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【最終章突入】群蒼列伝~異世界に召喚された征服系主人公はクラスメイトと共に世界征服を開始した~  作者: 大ミシマ
第六章 魔王と覇王

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第三百七話 VS新納魁世Ⅴ心の渇きを癒すのは

 漆黒円蓋の中、石英色の古代神殿が形作られた大空間。異世界より召喚された二人の魁世と明可たちは相対する。

 一方の魁世こと隻眼の魁世に挑むのは明可、直、琥太郎、昌斗、興壱そして片腕を失った為信。

 昌斗は円周に並び立つ柱の上から姿を見せない。他の五人は隻眼の魁世と同じ地場に立ち、正面から紫電を散らした。

 まず群蒼会一の弓取り、興壱が矢を放つ。隻眼の魁世は手にする鉄扇で一直線で向かってきた一矢を軽々と弾いた。

 鉄扇は動じない。次に俊足で迫ってきた明可と直の槍剣も剣先から軌道を逸らさせ、一切の攻撃を許さない。琥太郎は為信や興壱の前に立ち、その場を動かず、為信が切断された片腕の応急処置を終えるのを待つ。


「待て待て、斃そうとするのはいいが、僕の心臓は狙わない方がいい」


 もう一方にもつ太刀を動かすことなく、隻眼の魁世は明可と直の連携剣戟を鉄扇で捌きいていく。直は右目を失い、包帯を巻いている。視界の右半分の機能が失われた以上、明可はとくに事前の取り決めも無く直の右側にいて、直の槍撃が隻眼の魁世の甲冑隙間に狙いを定めれば、明可が逆側から陽動の剣撃を繰り出した。

 明可は太刀を二振り、直は槍を一本で三つの主要な攻撃手段が有るが、そのどれも全て隻眼の魁世が鉄扇で弾いては逸らし、あるいは武具を握る明可と直の手や腕に鉄扇を振り下ろす。

 一瞬だけ柱に隠れた昌斗を視界に捉え、隻眼の魁世は一旦明可と直から距離をとった。


「もし僕に勝てたなら僕の心臓を、為信の覚醒能力・位置転換をつかってあの寝ぼけた魁世に装填しろ。さすれば僕つまりお前たちが謂うところのアナザー魁世は復活し、お前たちの望むものを提供してくれる。為信、できるな?」


 鉄扇で指した先には凶悪な黒鉄の触手で明可たちに手も足も出させなかったアナザー魁世が横たわっている。


「あちらの僕には更なる進化形態がある。進化すればこの結界を容易く破壊できる高出力の魔力弾を撃ちだすことが出来る。恐らくだが、お前たちの中に魔力弾を撃ちだせるのは寧乃だけ、そして彼女の魔力はあの女魁世との戦いで消費されるだろう」


 涼しげな隻眼の魁世とは反対に、彼に未だ攻撃の当たらない直は息を整える。


「馬鹿か魁世貴様。仮に復活したとして、その進化形態の状態で俺達を攻撃し始めたら目も当てられない」


 隻眼の魁世は眉を曲げ、呆れた口を開いた。


「そのくらいお前たちでアレを説得しろ。いや、最期にようやくお前たちに協力できるとあって張り切るかもな」


 無茶苦茶だが、明可には先のアナザー魁世が殺気と瘴気を乗せた黒鉄の触手で猛烈な攻撃をしてきても、自分達を本気で殺しにかかったようにはどうも感じられなかった。コガミに精神支配されていると云うのも、完全では無いのだろう。明可には魁世という人間が洗脳程度で言う事を聞くことは無いと証拠は無くとも断言できる。それでも聞いておきたかった。


「どうしてそこまで分かる」


「自分のことだからさ。分かるに決まっているだろ、明可」


 瞬間、柱の上から六発の弾丸が、そして二の矢、三の矢が、直と明可の間をすり抜けて隻眼の魁世を狙う。

 隻眼の魁世がもつ一眼の円環は、昌斗が放った弾丸の全てを視認し、ここでようやく下ろしていた太刀を以って弾丸六発を斬っては避け、二本の剛矢は鉄扇で再び弾こうとした。

 しかし隻眼の魁世は円環の瞳を剥いた。二本の矢と共に明可と直は動き出し、まるで飛んでくる矢と並行するようにして再び接近。興壱も継いで三の矢、四の矢、五の矢を放ってくる。矢は鉄扇で弾く、あるいは避けるとしても明可と直は後ろから迫る矢の数々に一切の怯懦もなく太刀二振りと鋭槍で斬りつけて、刺突してくる。

 太刀を振ってようやく攻撃を受け止めるが、隻眼の魁世は直と明可との剣戟は避けた。

 何故ならば、


「昌斗オォォォ‼」


 背後から昌斗が、柱から飛び降りざまに踵落としを兜を被った頭上へ、重力と脚力両方の力で降ろしてきた。


「……。」


 関節を外したかの様な動きで昌斗の脚撃を避け、明可の二振りには逆手に握った太刀を充て、直の槍と興壱の矢は鉄扇で弾こうとする。

 だが隻眼の魁世の見通しは甘かった。矢を弾いたあとに鉄扇を向けようと、直の槍はこれまで見せなかった豪速で突かれ、ついに隻眼の魁世が着る甲冑の脇腹、装甲の間に差し込まれた。更にそこへ興壱から継がれた五の矢が肩口に命中した。甲冑の装甲は容易く破られて、そのまま肉と骨の間に深々と貫通する。

 刹那の内に、直の穂先はズブズブと体内の臓腑を切り裂く。隻眼の魁世は両脚に全力の力を込めてその場から退避を試みた。

 地面に転がるようにして距離をとり、隻眼の魁世は血の滲みだした脇腹を咄嗟に押さえる。明可、直、昌斗は間合いを詰めては来なかった。


「もしここを、漆黒円蓋から脱出できたら。それからどうする」


 昌斗の能面。隻眼の魁世は自分のいた世界を思い出してしまい、すこし鼻声になった。


「またゼロからだ、な。仲間を集めて、戦力を増強し、それから……けど、昌斗たちがいないのは寂しいかな」


「そうか」


 昌斗たちに、琥太郎と興壱、そして完全に止血し終えた為信も合流する。為信の切断面には隻眼の魁世が投げた紅の絹が巻かれていた。

 六人は並び立ち、だんだんと顔色に灰がかかってきた隻眼の魁世を見る。

 魁世は人間、体に穴が開けば血も出て来る。肩口の傷から血潮が流れ、手にもつ鉄扇を濡らす。いつだって巨大な存在に挑んでいき、たしかに進んできた琥太郎たちの魁世は、きっと別の世界でもそうなのだろうと想像できる。


「細工は流々——」


「仕上げを御覧じろ、だろ。魁世!」


 明可の言葉を最後に、明可たち六人は一斉に動く。それぞれが必殺の一撃で以って隻眼の魁世を仕留めにかかった。

 嚆矢と銃弾を始めに、二振りの太刀が、研ぎ澄まされた槍の穂先が、斧槍が、短刀が。興壱に昌斗、明可、直、琥太郎、為信によって隻眼の魁世へ迫る。

 興壱の嚆矢が、隻眼の魁世の鉄扇それを握った手に命中する。

 弓取りの興壱は見抜いていた。隻眼の魁世が矢を撥ねていたのは、なにも矢の動きを全て認識出来ていたからでは無い。興壱の癖、獲物を狙う際にどこを狙うのか、無意識に得物の脳天を的にすることを知っていて、その型になった軌道に向けて鉄扇を払っていた。ならば型にとらわれず、最初から振ってきた鉄扇の動きを予想して、彼の手に狙いを定めて撃ち抜けばいい。

 昌斗の銃弾は、隻眼の魁世が振るった太刀に五発を防がれる。だが最後の一発で隻眼の魁世の太刀は響き良く音をたて、割れた。昌斗の知る魁世は量産軍刀という、いわゆる替えの利く武器を好む。それは魁世がモノに愛着を持たないのではなく、常に最高の状態、一度の戦闘で使えなくなる事の無いようにする為。また同時に自分の乱暴な刀の使い方に対応する為。そして昌斗は、隻眼の魁世も同じような刀の使い方をすると断じた。

 一応は魁世が開祖にあたる流派・法円の器とは、水の流れが云々と聞けばどこか上品で優雅にも感じられる。だがそれは真髄では無いと昌斗は閣下だった頃の軍刀を差していた魁世を思い出す。川に流れる水が止まることが無いように、常に新しい水が沸き出てくるように、刀も常に万全であることが肝要。しかし刀はどんな宝刀でも名刀でも、手入れをしても実戦では刃こぼれもあれば疲労限界もある。ならば常に新品の刀を後方に大量用意する必要があるだろう、と。

 そうして昌斗は、後方も無く、後ろから常に万全な刀を用意できない隻眼の魁世に対し、ただ一振りの太刀を疲労させ続けることにした。ついに隻眼の魁世が握る太刀は、連発された最後の銃弾によって断ち切れる。

 そこで昌斗は、隻眼の魁世が銃弾を避けたり、その場を退避する姿は想定しなかった。どうせ逃げても後ろには何もない。それを隻眼の魁世は知っているだろうと。

 武器を失った隻眼の魁世は、折れた太刀を身体に寄せる形で構える。全てを受け止めようとした。

 本命の攻撃にあたる明可たちの刃先が、頸から肩、腹、背後に回って背面と、隻眼の魁世の肢体を斬り裂く。隻眼の魁世が止められたのは僅かに直の槍だけで、その直も逸れた槍を楽々と手放して、腹にむかって拳を叩き込んだ。

 衝撃で隻眼の魁世は後ろに下がり、そこで背中から倒れた。


「……。」


 昌斗たちは隻眼の魁世からどくどくと流れる血液の溜まりへゆっくりと踏み込み、近づいた。

 もう四肢の動く様子は無い。隻眼の魁世は琥太郎に円環の瞳をあわせる。


「そういえば、琥太郎は早紀……朽木早紀とはどうなった」


 琥太郎はやや目線を下げる。


「別に、なにも……」


「いや頑張れよ。なにをしているんだよ。まさか自分から出る返り血の臭いに遠慮しているのか?かー!早紀はそんなの気にしない筈だ。ちなみに僕の方の世界では気にしてなかったぞ。あとは頑張れ」


 口端から血を流し、隻眼の魁世はニヤリと歯を見せた。

 為信は大股に膝を曲げて隻眼の魁世と目線を合わせる。


「最後だから聞くがオレ達はどうなった」


 その問いにはぴくりと表情筋を動かし、隻眼の魁世は一旦明可たちに目を彷徨わせた。


「明可は第七次帝都防衛戦で戦死、直はバスティーユの戦いで戦死、興壱と琥太郎はナンオウの撤退戦で戦死。惟義は第八次帝都防衛戦で斬首、昌斗はイダリア島・アーベナ半島の作戦で死んだ。おそらく為信は生きている。こんなところだ」


 話している内にだんだんと声音が弱弱しくなってくる。どうしてか、明可は目を逸らそうとした。

 直はふと隻眼の魁世がつけている眼帯に目がいった。ほとんど反射でそれを隻眼の魁世から解き取った。


「どうせ貴様にこの眼帯は必要ない。貰うぞ」「……ん、大事にするんだぞ」


 眼帯の裏には額から頬にかけた壮絶な記憶を物語る傷と、白に変わっていた円環の眼球があった。直は隻眼の魁世がつけていた眼帯を己の左目に被せる。

 とくに語るべき感想も感慨も沸かず、隻眼の魁世は自分の胸をゆっくりと指でたたいた。


「それではな。忘れないでくれよ」


 瞳から円環が底へ沈んでいく。琥太郎と昌斗が動作を同じくして左右とも閉じさせた。

 為信は斬れていない健在な手のひらを隻眼の魁世へ当て、中央に倒れているアナザー魁世へと視線を移し、能力を発動する。


 にわかに起き立つアナザー魁世。身体から禍々しい黒の粒子を放ちながら形態を変えはじめる。どこか死期の誓い蝉が鳴らす最後の鳴き声のように、まずは最大の力を出す。

 背面から幾つもの黒鉄の触手を出し始め、まず中央で纏わり集まって瘴気を撒き散らす球体に変わったかと思えば、そこから八つの灰色の翼が四対に生え、真ん中に巨大な眼玉をもった存在となって、隻眼の魁世が謂ったところの進化を遂げた。


「なんだ、あれ!気持ち悪‼」


「あれで四対八翼の大鷹なつもりか。ただの化け物とどう違う」


 興壱や直があまりにもあんまりな感想を垂れ流す。明可は藍たち、ヒメ魁世と戦っているだろう者達を探した——


 …

 ……

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