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麻痺無双!~麻痺スキル縛りで異世界最強!?~  作者: スギセン
5章

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148話 無垢なる食欲、その身を焦がす

 それからしばらく経って、何事もなく夜が明けた。

 暖かい日差しが徐々に山肌を照らし、俺たちの新たな一日が始まる。

 

 朝食の準備をしているとベルがようやく目を覚まし、もぞもぞとイモムシのように寝袋から這い出てきた。

 朝日を浴びて、金髪のツインテールがキラキラと光る。 

 その顔は、どこかふっきれたような清々しさに溢れている。


「ん、んん~~! あら、おはようございますわ、二人共!」

「……おう、おはよう。 よく眠れたか?」

「もっちろんですわ! 今なら【サモン・セバスチャン】を何十発も出せそうですわ……!」

「……うん、元気そうで何よりだが、不気味過ぎるんでやめてくれ」


 俺がそう言うと、ベルは優しく微笑んだ。


「ベル殿、おはよう」

「あぁ、ラヴィちゃん! おはようございますですわ! 今日も今日とて可愛らしい……!」

「うん、ありがとう」

「はぁ……! 素直なところも素敵……!」


 昨日の大号泣はどこへやら、ベルはいつも通りの元気を取り戻したようだ。

 ……いや、心なしか元気すぎる気もするんだけどな。

 俺は苦笑気味に鍋をかきまわした。


「……さて、お前ら! 今日はいよいよバジリスク戦だ! どんな激闘が繰り広げられるか分からないが、兎にも角にもまずはメシだ!」

「メシ! その言葉を待っておりましたわ! 今日の朝食はなんですの?マヒルシェフ!」


 "メシ"の言葉に、ベルの目はいっそう輝きを増した。


「ふっふっふ……聞いて驚け、見て叫べ。 今朝はなんと、”イノシシのスープ山菜仕立て”だ……!」

「まあ……! もったいぶった割にとっても普通ですわ……!」

 

 ジャジャーンと、両手を広げて料理の紹介。

 まあ、単純に残り物をスープにしただけの一品ではあるが。


「おまっ……ズバズバ切り込んでくるんじゃないよ。 普通なのは認めるが……」

「フフッ、普通でも充分過ぎるくらいですわ! もう食べていいんですの?」

「まあ、そうせっつくなって。 後はこの山菜を――って、あれ……?」

 

 ガサガサと袋を漁るが、無い。

 今朝ラヴィが採ってきたはずの山菜が。


「……? どうしたんですの、マヒルさん」

「いや、さっきラヴィが山菜採ってくれてたんだけど……おっかしいな……。 なあ、ラヴィ、何か知らな――ラヴィ?」


 ラヴィの方へ振り返ると、当のラヴィは視線をふいっと逸らしてあらぬ方向を向いた。

 表情は分からないが、ふわふわの耳がぺたんと畳まれている。

 こいつ、もしかして……


「……食った? 生の山菜を」

 聞くまでもないかもしれないが、一応聞いてみる。

 やはりというか、ラヴィは俺の言葉にビクッと震えた。


「あのう、ラヴィさん? 怒らないから、教えて?」

「…………食った」

「おふぅ……」


 ラヴィはぷるぷると小刻みに震えながら、申し訳なさそうに行った。

 いや、別に食べるのは構わないんだが、ボリボリ食べてもうまいもんじゃないだろうに……


「もしかして、お腹空いてた?」

 ラヴィ、コクリと頷く。


「それで、つい食べちゃったと……?」

 ラヴィ、うんうんと頷く。


「……そんで、美味しくなかったか?」

 ラヴィ、恥ずかしそうに頷く。


「あったり前だろ! あんなに硬くて苦そうなもん、よくサラダ感覚で食えたな!」

「えへへ、つい……」

「豪快で野性的なラヴィちゃんも、素敵ですわぁ……」


 ラヴィはポリポリと頬を掻き、ベルはさっきからうるさい。

 まあ、無いものはないで仕方ない。


「おまっ……まあ、いいや。 今日の朝食は、シンプルイノシシスープで!」 

「え、いやいや、それは申し訳、ない。 すぐ近くだから、採ってくる」

「え? あ、おいラヴィ! ……行っちまった」


 ラヴィは俺が制止する間もなく、茂みの方へ駆けて行った。

 まあ、あいつの気が済むならそれでいいか。

 

「……さて、じゃあもうしばらく待ちますか。 ベル、お腹空きすぎて倒れないか?大丈夫?」


「んなっ!人を魔獣バンザみたいに言わないでくださいまし! あと数分は我慢できますわ!」


「いや、誰だよソイツ! ってか、あと数分しか我慢できないのかよ! ギリギリじゃねぇか!」


「……それでも、ワタクシは耐えてみせますわ! 決して《バンザ》のように食欲に負けたりは――」


「だから誰だよソイツ!!」


 ったく、やっぱりちょっと元気になりすぎてるなこいつ……!

 あぁ、頼むから早く戻ってきてくれラヴィ。

 早いところ飯でこいつの口を塞がないと、俺のほうがもたない……!

 

 俺は祈るように鍋をかきまわす。

 ただ無心を心掛け、平常を装って――

 だがその時、茂みの向こうで小さな悲鳴が聞こえた。

 

「むぐぅっ……!」


 ラヴィの声だ。それも近い……!


「ラヴィ!」

「ラヴィさん!?」


 俺とベルは、慌てて声のした方へ駆け寄った。

 まさか、モンスターの奇襲……!?《バジリスク》か!?

 はたまた、野盗か他のモンスターか――!?

 様々な思考が、憶測が頭を巡る。

 

「……っ!! おい、ラヴィ、どうした!?」

「……ま、マヒル殿……」


 俺たちが目にしたのは、青い顔をしてうずくまったラヴィ。

 幸いにも外傷はないようだが、明らかに様子がおかしい。


「ラヴィ、おい、どうした!? 何にやられた!?」

「ラヴィさん、しっかり……!」

「……うっ、ぐっ……あ、”あれ”――」


 ラヴィが震える手で指差したのは――


「あ、あれって――さっきの……山菜……?」

「う……ん……お腹……痛い」

「お腹……え……?」


 ラヴィ、まさかの食あたり。

 山菜を生でボリボリ食べたもんだから、お腹の一つも痛くなるってもんだろう。

 ベルは心配半分、呆れ半分という絶妙な表情で立ち尽くしている。

 ……まあ、もう放っておいてもいいんじゃないかな?

 これもきっと、ラヴィの為になるよ、うん。

 

最後まで読んでいただきありがとうございました!

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次回もよろしくお願いしますm(__)m

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