイノシシ。


「あ、あれは……《ワイルドタスク》ですわっ! 原種の《ワイルドボア》よりも巨大で凶暴――さらに、その肉は少々筋張っていながらも滋養に富んだ珍味と言われてますわ!!」

「な、なんだって――いや、え?なんだって?」


 いま、さりげなく食味評価が聞こえたような……?

 ラヴィはベルの言葉に、キラリと目を輝かせた。


「今夜は、ご馳走……!」

 ラヴィはいそいそと刀を抜くと、ワイルドタスクへ向かって駆け出した。

 はい、こいつらは今日もいつも通りでございます。  

最後まで読んでいただき、ありがとうございました!

少しでも面白い!と思っていただけたなら、ブクマ、評価、感想等いただけたら励みになりますm(__)m

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