200話 故郷の地、故郷で血
「あぎゅうっ」
意気揚々と飛び出していったラヴィだったが、ワイルドタスクにドーンと体当たりされ、ゴロゴロ転がりながら馬車の所まで戻ってきた。
「斬新な帰り方だな、ラヴィ。 ケガはないか?」
「……むぅ。 へーき」
俺はグイッとラヴィを起こすと、ワイルドタスクに目をやった。
相変わらずのサイズ感というか……体はデカいし、何よりも二、三メートルはありそうな牙がやべぇ。まさに野生的な牙ってとこだな。
「ワイルドタスクは危険度D+のモンスターですわ。 しかも、二体――これは強敵ですわ……!」
「なるほどな。 じゃあ、いつも通りでOKってことだ。 せーのっ【パライズ】!」
俺は即座に、二発のパライズを発動。
びぃんと放たれた稲妻エフェクトはどデカイ的に命中し、ワイルドタスクを見事に痺れさせた。
「参る……!」
「いきますわっ!」
ベルとラヴィは、同時に戦闘態勢を取った。
漫画とかアニメなら、かっこいいカットインが入るところだ。
ラヴィはシュタタっと駆けていき、ベルは魔法陣を展開させてセバスチャンを召喚――すんなりと各個撃破を果たした。
セバスチャン……最近B級ホラーみたいなやれれ方してたから活躍できて良かったな。
「よーし、二人共ナイスだ。 そんじゃ早速、いただくものを――ん?」
ドド――ドドドドドド――ッ!!
妙な振動が体に響く。
「あれは……?」
俺たちの少し先で、砂煙が立ち上っている。……というかそれは、徐々に近づいている。
否っ、もの凄いスピードで俺たちに猛突進してくる――!!
ワイルドタスクの群れだッ!!!
「おーい、そこのニンゲン! 危ないぞ!!」
誰かが叫ぶ声が聞こえた。
うん、そうだね!危ないのは分かり切ってるっつぅの!!!
「マヒルさんっ!来ますわっ!!」
「うおぉぉ任せろぉぉっ――【麻痺連鎖】ッ!」
バリバリビィン――砂煙に向かってエフェクトが迸る。
ドサッ、バタンッと音を立ててワイルドタスクは次々と倒れていき――遂に、最後の一体もバタリと倒れ込み、ブブブブッと震え出した。
「……まっ、こんなとこだな」
「すごいですわ……さすが、麻痺だけはできる男ですわね」
ベルがボソリと呟く。うっせ、お前こそ麻痺らせんぞ。
ワイルドタスクの群れには驚いたけど、今はそれよりも――。
「うわっ、なんだこれっ!?」「倒した……いや、痺れてるだけだ!!」「今夜はご馳走だな!」
砂煙の向こうから、ガヤガヤと声が聞こえる。
状況的に、ワイルドタスクを追ってた人達……狩人だろうか。
最悪の場合――つまり、盗賊かなにかだった場合に備えて、俺は麻痺を放つ準備をする。
だが、ラヴィは俺の手をソッと握ると笑顔で首を振った。
えっ?なに?恋の始まりですか?
「大丈夫。 あの人たちは――」
「おーい、そこのニンゲンたち、大丈夫か?」
ワイルドタスクの陰から姿を現したのは、筋骨隆々、屈強な男たちだった。
おまけに――耳やら尻尾やら生えているじゃありませんか。ムキムキのケモミミたぁ、恐れ入ったぜ。
「いやー巻き込んじまって悪かった! ケガはねぇか?」
「あ、まあ、一応……」
話しかけてきたのは、淡い橙色の体毛がトレンディな獣人だ。
ぶっとい爪と牙、ゴワついた尻尾……どことなく犬っぽい印象を受ける。
ついでに、もさもさの胸毛がダンディだ。
「悪さをしてたワイルドタスクを追ってたんだが、まさか、ニンゲンがいるとは思わず……まあ、無事だったんなら何よ……り……? って、お前もしかして、ダリん所の放蕩娘かっ!?」
トレンディな獣人は、驚いた様子でラヴィを見つめている。
それに対してラヴィは、照れくさそうに頷いた。
「……久し、ぶり。 トレッティさん」
「ははっ!二年振りくらいか!? こいつぁ、ダリの野郎喜ぶぞぉ!! おおい、お前ら!ほれ、ラヴィーナちゃんだ!!」
トレンディな獣人もとい、トレッティは仲間に声をかけた。
それに応えるように、ゾロゾロと他の獣人が姿を現した――しかも、それぞれが血の滴る大振りなナイフを手にしたまま、ゾロゾロと。
「死ッ!?」
「ヒィッ!?」
あまりにサイコホラーな登場に、俺とベルは小さく悲鳴を上げた。
状況が状況なら失禁ものだが……どうやらラヴィの知り合いらしいから大丈夫だろう。
……いや、大丈夫かなぁ。すっごい不安。
「ガッハッハ! ありゃあ、ワイルドタスクに止め刺ししただけだぜ! そんなに心配しなくても、獲って食ぃやしねえから安心しなっ!……今はまだ、な」
最後に、とんでもなく不穏な言葉を残したトレッティ。
まさか、食人族でした――なんてオチじゃないよね?ね?
こうして、俺たちは無事?ラヴィの故郷の地に足を踏み入れた。
トポの村までは、なぜかトレッティさんが先導してくれるとのことだけど――ごめんなさい、ちょっと帰りたい気持ちでいっぱいです。
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