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 目的地である王城まではここから少し遠いらしく、朔たちは近くの街で必要なものを揃えてから向かうことにした。


 森を抜けると一気に視界がひらけた。

 整備された道は、赤く染まった夕暮れが照らす街の門へと続いていた。

 門の前には鎧を着た男が二名、槍を持って立っていた。

 顔には疲労の色が濃く、気だるげに通行人を見守っている。


「なあフィン、門を通る時は何か通行手形的なものがいるのか?」


 朔がぼそりと尋ねる。

 フィンは真面目に頷いた。


「そうですね、一般的には通行証か、無ければお金でも代用可能ですが……」


 朔はポケットの中を探る。

 出てくるのは石と、乾いた血の匂いだけ。

 そのため彼の頭の中には一つの結論しか浮かばなかった。


「俺は右のやつをやる。お前たちは左のやつを頼む」


 フィンが盛大に咳き込んだ。


「な、何を言っているんですか朔さん!?」


 リゼは朔の方を向き、首を傾げる。


「サク……、やるって倒すの?」


「他にどうするんだよ。通れねえだろ」


 朔は完全に真顔だった。

 フィンは青ざめ、慌てて朔の腕を掴んだ。


「だめです。衛兵を倒したら罪になります!街に入るどころか牢獄行きです!」


「じゃあどうすんだよ」


 朔は不満げな声色で問う。

 フィンは誇らしげに、胸を張った。


「任せてください。この紋章があれば、問題ありません」


 そう言って、胸元から小さな金属のプレートを取り出す。

 王家の紋章が刻まれたそれは、夕日に照らされて鈍く光った。

 朔は目を細める。


「……最初からそれ出せよ」


「まさか人を襲おうとする人がいるとは思いませんでした!」


 フィンが半泣きで叫ぶ。


「サク、すぐ手を出そうとする」


「必要なら、な」


 朔はリゼに念を押すように言った。


「ご苦労様です。僕たちの通行を許可していただけますか」


 衛兵たちは相変わらず気だるげな表情だったが、紋章を見るとすぐに姿勢を正した。


「し、失礼しました!どうぞお通りください!」


 フィンが振り返り、二人に微笑む。


「さあ、行きましょう」



 街は活気にあふれていた。

 通りには冒険者らしき服装の人が多い。

 誰もが当然のように腰に剣を下げ、鎧を鳴らしながら行き交っていた。


 少し歩くと、鍛冶屋から響く金属音が耳に届く。

 子どもの笑い声や客引きの声も混ざり合い、街全体が生きているようだった。

 道沿いには屋台が並び、焼けた肉や香辛料の良い香りが漂っている。


「お母さんこれ食べたい」


「夕飯食べられなくなるわよ」


 宿へと向かっている途中、近くで親子の会話が聞こえてきた。

 その会話は、この街が平和だということを表しているようだった。

 フィンはその様子を寂しげな眼差しで見ている。

 その視線には、彼自身が失ったものへの影が差していた。



「ここです」


 宿は木造の二階建てで、外壁までは手入れが行き届いていないものの中は綺麗に整備されていた。

 フィンは慣れた様子で受付へ向かい、紋章を見せて部屋を確保する。

 一階は酒場になっており強いアルコールの匂いのなか、多くの男たちの声が響いていた。


 宿の鍵を受け取ると、朔は踵を返し街の通りへ向かう。


「どこ行くんですか?」


 フィンが朔の後を追いかける。


「ギルドってとこだ。冒険者登録が必要なんだろ?」


「はい。街で動くなら身分証代わりになります」


 これは、フィンのアドバイスであった。

 朔は騒音を背に、扉に指をかける。

 リゼとフィンはその後を追った。

 

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