181話 何だか違うよ感謝祭③
雪崩の跡を呆然と眺める俺たち。
さんざん積もった雪が土砂のように流れ落ちて、丘の斜面には所々に素の地面が露出している。
「ごっそり剥がれ落ちてんな、雪……」
「……本当、ですわね。それも、ついさっきまでワタクシたちがいたところに」
ベルはそう呟くと、ブルッと体を震わせた。
あの、腹に響く轟音と衝撃は今でも体から抜けきらない。まさに圧巻、恐ろし過ぎる自然のパワー。
「と、とにかく……無事に群れをどうにかできたんだし、帰ろうぜ? ソリからもだいぶ離れちまってるしな」
そそくさとこの場を後にしようとする俺だったが、ラヴィは一人難しい顔をして雪崩の跡を凝視している。
「ん?ラヴィ、どした?」
「……何か、聞こえる」
「何かって、また雪崩ですの!?」
「いや、違う……ホロホロ、フルルって」
「えっ、それって――」
猛烈に嫌な予感が背筋を走る。
さっきのやつらの生き残りが……?いや、見渡す限りそんなのはいない。まさか別の群れ――?
「……多分、あの中」
俺が考えを巡らす中、ラヴィが指差したのはついさっき埋もれたばかりの雪。
だがそこに、ただならぬ気配を感じた。
「な、何か来るぞ……!」
次の瞬間、ドダァッと大きく雪の柱がせり上がり、降雪まじりに巨大なモンスターが姿を現した。
「フォロルララァァァーーーッ!!!」
それは、まさに《ブロル》たちを百体合わせたような強烈な鳴き声だった。
「ぐおぉっ、うるさっ……! なんだアイツ、さっきの《ブロル》みたいな見た目してるけど……無駄にデケェな!」
「あ、あれは……《バロルブロル》ですわ!! 《ブロル》の群れの中からごく稀に現れる、ボス的なモンスターですわ!!」
「な、なんだって!? まさか、雪の下っていう極限状態で爆誕しやがったんか……!?」
「すごい。 肉付きが、すごい……!」
「いやいや、ラヴィそんなこと言ってる場合――って、確かにそうだな」
ラヴィのいつもの"食欲がものを言ってる"やつかと思ったが、全体的にムチムチっとした体つきにぶっとい脚……確かに、食べ応えはありそうな見た目だ。
「……で、どうなんだ? やっぱり強いモンスターなのか……?」
俺は恐る恐るベルに尋ねると、ベルは神妙な面持ちで答えた。
「いえ……見た目は大きくても動きは遅く味が良く、攻撃力は少なく脂ノリが抜群なんですわ……!」
「な、なにぃ……ってお前、ほぼ食味レポートじゃねえか!!」
「だって、図鑑にそう書いてたんですもの。 すっごく"美味"って」
「んだその限定的な情報しか載ってない図鑑は……ラヴィが監修でもしたんか――って、ラヴィは……?」
気づけば、さっきまで隣にいたはずのラヴィの姿がない。嫌な予感、再び。
恐る恐る下を覗くと、刀を抜いて《バロルブロル》に向かって猛ダッシュする何者かの姿があった。
もちろんラヴィだ。
「あいつマジ……ベル、手助けしたほうがいいか?」
「う~ん……多分、本当に弱いと思うのでラヴィさんなら問題ないかと思いますが……」
「……そっすか」
弱いって言われたり美味いって言われたり、ボス的なモンスターの割に随分と悲惨な言われようだな。
……まあ、一応射程距離内だし撃っとくかぁ。
「えーと、くらえ【麻痺銃】」
俺の左手から、麻痺の弾丸が高速で放たれた。
標的の《バロルブロル》はそれにまったく気付くことなく脚に被弾、バターンと倒れ込んだ。
「ホルララァァッ!? フォルルルルルッ!! ホロロァッ――」
ギャンギャンと騒いでいた《バロルブロル》だったが、しばらくしてその甲高い鳴き声が急に止んだ。
見ると、ラヴィがものすっごい笑顔でこちらに大きく手を振っている。
再度、決着。
こうして俺たちは、セラ姐を悩ませていたクエストをクリアし、さらにはあまりにも大量過ぎる鳥肉をゲットした訳だが……
なんか、クエスト報告のことを考えるとすごく――すごぉく憂鬱だわぁ。セラ姐の呆れ顔が今からでも浮かぶわぁ。




