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花束の約束 The Another World 〜傷だらけの英雄な君を僕だけは愛し抜くと決めた〜  作者: ぬぅと。はVTuberをしてますがアニメ化を目指して死ぬ気で書く
【第1章】黄昏の世界

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【第20話】『 奮戦 』





 59.花束の約束【第1章】- The Twilight World -〈第20話〉『 奮戦 』





 私は深く馬に乗り、これまで幾度となくこの国の為に働いてくれた信頼厚い聖騎士団と共に、今出撃を前にしている。

 出撃前、この時間はより一層の緊張感が我らを支配する。そして今回は、いつもの治安維持では無い。この中でも死人が出るだろう。それは私かも知れない。


 あの光景を見てしまったのだ。本来ならあの竜と立ち向かう為に現場へ向かおうとする事自体愚かな行為なのかも知れないが、勝算はある。

 あの竜を追い払うだけなら、この精鋭部隊が本気になれば可能性は充分だと言えるだろう。

 この国の中でも、聖騎士とは神に選ばれたとされる神官職の者達によって選抜された選りすぐりのエリート達の事を指す。つまり彼らこそが、この国の最高戦力なのだ。


「さぁ、門を開けよ。」


 私がそう言うと、王宮の門兵達は固く閉じられた大きな鉄の扉の錠を解き、ゆっくりと開き始めた。

 

「アイン、バインデッシュ、レーゲル、イングル、そしてイエラ侯爵、すまない。お前達の命は必ず私が守ってみせる。」


 私は彼ら一人一人の名前を呼び、そして誰よりも彼らを死なせない強い意志を持って発言した。

 私は彼らの顔を見られなかったが、皆んな一瞬驚いた後に小さく微笑んだ。そして、全員が前一点に集中した目で覚悟を入れ直した。


「姫様、我々があなたをお守りするのですよ。」


 プレートアーマー越しにバインディッシュが言った。

 彼は父の代からこの国の精鋭を務めていた人物であり、この中で一番多くの経験をしてきた騎士だろう。コレまで数多の戦場を潜り抜け、あまつさえ10年前の戦争でも手柄を立てた程の人物である。 


「……あぁ、そうだな。だが約束してくれ。お前達よ、決して死ぬな。生きて私を守りぬくのだ。」


 私はやはり彼らと目を合わせる事ができなかった。

 子供ゆえに考えすぎているせいなのか、それとも死ぬかも知れない戦場に彼らを巻き込んでしまう罪悪感からなのか。

 すると鉄の門は開き、その先には鏡のような薄い膜が貼られていた。


 私は前を向いて叫んだ。


「門は開いた。我々がこの国の盾となり、鉾となって脅威を排除する。我々の道にこそ神は宿る。正義はココに、主は見ていてくださるだろう!!」


 私は鎧の上から手のひらを胸に軽く当てた。

 それはこの国での“誓い”を意味する。それも神々との“誓い”。目的達成の為であれば、神々に命を捧げる尊い我らの意志と覚悟を象徴としていた。

 続くように聖騎士達も同じポーズを取る。誇り高きこの国の騎士達が、天命を得たのだ。思い描く誓いは人それぞれだが、私の望みは彼らと無事に生きて帰還し、この国の被害を最小限に留める事だ。


「……“我らの魂は祖国にあり。”行くぞ!!!!!!」


 私の合図と共に一斉に馬を走らせる。

 王宮から被害地までの距離はおよそ5キロほど。被害状況を考慮しても馬であれば10分以内に到着できるだろう。

 問題は到着した後だ、なんとか兵士達の手によって住民の避難は進んでいるとは思うが、ドラゴンには翼があり飛ぶ事ができる。空中戦は我々には不利だ。そうなった場合、私の魔法も届く見込みは無いだろう。


 現状、私にできる最善は騎士達の行動を予測し、奴の出方を探る他無い。後は行き当たりばったりにはなってしまうが……。


「クソッ……私に父のような戦略性があれば……。」


 馬を走らせる中、私はこの現状を俯瞰して戦略を練る必要があった。

 何度も本で学んできた事だ。指揮官として状況を正しく認識し、相手の立場を把握する。その上で最善の一手を打つ事こそ、今の私に求められた最大の使命。


 私の手に汗が滲む。

 こんな事なら、もっと災害や戦い方について実践レベルで準備しておくべきだった。



 


 ドゴォォォォォォォォォォン!!!!!!



 


 その瞬間、近くの民家で保管していたであろう魔法石に火がつき、その炎がエネルギー源となって爆発した。

 似たような爆発の音が先ほどからずっと聞こえている。今の時期、魔法石はどの家にもある。皆んなそれを生活の基盤に使っているし、魔法石は可燃性の為、一度火がつくと石本来の魔力がエネルギーとなって大きな爆発を呼びやすい。


 それにこの地域は特に木造やレンガ調の建物が多い地域だ。燃えやすい上に瓦礫の下に一度挟まれてしまえば住民の救助は時間がかかってしまう。

 それに奴がまだピンピンしているうちは、救護作業もまともに行えないだろう。


「見えてきました!!!奴です!!!」


 アインがそう言った。


「あぁ、ここら辺で馬を休ませよう。聖騎士隊は奴に奇襲をかける準備をしておけ!!!」


 私は皆にそう指示して、瓦礫の間を潜って奴の元まで向かう算段をつけた。慎重かつ冷静に。本当なら今すぐにでも切り刻んでやりたい所だが。


 しかし、私は奴の姿を近くで見て、驚きが隠せずにいた。

 なんとその姿は、通常よりも大きかったのだ。真っ暗な鱗は刃を通さず、兵士達の剣も槍も全て跳ね除けてしまう。そして奴の牙は鋭く、人々を食いちぎった形跡として顎に人間の血と肉が大量に付着していた。


「あの野郎……腹を満たす為にわざわざここまで来やがったのか……。」


 バインディッシュが瓦礫の中から目を光らせ、奴を観察しながらそう言った。


「姫様!!!」


「状況はどうなっている?!」


 元々先行させていたアインズブルクとサーレスが我々を発見してここまでやって来た。

 2人は戦闘の影響か、所々鎧が溶けかけている。金髪で短い髪型のアインズブルク。そして黒い肌のサーレスが私に報告をした。


「ご報告致します。我々は魔道隊と合流して奴を足止めする事には成功。これ以上の被害拡大は防止できるかと……。」


「しかし、奴の足元にはまだ生きた住民がおります。このままでは救助に向かうのは困難かと……!!」


「分かった。2人ともご苦労。」


「いかがなさいますか?!」


「どのみち奴をこの地に留まらせておく理由はない。即刻奴には飛んで帰還してもらわなければならない。」


 そしてアインズブルクは息を呑んだように続けてご報告した。


「それと姫殿下、奴は先ほどから兵士民間人問わず食い荒らしています。やはり奴の目的は……人を喰らう事かと……。」


「姫殿下、状況が変わりました。神聖な血を引くココに居させられません。竜は神に近い者を喰らう生き物です。あなたの血に引っ張られる可能性があります。」


 イエラ侯爵は真剣な眼差しで私にそう告げる。


「ならば私が奴をココに招き入れたのかも知れない。私が森で追われた個体と奴は似ている。どんな経緯であんなに巨大化したのかは分からないが、これは私が蒔いた種だ。私が囮になろう。」


「姫殿下……何をおっしゃいます。あなたはこの国の……!!!」


「分かっている!!!!!」


 イエラ侯爵の言葉の先は理解できた。

 彼も聖騎士達も、皆優しい戦士達だ。私がまだ幼い少女なばかりに、彼らは私を囮に使う事には反対すると知っていた。


「アイン、お前に任せる。」


「姫様、何を?!!!!」


「姫殿下!!どうかお考え直しを!!」


「姫様!!!!!!!!」


 私は瓦礫の中から飛び出し、その場で手を前にかざして呪文を唱えた。アインは私との任務に数多く同席していて、いつもの事ながら手際よく合わせてくれるだろうと言う信頼があった。

 

「オルイマン…………アルフォン……リアナーデン…………。」


 その場に転がっていた材木を魔法の絨毯に変えた。

 私はそれに乗り、聖騎士達が止める声を聞かず竜の元まで絨毯を飛ばした。

 

 私は元々“創世の魔法”が使える程、魔法に関しては小さな頃から才能があった。残念な事に攻撃に使えそうな魔法は習得すら叶わなかったが、それ以外であれば私は無機物をなんでも思いのままに作り変える事ができる。

 

「兵士達よ!!!住民が瓦礫の下で苦しんでいる!!!消火作業と救出を第一に、人命を最優先して動け!!!!!」


 大声で彼らにそう伝えると、兵士達は上を向いて立ち上がった。兵士達は私の言葉を聞いて奮起し、絶望的だった状況から一変。この状況を打破する為に奮闘する顔つきへと変わった。

 しかし、近くで見るとその地獄のような様子はまさに目を覆いたいほどだった。

 兵士達の大半は瓦礫と共に踏み潰され、焼かれて生きているのか死んでいるのか分からないような人も居た。そんな中、彼らは懸命に私が来るまで戦ってくれていた。


「……皆んな……ごめん。」


 絨毯を飛ばし、竜の目の前を通る。すると奴は目の色が代わり、私の血を求めてその場から少しずつ動き始めた。

 奴は明らかに私に反応を示している。このまま人の少ない開けた場所まで誘導出来れば……!!!


「……食い付いた。やはり狙いは私か。」


 しかし、ドラゴンは持ち前の羽を広げようとはせず、明らかにその場でハエを捕まえるかのように私を狙う。


「飛べないのか……?それともあえて飛ばずに……?!」


 次の瞬間、竜の上空を飛び回る私に目掛けて、奴は大きく炎の息を吹き、それはまさに遠目から見ると天にまで届くほどの火柱のように見えた。


 真っ赤な炎が一本の線を描くように放たれる。

 私は絨毯を左に旋回させ、その炎を回避した。


「…………今だ!!!!」


 奴が空中に居る私に集中している中、聖騎士隊が地上で一斉に奴に剣を突き刺す為に飛び上がる。


 次の瞬間、奴の皮膚の間を聖騎士達の剣が貫く音が鳴り響いた。

 

 


最後まで読んでいただき、

誠にありがとうございました。


今後とも、

この作品を完結まで描き続ける所存であります。


もし少しでも良いと感じられましたら、ブックマークやコメントなどお待ちしております。


また、アドバイスやご指示等ございましたら、そちらも全て拝見させて頂きたく思います。

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