【第29話】『 束の間の怪人 』
64.花束の約束【第1章】- The Twilight World -〈第29話〉『 束の間の怪人 』
あの日から、僕はついつい息をするのを忘れちゃうんだ。
それは、呼吸の仕方なのか、空気の吸い込み方なのか。気がつくと僕の心臓は止まったように静かで、静寂で、その周りにはただただ理屈のような壁が僕を囲って見下ろしている。
怖いだけじゃない、後悔でもない。
もう二度とあんな惨劇を起こさない為に、僕にできる唯一の努力は考え続けることだった。
思考を巡らせるその刹那、僕の周りから音が消える。そしてウンザリするほど夢に見たあの日の「もしも」を想像する。
呼吸は止まり、視界はぼやける。次第に昨日の事のように思い出してしまう。
あの日の約束が、僕を縛り付ける。
まるで体中を這い上がり絡みつく植物のように。茨のような棘が僕の心に突き刺さる。助けられなかった事と、助けなきゃいけない事を同時に考え出してしまう。
とてもゆっくり。ゆっくりと目をあけた。
視界に色が戻り始め、音が遠くの方からゆっくりと聞こえ始める。
「いけるか。いいや、やるんだ。」
鉄格子の前で僕がボソッと呟いた。
地下の牢屋の中で、僕は考えをまとめていた。辺りの喧騒が今になって煩くなって聞こえ始める。
「状況を整理しろ。さっきの爆発音にこの地鳴り、それにあの兵士達の慌てよう、この国に予期せぬ事態が起こったと考える。」
僕は目を開き、鉄格子をギュッと握って思考した事を口に出す。その時、薄暗い鉄の檻の中で僕の目が異様にピンク色に光っていた。
「時の崩壊……。いや、自然災害。もしくは襲撃、テロ。とにかく、全てのパターンに対しての対策を講じる必要がある。今重要なのは、どうやってその問題を解決するか、か。」
言葉にすると、より頭の中を支配していたくだらない妄想が雲が晴れるように掻き消えていく。
「今この状況で、僕に出来ること……。こんな時、アイツらなら……。」
ふと、言葉に詰まる。
すると、僕は何かを思い出したかのように瞳孔が冴え始める。
「そうか……。あの日僕がして欲しかった事、くだらない妄想。」
可能性は未知数。何度も思考してきた事だ。
人の命がかかっている。僕のこの一瞬に全てがかかっている。
「……あぁ、そうだね。わかってるよ。こーゆーの好きだったよね。へへへ。」
その時の僕の耳に、声が聞こえた気がした。紛れもない、かつての友人の声が。
「……僕が。んーん。僕に思いつくのはこんなもんさ。」
僕の頭の中に、一つの結論が出た。
覚悟はある。勇気もある。ただ、結果うまく行くかなんて保証はどこにも無い。
ただ、こうなった以上、最悪のケースを想定するべきだ。
僕に残された道はただ一つ。例え救えなくても、失敗に終わっても、ここで動く事には絶対意味があるはずだ。
「‥‥‥‥。」
かつてないほどの大きな賭けだ。
僕が僕である以上に、この選択が世界を救うかも知れない。
何も怖くない。不思議と恐怖は感じない。
ただ、ちょっとだけ引け目はある。
まるでこれからとんでもなく悪い事をしに行くみたいな感覚だ。
「僕は、これからこの先、みんなを騙すことになる。けど、これが最適だ。やるしか無いんだ。後悔なんて地獄で好きなだけすればいい。」
その時、僕は一つ理解した気がした。
世界を救うと言う事は同時に、世界を“壊す”事と同じなのだと。
「行こう。約束を果たしに。」
最後まで読んでいただき、
誠にありがとうございました。
今後とも、
この作品を完結まで描き続ける所存であります。
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また、アドバイスやご指示等ございましたら、そちらも全て拝見させて頂きたく思います。




