190話 残雪大行進!②
「さてと……思ったよりもデケぇなこいつは」
ギルドを後にした俺たちは、セラ姐に指定された場所ですぐさまアイスゴーレムと遭遇。
まさにイメージ通り、氷タイプのゴーレムって感じの見た目。
思っていたよりもデカいのは驚いたが、それよりも――
「ひぃふぅみぃ……えっ、六体もいるなんてのは聞いてないんだけど?」
俺たち三人の前で、ムッシャムッシャと氷を貪る六体のアイスゴーレム。
まるで、俺たちのことなんて気にも留めていない様子だ。
……見たところ口はないようだけど、どうやって食ってんだろうか。
「こ、こんなに揃うと、まるで巨大な氷壁ですわね……」
「なー。 あそこのパーティーに分けてやりたいくらいだわ」
俺たちから少し離れた所では、既に別の冒険者パーティーが一体のアイスゴーレムと戦闘中。
だが、向こうは三体一。ちくしょう、ここを指定したセラ姐を恨んでやるぅ……!
「……ぐだぐだ言っててもしょうがねえか。 二人共、いけるか?」
「もっちろんですわっ!」
「……全部、倒す」
ベルは高らかに魔導書を掲げ、ラヴィは刀に手を添える。
相変わらず頼もしい限りっス。
「動きは緩慢、的はデカい。 ちゃっちゃと終わらせてさっさと帰るとしますか!」
「ワタクシの魔法で粉微塵にしてやりますわっ!!」
「……跡形も残さず、バラバラにする」
うん、怖ぇよ。
もっと優雅にいこうぜ優雅に。
こうして、身も凍るような残雪深い平原でアイスゴーレムとの壮絶なバトルが始まった――!!
――その二分後。
俺の目の前には、粉微塵に砕け散った氷片と、バラバラに切り捨てられた氷塊が無残に転がっていた。
「ふぅー、朝飯前でしたわね! あっ、でも実際には朝食は済ませてきましたけど! あの温かいスープとパン、最高でしたわぁ……」
ググっと伸びをして、訳の分からない話を始めるベル。
「……手、冷たい」
赤くなった手を擦り合わせてはぁーっと息を吐くラヴィ。
激戦が予想されたゴーレムとの戦いは、拍子抜けするほどあっけなく終わった。
なんかゴメン、うちのメンバーたちが……ほんと。
まず、俺の【パライズ】で一番近くにいたやつの動きを止め、次の瞬間にはラヴィが神速の居合斬り【羅刹】をお見舞い。
しかし斬撃への耐性があるせいか一撃では決まらず、二度三度と刀をふるってようやく撃破。
早々に刀を収めたラヴィは、一呼吸の後に全身の毛が逆立ち、オーラを放った。短時間の肉体強化術である【超獣化】だ。
時を同じくして魔法陣の展開が済んだベルは【サモン・セバスチャン】を発動。今年になって初めて首無し執事を見た。いつ見ても怖ぇ。
そこから先は、俺の【麻痺連鎖】で残りの五体を次々に麻痺らせ、超パワーアップしたラヴィを筆頭に、次々とアイスゴーレムたちを蹂躙していった。合掌。
「……お前らは、加減ってものを知らんのかね。加減ってものを」
「えー? これでも、魔力の出力は抑えた方ですわよ?」
「拙者も、まだまだやれる」
二人は互いに顔をあわせて、「ねーっ」と言った。
えー、なにこの人たち。野蛮ですわ?
最近クエストがなかったからって、うっぷん溜まりすぎだろ……
「……というか、マヒルさんこそいつもより麻痺かけてましたわよね? 効果時間中なのに、さらに上乗せしてませんでした?」
「ギクリッ。 いや、そんなこと、知らんなぁ……」
「今、ギクリッて口で言いましたわよね?」
なんだベルのやろう、ちゃっかり見てやがったのか……
いや、うん。ちょーっとだけ調子に乗った節はありましたけどもね?ちょーっとだけ。
っていうかベル、あの戦闘中に俺が追加でコッソリ麻痺を撃ったのとか、俺の麻痺の効果時間を把握してるとか……こいつこそ真の戦闘狂じゃねえか。
「まあまあ、無事に倒せたのでいいじゃないか! ラヴィもそう思うだろ?」
「…………」
「ラヴィ?」
「……えっ?」
「あっ、いやどうした? えらく考え込んでたみたいだけど。 さすがにアイスゴーレムは食えないと思うぞ?」
「食う……? んっ、もう」
ラヴィは俺の冗談に気付いたのか、ペシンと肩を叩いた。
「……そんなこと、考えてない。 それに、アイスゴーレムは、割と食べれる」
ラヴィは頬をぷくーっと膨らませてそう言った。
へっ?……えっ?既に実食済でしたの?完っ全に冗談のつもりだったんだけどな。
こいつなら、そこら辺の雪ですらむしゃむしゃ食べだしかねないな……
「何か、気になることでもあったんですの?」
「ん……様子が、変だった……かも」
「変っていうのは、どういうことだ?」
「なんていうか……エネルギーを、無理やり蓄えてる、ような。 それに、焦って……ううん、怯えているようにも、見えた」
ラヴィの言葉に、俺とベルも黙って考え込む。
そう言われてみれば確かに、さっきの雪を食べる様子は食事というよりも、栄養補給――必要に迫られてそれを行っているようにも見えたな。
でも、わざわざアイスゴーレムがそんなことをする理由はなんだ……?
――いや、そうせざるをえなくなった原因は……?
「――――――!!」
既に動かなくなった氷の残骸を見つめていると、風に乗って遠くから悲鳴のようなものが聞こえた。
「お、おい今のって……」
「うん……誰かの、悲鳴」
さっき戦ってた別パーティーだろうか?
ラヴィの言ってたことは気がかりだけど、今は向こうだ!
俺は二人にパッと目配せすると、二人共こくりと頷いた。
しょうがねえ、助太刀に参るとしますか……!!
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