自動車ブーム
#### うさちゃん国
現在、うさちゃん国では空前の自動車ブームが到来していた。
まあ、ガテン系気質の男性が増え、諸外国とは異なり排ガス規制だのEVだの煩い法律がないのだから自然とそうなるのも致し方ない。
また、街のインフラも進み各家庭の駐車場スペースに余裕が生まれてきたことも要因である。
それに自動車産業がないので旅行がてら他国で中古車を買う人達も多かった。
「おーかっこいいな。何て名前なんだ?」と一人の男性が仲間に尋ねている。
「いいだろー、これ鉄仮面っていうんだぜ!」と自慢げだ。
※『鉄仮面』とは昔、日産のスポーツカーで正式名称はスカイライン「鉄仮面」とは、1983年に登場した日産・6代目スカイライン(R30型)の後期型スポーツモデル(RSシリーズ)に付けられた超有名な愛称で、フロントグリル部分を大きな板金プレートで覆った姿が、まるで武者の甲冑の一部を思わせることから通称「鉄仮面」と呼ばれていた。性能も良くて安いので人気のある車だが、今ではなかなか入手できない車種だ。
そしてもう1台
「こっちはソアラ、初代ソアラと言えば80年代日本を代表するスポーツクーペで、それまで日本車には無かった流麗な曲面と、低く構えたボディデザイン。そしてV8エンジン搭載のグレードまで用意した。その格好良さを求めて、数多くの日本の若者がソアラを求めた。1981年に登場したトヨタ初のFR方式によるスペシャリティカーで、トヨタのスペシャリティカーの中核を担うモデルだ」と別の男も説明してくれる。
「かっけえな!!、俺も欲しいぜ」
「でも結構値段するぜ」と別の男が言うと
「大丈夫、今は空前のゴールドラッシュだからな。体力さえあればいくらでも稼げるし」と男は答えた。
その発言はまさに経済の活性化を表していた。
また、自動車メーカーとしてもこのうさちゃん国は新たな市場として注目しており、既にいくつかの企業が出店を始めていた。
「うさちゃん国では空前の車ブーム。その中で最も注目を浴びているのが『馬力至上主義』。これは最大出力を求め続けた結果生まれた車。その中でも最高出力880psの3.8リッターのV型6気筒ツインターボエンジンを積む『ニッサンGT-R NISMO Special Edition』は世界最速マシンと呼ばれています」とニュースキャスターは言った。そして画面に映し出されるのは燃費向上に特化した電気自動車などではない。
「いや、それって600馬力じゃなかったか?」という突っ込みもあったが無視して話を進める。そして「それが今、市場価格はなんと『億越え』。もはや一般人には手に入らないほどの金額になりましたが、それでも購入希望者が殺到しています!」とニュースキャスターは興奮気味に伝えている。
「やっぱすげーよな。ニッサンGT-R NISMO Special Edition。俺も買いたいぜ」
「まあ、そりゃお前みたいな奴じゃ無理だろうけどな」と男Aは笑いながら言った。
「うるせえ!いつか絶対買ってやるからな!」男Bは悔しそうにしている。
そしてこのうさちゃん国のユーザーにとっても走行性能や快適性より何よりデザイン性を重視し、かつて流行した旧車風のスタイルに拘る傾向が強かった。
その中でも特に人気の車種はやはりスポーツタイプのものが多い。
「やっぱ、ソアラだろ?!」「いやいや、280Zこそ至高!」等といった議論が白熱し、ネット上で日々繰り返されていた。
中古車屋も店頭にはヨタハチ、FD3S、FCなど他の国では見られないような光景だ。
「おいおい、ラングレーかよ。スカイラインがいくら高いとはいえこんな車種まであるのか」
※ラングレーとは、昔、日産が製造していたFFスポーツカーである。その特徴としては、直列4気筒DOHC16バルブエンジンを搭載し、当時としては非常に珍しいフルタイム4WDシステムを採用していたことだ。
スカイラインに似てる事からミニスカイラインとも言われ丸いテールランプなどは象徴的である。
「そうだよ。まあ、今の時代に合わせて少し手を入れてはいるけどね」と店員は答えた。
「でもさ、こんな古いのよく売れるよな?」客は言うと
「まあね。最近はこういう個性的な車が売れるようになってきたし、それにこの国には他にない珍しい車も多いからね」
「それにこの国は鍛冶屋さんが手作りでパーツ作ってくれるおかげで廃盤部品も手に入るしね」
「へえ〜、凄いな。こりゃ確かにありかもな」と客は納得した。
また、街中でもこのような会話が聞こえてくることもあった。
「なぁ、次乗換えるならどの車にする?」と聞くと
「やっぱ、GTRとかかな」という答えが返ってきたので、「それもいいけどさ、俺的にはやっぱりスープラだな」と話題は続く。
「それと、俺もスポーツカー欲しいんだけどいいのあるか?」と聞くと
「だったら俺のお勧めの車があるんだよ。それがこれ!RX-7!80年代のジャパニーズスポーツと言えばこれだ!」
「おお、解るわー、あの独特のロータリーサウンドがたまらないんだよ」
「うんうん、それでいてあの走りだもんな。それに見た目も綺麗だし」
「俺はなんて言ってもRX‐4だな!」
「RX‐4?なんだそりゃ?聞いたことないけど」
「知らねーの?まあ仕方ないか。アレは幻の車と言われてるからな」
RX‐4、日本では2代目ルーチェとも呼ばれ、ロータリーエンジンを搭載した歴史的な名車だ。
「なんだか知らないが凄そうな車だな」とその男は感心した。
「まあ、実際乗り心地も抜群だし最高だぜ」と胸を張る。
「でも、あいつだけじゃねえか?ロータリー持ってるの」と男は言うと
「まあな、俺はもうすぐ卒業するしな」と答えた。
「そうか……。寂しいけどしょうがないよな」
「ああ、だが俺の夢は終わらねえぜ。だから次はお前の番だ!」
「お、おうよ!」
「じゃあ、決まりだな」
「ああ!」
うさちゃん国ではこういった会話があちこちで行われていた。
それは自動車に限らず様々な物にも言えることで、人々はそれぞれの趣味嗜好によって生活の満足度が大きく変わってくる時代となっていた。




