【第12話】『 朝光 』
51.花束の約束【第1章】- The Twilight World -〈第12話〉『 朝光 』
ホテルの窓から朝日が登り始める。異世界に来てから11日目の朝だ。
昨日はあれからヨランと夜通し語り明かしていたらしい。少女は机に寄りかかってスヤスヤと寝てしまっていた。僕はそんな彼女の肩にかけてある毛布をそっと直した。
そして、僕は日が完全に登り切る前に、少し外へ出る事にした。
ゆっくりとドアを閉め、音が鳴らないように階段を降りてホテルを出た。
ホテルを出ると、昨日は出迎えてくれた白猫のオブジェクトが今度は「また来てにゃ」と言わんばかりにそこにあった。
「少し散歩してくるだけさ。」
ポツリと独り言を呟き、僕は朝の街を歩き始めた。
外はまるで霧がかったように白く、昨日はあんなに賑やかだったのに、今はとても寂しげだった。
そんな朝の世界へ飛び出した僕は、朝日を浴びながら自分の世界とはまるで違う異世界を実感していた。
「どこの世界でも、空は青く、雲は白い。太陽は赤く、僕を照らしている。」
そう独り言を言い、僕は静かな街を眺めていた。
昨日、ヨランと話した内容は大した事では無かったが、この世界についてまた深く理解する為の糧になったと思う。
そして今気がかりなのは、まだ合流出来ていない真白の存在。そしてこの世界での“時の崩壊”がいつ起こるのか、だ。
僕の世界が崩壊した時は、事前に前触れがあったと考えるのが自然だ。僕のような人物の存在、そして悪魔が世界に降りてきている可能性が高い。
悪魔、あの“バケモノ”のような悪魔が、この世界にも降りて来ているのだとすれば、僕にはなんの勝ち目も無い。僕は時の権能以外ではなんの力も無いただの子供だ。
あの強大すぎる力の前では、まさに無力でしか無いんだ。
「そうだ、朝のランニング……。」
僕はポツリと昔やってたルーティンを思い出した。
地区大会に向けて、特に選抜チームに選ばれてた僕と義也は毎朝土日も欠かさずランニングしてたっけ……。
ここは森じゃ無い。危険な事は無いだろう。今日からまた再開してみるか。
「かれこれ4ヶ月ぶりくらいかな。」
まとまらない考えをまとめる時は、いつも早朝ランニングの時と決まっていた。
なぜなら空気が澄んでいるし、走っていても早朝だから迷惑になる事も少ない。それに体力が落ちている僕には今一番必要な基礎トレだ。大会で優勝する為、世界を救う為、どんな事でも小さな努力を怠ってはいけないんだ。
「ヒッヒ、フッフー、ヒッヒ、フッフー」
呼吸を整えて、少しづつ、一定のテンポで。よく顧問に言われていた事だ。
今の僕のステータスを思い返してみよう、まず異世界に来た。世界を救う力は“あるかも”知れない。けど未確定だ。
それに悪魔の存在に対抗する手段が分からない。僕に魔法や剣術が使えたらいいんだけど。そんなに都合のいいモノだと思えない。
「っと、なれば。」
まずは全盛期並みの基礎力向上、後は体力だ。
それと、いざと言う時に僕には圧倒的に知識が不足している。肝心なのは想像力、か。
もしも、この世界を救う為に必要な条件があるとすれば?
もしも、時の崩壊を引き起こすトリガーがあるとすれば?
キリがないけど。今思いつくありとあらゆる『もしも』を想像して、全てにおいて対処出来るだけの準備を心掛ける。それが最も重要な事だ。
一度失ったら、二度と取り返せないんだから。
だからこそ、生きているうちに最善を尽くす。
それが“時の崩壊”を食い止める為に必要な事だ。
「けど……。」
どうしようも無い時は、また……。
いいや、ネガティブに考えるな。物事は全ていい方向に進むと仮定するべきだ。
とにかく、今最優先するべきことは、情報収集。
そして、例え行く手を阻む強大な敵が現れても、しっかり対処出来るだけの“力”が必要だ。しっかり考えよう。もう二度とあんな悲劇を起こさない為にも……。
「……少し日が出てきたな。」
次第に街は目を覚ましてゆく。鳥は囀り、風は歌い、人々はいつもの日常へと向かってゆく。
高い丘の上へやって来た。
そこには教会があり、ベーゼル地域一帯を一望できるくらいの場所だった。
「この世界で、どんな理不尽に見舞われようとも、僕は進む。それが僕らの約束なんだ。」
そう言えば、マーフはどの辺りに住んでいるんだろう?
ちゃんと王国に着けたのかな?
あの後、ドラゴンと対峙した後、あの子はちゃんと無事に家に帰れたんだろうか。
「……賽は投げられた、か。」
この国が地獄に変わるかも知れない。
風が吹いている。
この国で、何かが起きる予感がする。
最後まで読んでいただき、
誠にありがとうございました。
今後とも、
この作品を完結まで描き続ける所存であります。
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