【195】マンティコア討伐
クエルノ辺境伯邸でちょっとひと休み。
見事に夏バテしたスヴィン博士は、ダンジョンに入ってから具体的にどうやってどの順番で作業するのかを打ち合わせするついでに、暑さに耐えられないからということで、私たちの滞在する部屋に入り浸り。
何故ならアルバンが私のために常に部屋をひんやりさせているからである。涼しくてサラサラして快適。
「兄からお二人への課題を預かっていますから、良い機会なのでここでこなしておきませんか?」
スヴィン博士からそう言われて、思わず私とアルバンが揃って硬直。
そう、実は……ベスティアに行くにあたって、色々と防犯のための練習とか訓練をしていたのだが、事務処理に忙殺されてしまったせいで、あんまし進まなかったのである。仕事は片付いたが、防犯のための心得は覚えたものの、ひとつだけ、練習不足で全然ダメな課題が残ったままだったのである。
それがまさか、やり残しをやるよう、ハインリヒさんから手紙でスヴィン博士に指示されていたとは。
「仕方ない。さっさと済ませよう。ツェツィーリア」
「はい……。」
二人していそいそと、別室で庶民、というか、ベスティアの冒険者風の格好にお着替え。動きやすいポケット付きのズボンとブーツにシャツ。革鎧は私は胴体の部分だけ。
アルバンはそれに加えて、胴体パーツと手甲と脛当て。上からフード付きマント。腰には剣と、ベルトに通して使うウエストポーチが三つ。
因みに、私の荷物は小さめのリュックである。
お互いに向かい合って、気合を入れて見詰め合う。
沈黙。
から、意を決して、アルバンが息を吸い込んで、言った。
「えっ、と……ツェ、ツェツィ?」
「ア、アル……?」
言った途端、アルバンがカーッと耳まで赤くなって、私もつい、カーッと顔が熱くなってしまった。
アルバンは照れると上を向いてしまう癖があるので、真上を向いて固まり、私は恥ずかしいと下を向いてしまうタイプなので特に意味もなく床を見詰めるなどしてしまう。
「照れていないで練習してくださ〜い。夫婦でしょう?」
「いや、だって、これは違うというか……今更恥ずかしいよ。僕たち、お互い大人になってから結婚したし、ずっと名前呼びで……愛称でなんて呼んだことないしっ……!」
「アルバン様のこと、名前で呼んだこともあんまり、なくって……!」
「そう! ツェツィーリアはずっと僕のことは様付け! な、名前で呼んでくれて良いのにっ……!」
「ぇ、で、でも、は、恥ずかしい、でしゅっ……!」
「二人とも、名前が貴族風なので普通に呼び合うと庶民に擬態が出来ないですよ〜?」
うっ、それはそう。
アルバンに関しては、なくもないけど名前が明らかにベスティア風ではない。が、アル、と呼ぶのであればよくある愛称に収まるので問題はないし、アルバン、でもギリギリ、まあいけなくもない、のだけども……!
問題は私である。
ツェツィーリアという名前、かなり珍しい。クライノートでも稀。なんなら亡きお祖父様が付けてくれた古いクライノートの名前なので、滅多に居ないし、ゴリゴリに貴族風である。正直愛称であるツェツィでもギリ。愛称でも「変わった名前だな」とか思われるのは間違いないため、練習は必須。
が、しかし……慣れないし照れ臭いし恥ずかしいしで、私たちはこの練習の進捗が大変よろしくないのであった。
「人前ではハードルが高いよ。まず、二人きりの場所で練習しない?」
「ええ、ええ! 名案です!」
ごねまくる私たち夫婦を前に、スヴィン博士は死んだ目でアルカイックスマイル。はいはいこの言い訳まだ続くんですか? と言わんばかりのこの態度と雰囲気。ややハインリヒさんに近い要素がある。
「ニーナはこんなの楽勝だ。ツェツィさま!」
「ニーナはニーナのままでいけるのですものね」
ぴと。何だか楽しそうなニーナが横にひっついてくれる。かわいい。
ついでに何故だか、ミトンまでもが頭をくりくり私の足に擦り付けている。ううっ、感触がかわいい。
まったりしつつ何とかこの訓練から逃れようと足掻いていたところ、絶妙のタイミングで外から悲鳴が!
「大変ですフリートホーフ卿! 街中にマンティコアが! ここも危険です。避難を……!」
メイドさんが走って危険を伝えに来てくれたのだが、それを聞いてすかさずアルバンが臨戦体制。
「それは大変だ! 僕は今から見ての通り、通りすがりの冒険者だから! すぐ討伐に向かおう! ニーナ!」
「マンティコアは見たことがない。倒してみたい」
「スヴィンとツェツィーリアも行こう! マンティコアはフリートホーフには居ない魔獣だから、きっと面白いよっ!」
「ああ、それは良い提案だ。マンティコアは確か肉食寄りの雑食だから胃の内容物を調べたら砂漠固有の植物の種子が出てくるかも知れない」
ここぞとばかりに、街中に出現したマンティコアを言い訳にしてスヴィン博士の気を逸らすことに成功。
四人揃ってワーワードタバタ。大型危険種の登場に、高貴なる人々を避難させなくてはと頑張ってくれようとしたメイドさん達をぶっちぎって、騒ぎの源に突撃。唖然とするメイドさんたちを残し、見た目だけ冒険者スタイルでマンティコアの居る街の広場へ。
噴水の設置された広場。出店が幾つか立っているが、何件かはもうテントが倒れてしまっていた。
既に、警備のための兵士や通りすがりの冒険者が数名集まって、市民の保護に回っているようではあったものの、今はまだ増援を待っている状態、といったところ。
マンティコアはベスティアの砂漠地帯に出現する特定危険種。牛よりも一回り大きな魔獣が暴れ回っている。猿に似た顔、獅子の胴体に、蠍のような尾。強い毒を持っている上に攻撃性が高いため、不用意に手を出せないのであろう。
「マンティコアは土属性の魔獣。尾には毒があるし、尾の先を射出して遠隔攻撃が可能。毒に関しては銅の毒に類似するほか、食性によっては植物由来の毒を含む。初見だし、本来なら毒のリスクが高いからニーナにはまだ見学させるのが妥当だけど、今回はスヴィンが居るから参加して良し」
「やった!」
「マンティコア毒のサンプルは分析したいから、出来たら被弾しないで尾だけ回収して欲しいな」
「まず、最大の脅威である尾を切断。爪と牙にも注意。心臓の位置はキマイラと変わらない」
「わかった!」
言うなり、ニーナが号令を掛けられた猟犬のような俊敏さで飛び出してゆく。抜刀。元々、素早い子だと思ってはいたが、それにしても速い。
マンティコアを挟撃するようにニーナとミトンが同じスピードで走っているし、恐らく、ミトンが風魔法を使ってニーナがより素早く動けるようにサポートしているのだろう。賢い猫ちゃんである。
ニーナは走り、身を屈め、滑り込むようにしてマンティコアの胴体の下を潜り抜け、尾の根本、真下から切断を狙う。ひと太刀当てるが、マンティコアの尾の外骨格が硬いためか、切断には至らない。
マンティコアの尾は全体が前後に巻くように稼働するらしく、ニーナの方、腹側に巻くようにして毒針が向けられる。
飛ばされた毒針をニーナは剣で弾き、素早く退避して距離を取った。
「……市街地で仕留めるのはニーナにはまだ無理か。被害は最小限に抑えたい。僕が狩る」
「わかった。仕方ない。他の人たちが怪我したらいけないから、我慢する」
「よし」
息切れしながらも一旦撤退して戻ってきたニーナだったが、その隣に立っているアルバンに、マンティコアが牙を剥いて襲い掛かる。
が、アルバンが一瞥すると同時に、マンティコアの首と尾が切断され、その巨体が地面に転がる。
切断されても、尾の方はまだビタンビタンと元気よく動きまくっていたため、アルバンが剣を使って地面に縫い留めた。
そこに、白衣着用のスヴィン博士がニコニコしながらいそいそ近寄り、針の先からポタポタ垂れ落ちる毒液を薬瓶に採取している。うーん、ブレないなこの人。
「思ったよりも死後の痙攣が激しいから、腱は壊したけど……スヴィン、毒袋は無事かな?」
「今から開くよ。ああ、うん、二つは損傷しているけど、他は無事だ。毒を蓄積する毒袋と毒針、こんな風になっているんだね。こっちの、三番目の毒袋は興味深いよ。ほら。この特徴的なマダラ模様!」
「それは……コロシントウリ?」
「そうだよそう! 間違いない。砂漠地帯にだけ存在する有毒植物。サンプルは取り寄せて王都で育ててもみたんだけど、これはまさにその模様。魔植物ではなく単なる毒草だけど、マンティコアに取り込まれることによって魔力特性を付与されているようだし、これは珍しい事例だね。ここまで来た甲斐があったよ〜!」
「コロ、シン……? 植物、ですか? スイカみたいな模様なんですね」
「そう! さすが君は賢い!」
「素晴らしい! コロシントウリというのは別名“砂漠のスイカ”とも呼ばれておりまして、ウリ科の植物なのです。実は大変苦いもののミネラル豊富。少量であれば胃薬や利尿剤として使用されるのです。一概に毒草とは言えず薬草としても活用可能ではあるのですが砂漠を代表する有毒植物として……」
つらつらつら。スヴィン博士の植物トークが止まらない。
ふんふん、なるほど。つまりこれは有毒スイカで、単なる植物ではあるけれど、マンティコアに食べられて毒素を濃縮されることによって、元からの毒素に加えて魔力がブレンドされているので、学術的なサンプルとしても大変興味深い、ということのようである。アルバンも目を爛々とさせて食い付いているあたり、魔獣研究家としても珍しい事例であり、画期的な発見であるらしい。二人ともしゃがみ込んでマンティコアの尾をメスでザクザク分解してキャッキャしている。
ふふふ、素敵。無邪気な男の子みたい。
楽しそうだから、私がかわりに、駆け付けてくれたクエルノ辺境伯に説明だけしておこうっと。
「フリートホーフ夫人! ご無事でしたか!」
「クエルノ卿。ええ。無事です。余所者の身で、私どもの独断で動いてしまったことはお詫び致します。ですが、その……マンティコアはクライノートには存在しない魔獣ですので、研究サンプルとして大変興味深い対象なのです。なので、確保してしまいました」
「それは……なるほど。確かに、卿らは研究チームでしたな。卿ご自身も魔獣研究者……とは伺っていましたが……。」
「ええ。夫はその、あの通りでして」
マンティコアのそばにしゃがみ込んで、スヴィン博士と共にせっせと毒液を集めてラベリングに勤しんでいるアルバンを示すと、クエルノ辺境伯は黙ってひとつ頷いてくれた。
うん。
そうだよね。
実際、あの姿を見ないとアルバンがまさか本気で魔獣研究してる人だって、俄には信じられないよね。でも本当なんです。アルバンは白銀で公爵家生まれでさえなければ、研究者として生きていたであろう人種なんです。
「クエルノ卿、このたびのことは、アルという名前の通りすがりの冒険者の成したことである、ということにして頂けませんか?」
「フリートホーフ卿の手柄にせずとも構わない、と?」
「はい。一部、研究用にサンプルとして一部素材をこちらに譲って頂ければ」
「待ってください! 毒液は全部こちらで!」
「素材はお譲りしますが解剖とスケッチだけ!」
「……すみません。ご希望でしたら記録の写しを後ほど卿の元にお届けします」
「いや、結構。お気持ちはよく分かりました。夫人も……大変ですな」
「いえ。普段は机に縛られている夫が、あのように楽しげにしておりますので。私にはこれくらいしか出来ませんから」
ダンディな髭の紳士、クエルノ辺境伯がアルバンのことを正しく理解してくれて何よりである。
とりあえず、場所を貸して貰って、アルバンはじめ他の魔獣研究者の方々も、わらわら集まり和気藹々。
わぁ、すごい。マンティコアだぁ、大物だぁ。
すごいすごい骨格が。外骨格部分と表皮との違いが。牙が爪が毛皮が。
私は死体の臭いがあんまり得意じゃないので、部屋の外で待つなどしてみる。
「ニーナ、ちょっと手伝ってくれ」
「わかった。何をすれば良い?」
「結紮」
「フリートホーフ博士、少女に手伝わせるのはちょっと、どうかと思いますよ?」
「いや、コイツ、女騎士。ハインリヒの娘。鹿の解体上手いよ。君らや僕より結紮上手いし、パワーあるから手伝わせた方が得」
「ん。やる。マンティコアって美味いのか?」
「マンティコアは臭いって話だから、ベーコンにしかしないんだって」
「じゃあすぐには食べられないな。残念だ」
ニーナの言葉を聞いて、解剖に参加していた研究者、ワッと笑っている。
中でなんか、ゴリゴリ、とか、グチャ、とか、ぷちゅ……みたいなグロい音が聞こえてきている訳だが、アルバンがリラックスして楽しそうなのでまあ、うん……よ、良かったね。
「マンティコアの胃の内容物から、人骨が発見されました。残った骨の一部、骨盤の欠片が比較的大きな状態で残っていたことから少なくとも男性一名のものは確定。遺骨は洗浄しておきましたが、クエルノ卿にお預けしてしまってよろしいですか?」
返り血とか色々付いた白衣脱いでお風呂入って着替えて軽く香水振った上で、キリリとした真剣な顔で、マンティコアの犠牲者のことをご報告。
クエルノ辺境伯はちょっとびっくりしていた。
「報告によると、被害者は恐らくここから南西にある村の農夫でしょう。庶民です。わざわざ、骨の洗浄までされたと?」
「はい。フリートホーフでは慣例として、討伐した魔獣の巣や体内から発見された遺骨は遺族に返還することになっています。ベスティアの作法に疎く、恐縮ですが」
「……承りましょう」
あっ、これ、普段はベスティアだとやってないんだな?
うちの領地では遺体であっても、個人が特定出来たら遺族に対して一部であれ返還することになっている。消化が進んでいて特定が困難だったり、バラバラにされすぎていたり、誰だか分からない状態の時にはそっと騎士団側で供養するのだが、どこどこ村の誰某だと判明したならば遺族に返すのが慣例。
ベスティアではどうなのか、流石にそこまでは知らなかったので、とりあえず自分たちのところでやってるぐらいには処置しておこうということで、マンティコアに食べられてしまった不幸な誰かの骨の一部を洗って拭いて、綺麗めな箱に入れておいたのだけれど……やっぱりベスティアは貴族と庶民の扱いに明確に差があるらしい。
やはり、犠牲者が貴族であれば生存確認の意味も込めて生死問わず見つかるまで捜索するが、庶民だとやらないよ、ということなのであろう。
これは逆にクエルノ辺境伯が困る流れであろう。
わざわざ隣国の辺境伯が、マンティコアを討伐してくれちゃった上に、更に誰だか分からないけど、遺族のために遺骨は取り出して保管してみました、というパターン、間違いなく面倒臭い。
アルバンからの好意を無碍にするのも角が立つし、ここはとりあえず受け取る一択。きっとこれからクエルノ辺境伯は、部下に命じて犠牲者の遺族探させて、遺骨届けさせた上で「今回たまたま通りすがりの他国の客人が届けてくれただけだから勘違いすんなよ」と釘を刺す作業が必要になる訳だ。なんかすみません。
「しまった。ベスティアとクライノートの文化の差を考慮すべきだった。気まずいから、一日繰り上げて出発したいんだけど……ツェツィーリア、体調は大丈夫かな?」
「はい。疲れは抜けてきました」
「つまりまだ抜け切ってはいないんだね? ごめんね、でも、いけそうならクエルノ辺境伯領はもう抜けておきたいかな。ただでさえ、辺境伯領に他国の辺境伯である僕が滞在してるってこと自体が緊張を強いてしまうからさ……もし君の体調が悪くないようなら、一気にコルミニョ公爵領まで進んでしまいたいんだ」
「分かりました。あちらでベスティアの研究チームと合流さえしてしまえば、責任が分散しますし……土地柄としても、ここは対クライノートの最前線。早めに立ち去った方が得策ですね」
辺境伯は……国防の最重要ポストなんだ。
私たちクライノート王国の国民にとって、北側のフリートホーフ辺境伯領が国防の最重要地点であるのと同じように、ベスティアに於いては荒野と砂漠を挟んでいるとはいえ、仮想敵国として筆頭に挙げられるクライノート屈指の実力者であるアルバン・フリートホーフが直接乗り込んでくるなんてことは悪夢でしかないんだ。
戦争の準備じゃありませんよ。
今回は研究者として調査に向かう途中、通過するだけですよ。
幾ら説明したところで意味はない。
何故なら辺境伯なんてポジションは、余所者を警戒するのがお仕事だから。
どうしたって職務上、クエルノ辺境伯はアルバンが領地を抜けるまで、ずーっと用心深く疑って観察して監視して、ピリピリ緊張し続けないといけないんだ。
それがなんか、緊急事態だったとはいえ、マンティコアをサラッと討伐して、しかも、わざわざ身分のある他国の辺境伯が自分のところの領民のために魔獣の胃袋さらって遺骨届けてくれました、なんていうのは、下手すると美談になってしまう。いや、なる。これは確実に。
人道的に対応しようと考えてアルバンはそうした訳だが、クエルノ辺境伯はこの件で、これから領民により「クライノートの貴族は庶民にも親切にしてくれたのに」とかブツブツヒソヒソ陰口叩かれてしまう流れである訳で……ストレスに追いストレスをトッピング。まことに申し訳ありません。そんな気持ち。
これは大変珍しいアルバンのミス。
やらかしてしまったし、クエルノ辺境伯に取れる手段がもう一つしかないし、なんなら後々まで七十五日くらいに渡って領地の統治が微妙にギクシャクしそう。後遺症まで残してしまうことになってしまった。
それを理解出来るからこそ、アルバンはさっさとここを立ち去ろうと提案してる訳だ。
だって、滞在期間が長くなれば、それだけ情報は流出する。
今はクエルノ辺境伯領の領民たちも、私たちの身分など知らないので「なんか知らんが親切なクライノート人がマンティコア倒して遺骨届けてくれた」とだけ認識しているが「あれはお隣の国の辺境伯なんだって」となると、次は「同じ辺境伯でもあっちの国の貴族は親切なんだねぇ」となってしまう訳だ。やばい。クエルノ辺境伯の面子を潰すのはよろしくないし、ここは「どっかのクライノート人」の状態のままお暇するのが吉。
大忙ぎで出発だぁ。
最早気分は夜逃げ。
他の研究者の方々は政治に疎いらしく「ほぇー、なんで急に出発するの?」「マンティコアの解剖図じっくりスケッチしたーい」とか言っていたらしいが、アルバンが「ごめん僕がミスった! このままだとダンジョン調査どころじゃなくなるから早く行こう!」とだけ簡潔かつ強引に説得して、後ろ髪をひかれまくるインテリジェンスな白衣軍団を引っ張っていくことになった。
「これ以上目立つのは良くないから、普通に陸路で、真面目に地道に進もう! なるべく身分は隠したままで! えっ、と……ツェツィ? 君にもそれをお願いしたいんだけど……。」
「あっ、ハイ。了解しました。もうこれやらないとまずい流れですもんね。ええと、アル?」
こんなん照れてる場合じゃねぇ。
私たちはいざとなったらやれる子である。
二国間の安定のため、平和のために、恥と照れをかなぐり捨てて愛称呼びを真顔で行い、もう結婚してからずっと愛称呼びですがなにか? みてぇなツラと態度でズンドコ進んだ。
そうして、道中、宿泊先として予定していた村や町の宿屋に泊まって、外出などもせず休息だけ取って最短でコルミニョ公爵領に到着。
ふぅ。何とか着いたぜ。
つ、つ、つ、疲れたぁ〜〜!




