180話 何だか違うよ感謝祭②
俺は考えた。
降りしきる雪の下、無い頭をひねりにひねって考えたが……妙案が浮かぶ兆しは今だ無し。
だいたい、この人数で何百体も相手するほうがおかしい話だもんな、うん。
……まあ、ノリで来ちゃったのは俺なんだけれども。
「ま、まだ動かないんですのぉ? こ、凍えてしまいますわぁ……」
寒さの限界が来たベルは、近くの木の下でブルブルと縮こまり震えている。
「お前なぁ……"動かない"んじゃなくて"動けない"の! そういうお前の方こそ、どうなんだ?良い案はないのか?」
「まあ、特には……?」
「おまっ……」
模擬戦の時のキレッキレの策士っぷりはどこへいったんだよ。幻だったのか?
寒さで頭凍ってんじゃねえのかなぁ……
はぁ、と呆れる俺の前に、自信に満ちた顔のラヴィが現れた。
「やっぱり、拙者の案で行くしか……」
「いや、それは……」
ラヴィはそう言うと、ブンッ、ブンッと頭突きの練習を始めた。そして十回程続けたところでフラフラ頼りない足取りへと変わった。
そりゃあそうだろ、脳を自発的にシェイクしてんだからよぉ……
だ、だめだ……突き詰めていくとやっぱり俺たちってポンコツなのかもしれない。頭の回らないベル……と一応俺。それから、頭を物理的に使おうとするラヴィ……ポンコツ三人衆じゃん。
ヨタヨタと歩くラヴィをなんとなく目で追いながら、どうしたもんかと腕を組み考える。
とその時、『ゴヅッ』と何やら鈍い音が聞こえた。
「あだっ」
「えっ、大丈夫――キャアッ!?」
どうやらラヴィは、ベルの近くの木に頭を盛大にぶつけたらしい。そしてその衝撃で、木の上に積もっていた雪がズドドォッと落ちてきてベルは雪まみれ。世にも珍しい金髪の雪だるまの完成だ。
何この馬鹿のピタゴラスイッチ。
「……おぉい、お前たち何やってんだよ。 大丈夫か――」
瞬間、俺の天才的閃きが発動。
こんな些細でくだらない事象から、この戦況を変えるかもしれない方法をピカリンと思い付いた。
「ベル、ちょっと地図貸してくれ」
「え? えぇ、いいですわよ」
俺はベルからクシャクシャになった地図を受け取り、現在地の確認と作戦を実行する為の鍵となるポイントを探った。
この平原で《ブロル》に追われて、今はこの辺りの小さな林に隠れている……この場所から近くで、”条件”を満たしそうな場所は――
「…………見つけた。 おい、二人とも……ちょいと話があるんだが――」
* * *
「ふっ、ふぅっ……こっちだよー」
「フロホロロ!」「ホロルルル!」
大量の《ブロル》を引き連れて軽快に雪上を駆けるのは、我らが特攻隊長のラヴィだ。
ちょこちょこ攻撃してやつらのヘイトを稼いでは、実にわざとらしい囮役をこなしている――が、効果の程は抜群だ。数えきれない程の《ブロル》は一目散にラヴィを目掛けてひた走る。
そしてまんまと誘導されたやつらが行き着く先は、小高い丘のふもとの窪地。そこで待ち受けるは、自信と気合いに満ち溢れてふんぞり反ったベルお嬢。
「……!つ、ついに来ましたわね……。 ラヴィさん、あとは任せましたわよ!」
ラヴィは大群を引き連れてベルに迫る。その圧巻の光景に、彼女の額をツツっと汗が伝う。
そして意を決したように大きく息を吸い込んだ。
「お~っほっほっほっほ!!!」
ベルの高笑いが辺りに響く。周囲のタゲを一身に集めるベルの魔法、【高貴なる咆哮】発動――
ラヴィを追っていた《ブロル》たちの視線はベルに釘付け。彼女に向かって一斉に進路を変えて進みだした。
「お、お~っほっほ――ひ、ひぃっ……!」
ズドドドドッと地鳴と共に迫り来るモンスターに、ベルは小さく悲鳴を上げる。
次の瞬間、大気が震えた。ラヴィの身体能力強化スキル【超獣化】発動。ラヴィは尋常じゃない猛スピードでベルに駆け寄ると、片手でヒョイッと持ち上げてた。
ラヴィは地面を蹴り上げ派手に雪煙をまき散らすとそのまま退避し、俺の潜んでいる茂みへと無事帰還した。
雪の煙幕とラヴィの超スピードによって、標的を見失った《ブロル》たちは丘のふもとで押し合いへし合い、積み重なる程に溢れかえった。
前回の《ユキダルマ》戦仕込みの”雪隠れ”……効果てきめんだな!
そして作戦は最終フェーズへ。
「いまだぁっ!! ベル、派手にぶちかませ!!」
「いきますわぁっ……!!」
ベルが念じると、丘のふもとに仕込んでおいた【暴波泡】が連鎖的に発動――窪地を取り囲むように激しい雪柱をまき上げながら、ドドドドォッと轟音響かせる。
恰好の的となった《ブロル》たちは、どうすることもできずにボコボコ吹っ飛んでいく。
だが、今ので倒せたのはせいぜい数十体程度だ。本隊にはまだまだ数百体を軽く超える大群が残っている。
「ま、マヒルさん!? これで一網打尽にできるって言ったじゃありませんの!?ワタクシ、死ぬ思いで囮役を務めたのに、あの鳥たち……まだまだいますわよ!?」
「うん、めちゃめちゃ、残ってる。 殺る?」
ベルは泣きそうになりながら俺の肩をぐんぐん揺らし、ラヴィは刀を抜いて既に臨戦態勢だ。
「お、落ち着けって二人共……ほら、聞こえないか、あの音が」
「音……?」
俺に言われて、二人共耳を澄ました。《ブロル》たちのやかましい鳴き声に混じって、小さく、低く、断続的に響く音が聞こえる。
ゴゴ……ゴゴゴゴ……
「ホロロロ」「ホルルッ?」「フルロロロロ?」
ようやく異変に気付いた《ブロル》たちは、首を精一杯伸ばして辺りを見渡す。
だが、その音と振動はどんどん勢いを増し、やがて全てを覆い尽くす程の巨大となってその姿を現した……!!
「あ、あれはっ……!雪!?」
「そう、雪……だが、ただの雪じゃあねえぞ。 あれは、全てを葬り去る凶悪なる白き猛獣――その名も雪崩だぁっ!!」
ズドドドドドドドドォッ――――
小高い丘にありったけ振り積もった雪は、窪地となっているふもと目掛けて一斉に崩れ落ちた。
轟音と激しい衝撃の後、雪が霧のように辺りを舞い……銀世界に静寂が訪れた。
「す、すごい……ですわ……」
「う、うん……」
「あぁ……名付けて、”雪崩式ベルクライムハザード”……!! バッチリ決まったぜ……!!」
一面の雪景色を茫然と見つめるベルとラヴィ。
開いた口が塞がらないとは、まさにこのことだろう。
ありったけたむろしていた《ブロル》たちは、文字通り一網打尽。
地形と環境を利用し尽くした、この俺マヒル様の環境利用闘法……フフッ、バチコーンと決めてやったぜ……!!
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