150話 恐怖、バジリスク峠②
俺対、《バジリスク》の群れ――
圧倒的不利を前に、山中に俺の悲鳴が情けなく響き渡る。
「……マヒル、殿……!」
ラヴィの声だ!山菜を生で食った挙句に腹痛でダウンしてだけど、こういう時はやっぱり頼りになるぜぇ……!
「ら、ラヴィ! 復活したんだな!」
希望の眼差しでラヴィに目をやると、そこにはうずくまったまま腹を押さえ、脂汗だらだらのラヴィがいた。
うん、だめだ。あいつはだめだ。
「やっぱり、俺一人でやるしか……!」
覚悟を決め、スタンブレイカーをカシャンッと展開。
ジリジリと距離を詰めるバジリスクたちをけん制するようにブンブンと振り回す。
この状況を打破するには……?
俺の奥の手――【退屈な昼下がり】を使って……いや、ほぼ止まった時の中だとしても、俺の力じゃ決定打に欠ける。
スタンブレイカーの必殺の一撃は……当然、チャージされていない。
一発ずつしか使えないから、対多数においては悪手も悪手。
――だとすれば、今の俺にできることは……!
「時間を……稼ぐッ! まとめて喰らえ、【麻痺連鎖】!!」
バシィッ、バシィッと稲妻エフェクトが錯綜――立ちはだかる《バジリスク》たちは次々に麻痺り、コロコロと転げ、足をピクつかせる。
「見やがれってんだ! これが本当の麻痺の力だ……!」
「キキシャシャシャ――」
「来いよ。何度起き上がっても、麻痺らせてやるぜ――っと思ったが、もうその必要はないようだな、ベル!」
俺の後ろでは、ようやく麻痺の解けたベルが立ち上がり、魔法陣を展開している。
朝日を帯びて煌めく姿は、まさに遅れてきたヒーローって感じ。
「お待たせしましたわぁっ! ”ワタクシの新たなる力”で一切合切を無塵に帰してやりますわっ! 出でよ、【サモン・シスターズ】!!」
ベルの叫びに合わせて、周囲に複数の魔法陣が展開――魔力が渦を巻き、収縮していく。
この圧倒的強者感……それに、”新しい力”だって……?
全く、ベルのくせに頼りになるんだから!
「いっけぇぇぇ! ベルぅぅぅ!!」
俺も思わず叫ぶ。心の底からの声援。
そして、それに呼応するかのように魔法陣から現れたのは――
『イラッシャイマセ』『イラッシャイマセ』『イラッシャイマセマセ』
「へ……? メイド?しかもなんか……小っちゃくない?限りなく」
そこから現れたのは、三体のメイド――いや、”メイド人形”か?
二頭身でデフォルメされたその姿は、ぬいぐるみそのもの。
フリル付きのメイド服を身に纏い、愛らしい雰囲気さえ放っている。
「お、おい、ベル……? あの子たちでどうにかできると思えないんだけど……?」
「フフ……お~ほっほっほ! 心配なさらずとも、うちのメイドちゃんたちは強いですわよ?」
ベルはそう言うとニヤリ。
いや、その自信はどこから湧いてくるんでしょうか、お嬢様……と思っていた次の瞬間、メイド人形たちはどこからともなく、物騒なナイフをズラリと取り出した。
「いぇっ!?」
『イッテラッシャイマセ』
不穏な言葉を呟いて、メイド人形たちは一斉に飛び出した。
”行ってらっしゃい”というより、”逝ってらっしゃい”というか……
俺はただ、茫然とその行く末を見守るしかできなかった。
ともあれ、ベルの言うことは結果的に正しく、メイド人形たちは普通に強かった。
麻痺って無防備になっているとはいえ、十秒もかからずに《バジリスク》たちを殲滅。
たっぷりの返り血を浴びた人形がとことこ歩いて帰ってきて、消えた。
「ふぅ……! 一丁上がり、ですわね!」
ベルはすがすがしい笑顔で呟いた。
ベルの新たな力――執事に続いて、今度はメイドの召喚ときたもんだ。
それも、ナイフを手に淡々と獲物を狙うメイド人形だ。
首無し執事に続いて、つくづく怖いって。
どうもホラーテイストな力を開花させていくベルに、俺は少しばかりの恐怖を覚えた。
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