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花束の約束 The Another World 〜傷だらけの英雄な君を僕だけは愛し抜くと決めた〜  作者: ぬぅと。はVTuberをしてますがアニメ化を目指して死ぬ気で書く
【第1章】黄昏の世界

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【第19話】『 暗黒竜 』




  58.花束の約束【第1章】- The Twilight World -〈第19話〉『 暗黒竜 』




 私が到着するや否や、その光景を見て、先んじて現状を見ていたであろう聖騎士隊、神官達、この王宮に居る多くの幹部達は口を開けて驚いていた。

 彼らの目には絶望が写り、横顔だけでもその恐怖を肌で感じるほどだった。


「どうしたと言うのだ。一体何が見える……!!」


 そう言って人々を押し退けて、私はバルコニーの手すりに手をつけた。するとその先に見える絶望的な様子が一直線に目に映った。


「……なんだ……これは……。」


 私がその時見たのは、地獄と言い換えてもいい惨劇だった。

 そこには王都の中心で人を燃やして回る巨大な竜の姿があった。そしてその巨大な体で街も、人も、鉄道も、何もかも目につく全てを踏み潰している。


 いつも私を支えてくれていた世界が、人々が、漆黒の皮膚を持つ暗黒の竜によって、生きたまま痛めつけられ、焼かれ、殺されている。

 男も、女も、子供も関係なく、その姿はまさに容赦のない様子が見てとれた。


 幼い子供を抱き抱えながら逃げ惑う母親。必死に槍で攻撃しつつも簡単に跳ね除けられてしまう兵士達。馬で現場まで駆けつける聖騎士達を馬ごと踏み潰す暗黒の竜。

 竜は足元に群がる兵士たちを「外敵」としてすら認識していないようだった。ただ無造作に歩みを進めるだけで、屈強な兵士たちが虫けらのように宙を舞い、瓦礫と共に潰されていく。


 その光景を目の当たりにして、私の目は一瞬で修羅と化した。

 抑えられない程の憎しみと憎悪が体の奥底から込み上げてくるのが分かった。まるで血液が沸騰しているかのように燃えるような怒りが私を突き動かしたのだ。


「…………よくも……お父様の国を……!!!」


 私は血が滲む程の強さで拳をキリキリと握りしめていた。

 見上げると、この国の守護神であるアーフィラル・ホエールが竜によって食いちぎられているのが見えた。他にも国を守護する魔法動物達が、恐らく暗黒竜の仕業によって食いちぎられ弱りきっている状態だった。

 私たちが崇め、絶対の安全を誇っていた神聖な存在が、あのバケモノにとってはただの『餌』でしかないのか。奴のその絶対的な生物としてのヒエラルキーの差に、見ているこちらの正気すらも削られそうになる。

 

 それらの惨状を確認し、私は己の奥底で荒れ狂う殺意と憤怒を無理やり押さえ込んだ。今、直ちに私が的確な指示を出さなければ、この国は守りきれない。


 しかし、その様子を目にした者達の反応は凄まじかった。

 

「……あぁ、終わりだ。」


「こうなったら逃げるしか無い!ここから立ち去るのだ!!」


「有り得ない。なんであんな奴が……ここは結界の中だそ?!」


 歴戦の幹部たちでさえ浮足立ち、王宮内は統制を失いかけていた。

 私は深く息を吸い込み、彼らの悲鳴を斬り裂くように、腹の底から声を張り上げた。

 

「……聞け!!!!」

 

 その一喝で、空気が凍りついたように全員が動きを止める。

 あまりの惨劇に言葉を失い、足の震えが止まらない幹部たちを前に、私はわざと普段よりも低く、通る声で言い放った。

 この国の姫である私が少しでも狼狽えれば、この国の命運はあと数分で終わるだろう。


「……聞け。お前達よ、我が兵力全てを持ってアレを撃退せよ。聖騎士隊は私に続け。アインズブルクとサーレスの班は先に現場へ向かわせろ。王宮を守護する兵士達を暗黒竜討伐に当たらせ、近衛隊は南から襲撃せよ。冒険者組合にも要請を回せ。住民を直ちに被害地から救出し、あのトカゲを追い出せ!!!」


「御意。」


「イエラ、お前も来い。」


「かしこまりました。」


 命令を聞き、近衛隊は直ちに現場へ急行した。そして聖騎士達も命令通りアインズブルク班とサーレス班は先に馬で現場に向かい、残りの精鋭部隊を引き連れて私と共に竜の元へ向かう装備を整え始める。


「ボサっとするな。今、全軍隊、兵士、騎士幹部達に命令を下す。大至急だ。侵入経路は不明だがこの国に脅威が現れた。なんとしてでも、この国を。我らが祖国を守り抜け!!」


「了解!!!」

 

 私は荒ぶる心を鎮めつつ、その場にいる全騎士幹部達に命令した。しかし、言葉を気にしているだけの余裕は私には無かった。なんとしてでもこの国を守らなければ……その一心で私は全技術者及び、魔法職、精霊職、神官職、にも出撃の命令を下す決意をした。


「住民の避難を最優先にせよ。技術職の者は国防義勇軍に出撃の要請を。支援魔導部隊はクジラの蘇生と治療に向かえ。魔法職はあの獣を“結界封印アントラーダ”で足止めして欲しい。精霊職はここで待機。補給はエルダに要請せよ。」


「了解!!!」


「グロークス・エルスター兵士長。地上は奴の炎により火の海になる。兵士達の力が必要だ。住民は旧水路層の地下道を通り、西の城壁外へ逃がせ。足の不自由な者と子供を優先し、国民を守る事を第一に行動して欲しい。」


「はっ!!!!」


「動ける者は全員動け!!こうなった以上、各自の判断が最も大切だ。皆の奮闘に期待しているぞ。」


 私はそう言って王宮内に居る人々へ鼓舞し続けた。

 その間も、暗黒竜は火を吹き続けていた。それによる民家の炎上と爆発が続いている。

 あの瓦礫の下で、一体何人もの人が恐怖と戦っているのだろうか。何人もの人が肩を震わせているのだろうか。


「………。」


 人々は王宮内で慌ただしく動き回る。

 手際よく迅速に使用人達は私に鎧を着せ、出撃の準備に3分も時間はかからなかった。

 その間、この王宮の中だけでも、瞬時に行動できる者、絶望に動けなくなっている者、不満を垂れ続ける者、さっさと逃げる準備を始める者など、その混乱ぶりは明らかだった。


「姫様、姫様がわざわざ出向かなくとも……。」


 聖騎士の中でも戦友とも言えるアインが私にそう言った。


「私は、父が残したこの国を守る。私の魔法は奴に対しては無力だろうが、お前達が動きやすいようにサポートする事は出来るだろう。」


「……失礼致しました。しかし、いざと言う時は、私が貴方を連れて逃げます。もし私が死んだらその役目はイングルに頼んでおります。」


「あぁ、すまないな。私のわがままに付き合わせてしまって。」


「何を仰いますか陛下、貴方は私達の希望なのです。」


「ありがとう。よし、すぐに馬を用意しろ。」


「承知致しました。」


 これだけのパニックを事前に予測出来なかったのは私の失敗だ。しかし、なぜこんな時にあの竜がわざわざ常備結界を破ってこの国の内部に侵入してきたのだろうか。

 それもツワァル木の中に出現するなど、明らかに裏で手引きした者の存在が居るに違いない。

 

 怒りで視界が赤く染まる中でも、私の脳は氷のように冷たく状況を俯瞰していた。

 結界の死角、魔法動物たちの無力化……これは単なる偶然の災害ではない。明確な意志を持った「侵略」だ。


 それにあの竜、どこかで…………。


「……まさか。」


 私は奴を凝視した。

 するとその姿は昨日ベルファシスの奔流にて追いかけられた個体によく似ていた。

 しかし、その姿は明らかに巨大で、鱗も黒く変色していた。御神龍が人間を喰らう為にここまで来たのか?それとも、奴にはどうしてもこの国に侵入して来る程の理由があるのだろうか?


 どちらにせよ、これ以上あのドラゴンに私の国で好き勝手な事はさせない。どうやらこの国はあまりにも平和が長すぎたようだ。

 兵達も騎士も国内でまさかこのような事態になるとは思いもよらなかっただろう。しかし、彼らはよく恐怖に耐え責務を全うしている。

 なにせ彼ら幹部達は、父と共に10年前の戦争を生き残った精鋭達だ。その手腕は私の出る幕では無いだろう。


「姫殿下、馬の用意が出来ました。いつでも出撃可能です。」


「アイン、世話をかける。」


「それとこの剣を。」


 アインは1本の純白の剣を私に差し出した。


「これは……。」


「かつて先王陛下が差していた剣です。今こそコレを貴方に。」


 私は剣を受け取り、腰に差した。その重みは先代達が王家に残してきた誇りと、なんとしてでもこの国を守れと言う責任感であった。

 そして私はそのまま馬に跨り、聖騎士達と共にいよいよ出撃の時を迎える。


 あの怪物をこの国から退かせ、国の被害を最小限に抑える。それが今私の取るべき最善の手段だ。

 


最後まで読んでいただき、

誠にありがとうございました。


今後とも、

この作品を完結まで描き続ける所存であります。


もし少しでも良いと感じられましたら、ブックマークやコメントなどお待ちしております。


また、アドバイスやご指示等ございましたら、そちらも全て拝見させて頂きたく思います。

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― 新着の感想 ―
あのトカゲ野郎………!(口が滑る) 先が気になり過ぎて夜しか眠れない…! (なう(2026/06/18 08:27:30))
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