NCプログラマー
「うーん、じゃあ、お願いできるかしら?ただし予算はある程度決めてるからそこからは予算を削ってもらいたいんだけどね」とうさちゃんは言った。
「わかりました。とりあえず見積もりを出しますので、しばらくお待ちください」と高岡は答えた。
「それとあなた、副会長兼CEOだけど部署はたくさんあってもいいでしょ。それと専門の人員も増やしてね」
「そうですか、それでは『部品製造課』はどうでしょう?」と高岡は提案する。
「『開発部』は?、新しいモノを開発したり既存のモノの改良などに着手する部署です」と夢華が言う。
「では、その二つの部署を作りましょう。あと、『製造部』と『販売促進課』も作りたいんですが、よろしいでしょうか?」
「いいんじゃないかしら」
「あと、もうひとつ。この国に住んでいる人はだいたい車を持っているから故障してもすぐに直せるように整備士が必要だと思うの。その辺の人員はどうするの?」と麗奈が聞くと
「そうですね、まず新規に採用して研修を行ってから配属するしかないでしょうね」と答える高岡。
「それともう一つ。部品供給システムを構築したいのですがいいですか?故障してから部品を取り寄せていると時間がかかりますし、ユーザー様へのサービス向上にも繋がりますので」と言うのである。
「わかりました。では、そのようにしましょう」とうさちゃん。
「じゃあ私の国ではCADで設計図を描くような会社をつくるわ」と姚晨。
「え?CADってなに?」と夢華が言う。
「コンピュータを用いて設計や製図を行うシステムのことよ。手書きの図面をデジタル化して修正や計算を容易にするの」と麗奈は説明する。
「ふーん、便利そうだけど難しいんでしょ?」と夢華。
「慣れれば簡単よ。でも、うさちゃん国の男性なんてこんな事やりたくないでしょ。それよりも姚晨国で設計して現場同士で情報をやり取りする方が男性のモチベーションも上がるでしょ」と姚晨は言う。
そして
「うん、確かにそっちの方がいいかもしれないわね」とうさちゃんも同意するのであった。
「NCのプログラムは誰が組むの?」と麗奈が聞くと
「やっぱり工作機のある現場の人が理想ですね」と高岡は答えた。
そして
「それじゃあ、専門の教育機関を作らなければなりませんね。よろしくお願いします」と高岡が言う。
「え?私……?」
「まあ、いいわ、任せて頂戴。今から人材募集するわよ!」と麗奈は元気よく答えた。
「よろしくお願いします」と高岡は言う。
「じゃあ、NC工作機の工場は私の国ね」と麗奈が言った。
そして、各所で人材確保と教育がはじまった。まず、各部署に人員を配置し必要な機材を購入し実務につかせる。
次に新しい職業として『NCプログラマー』なるものが誕生する。その専門教育機関が設立されたのである。
なお、このNCプログラマーというのはプログラムを組む専門家であり、主に、NC旋盤、NCフライス盤、ワイヤーカット放電加工機などの制御装置を使って金属加工をする技能工を指す。
ちなみにNCとは『Numerical Control』(数字による制御)の略である。
と同時に工作機械メーカーに工作機の特注も依頼した。
工作機は3Dデータの読み込みが出来れば良いのだが出来ないものも多い。なので、このデータをNC言語に変換して読み込ませれば3Dプリンタの様に工作機も使えてしまう。
工作機は3Dプリンタ程繊細に動かせないため3Dモデルと全く同じ物は造形できないが3Dモデルの輪切りデータを作成しそれを基に金属切削すればその輪切りデータを積層して立体にする3Dプリンタと原理は一緒だ。
輪切りデータも工作機で加工可能な様に精度を落として作れば問題はない。
そして、もう一つ重要な要素は『CAM』である。これはCADで描かれた立体物を切削するために平面方向をどの順序で切ってゆくか切削パターンを作るソフトウェアである。3Dモデルの輪切りデータを順番にCAMを使って加工指示ファイルに変換してゆけば完成である。ちなみに『CAE』というソフトもある。
「しかし、この装置すごいですね」と高岡が感心する。
「まあ、ちょっと高いですけどね」と麗奈が言う。
「この工作機械があればどんな素材も加工できますし、あっという間に量産することが可能です。3Dプリンターもこれがあれば不可能ではありませんが、時間はかかるし、どうしても荒い表面になってしまうのです」と高岡が言う。
「そうなんですか?だったら3Dプリンターで充分なんじゃないですか?」と夢華が尋ねると
「まあ、確かにそうかもしれませんが、やはり精密部品を作りたければ3Dプリンターを使うよりもこの工作機械の方が向いているんですよ。それに何より安いですしね」と高岡は言う。
「なるほど……」と夢華は頷く。
「でも、麗奈国ってほとんどが女性じゃないですか。機械操作なんて出来るんですか?」と姚晨は心配している。
「大丈夫だと思いますよ。今の時代の機械なら女性でも扱えます」と高岡は言う。
「そうですか……それなら良かった……」と安堵する姚晨であった。
さらに
「あと、3Dプリンターの材料を揃えないといけないですね。色々な樹脂が欲しいので」と高岡は言う。
「そうですね。じゃあ、今度買い出しに行きますか?」と夢華が提案する。
「そうだな。俺の国でも何か仕入れてくるよ」と麗奈が言った。
「え!行くなら私と一緒に来てくれるかしら?」とうさちゃんも行く気満々だ。
「うん、行きましょう!」と姚晨が言い、
「あ、私も同行させて頂けるのですか?」と金智英も聞いてきた。そこで
「勿論、じゃあみんなで出掛けましょうか」とうさちゃんが提案すると
「いいですね」と姚晨、「楽しみですね」と夢華、「久しぶりに旅行気分だわ」と金智英、「温泉旅館予約しないとな」と麗奈が同意した。
そして、翌日。一同は車で材料を買いに出かけた。
#####麗奈国
CADスクールで生徒が一生懸命学んでいる。
「うーん難しいなー。でも覚えれば仕事で役に立つしね」と生徒の夏樹那奈が頑張っていた。
「うわ、この年輪のような大量の円を描くの大変そう…」
一つ一つ円を追加していく。
「あ、そうじゃなくて、こういう時はねオフセットコマンドを使うと楽なのよ。例えばこの場合距離を3、数を10っていうようにね」と講師のケイツが教えている。
ケイツは以前、3DCADのプログラミングをしていただけあって非常に教えるのが上手い。そして
「なるほど、こうやって操作するんですね!ありがとうございます!」と夏樹が感謝するのであった。
一方こちらは工作機の使い方の講習中だ。
「さて、皆さんそろそろ休憩にしましょう」と講師の春香が言う。すると生徒たちは椅子に座ったり立ち話を始める者もいた。
「先生、質問があるんですけどいいですか?」と秋元雪乃が手を上げる。
「なんでしょうか?」と春香が聞くと
「なぜこの機械は丸いものしか切れないんですか?」
「そうね、まずはこの機械の構造を簡単に説明しましょう。ここにあるのはボール盤と呼ばれる機械で、クランクによって刃先を左右上下に動かして材料を削っていくの。ただし、基本的に加工できるのは球形だけなのよ。その理由は簡単。球体というのは最も削りやすい形状だからよ。角材とかは切れないわ。平面だって削れないわ。ただし、旋盤は別よ」と春香が説明すると
「なるほど……」と理解したようだった。
「今日はここまでね。次回までに宿題を出しておくのでしっかりやってきて下さいね」
と春香が言うと
「はい!」と生徒たちが元気よく返事するのだった。




