TOB宣言!!
すると‥
「え?お前が買収したい会社があるって?そうか……わかった。俺が調べてみよう」と言い出しパソコンをいじくり始めた。
「なんか、この辺がよくないかな?M&Aが得意だって書いてあるぞ!」と
旦那が見つけてきたサイトは株式会社サンライズコンサルという企業だった。
株式会社サンライズコンサルは経営コンサルティングからM&Aまで幅広く手掛けている会社で最近の急成長企業らしい。
しかも経営コンサルティング部門は過去にセントラル航空などの超大手企業も手掛けたこともある有名どころとのこと。そこで早速、旦那と一緒にサンライズコンサル社へ行き、担当者に話をすることにした。
「初めまして、私はこちらの会社の代表取締役兼CEOをしている坂東と申します。今日は私どもの会社に興味を持っていただいたようでありがとうございます。早速ですが話を聞かせていただけますか?」と営業スマイル全開で応対してきた。
星美はこう答えた。「ええ、実は私、最近ある株について面白い事を思いついたのですがそれを実現するためにもその会社を買収したいと思っているのです」と告げた。
それを聞いた坂東は少し驚きつつも興味深そうに話を聞いてくれた。
「なるほど。ちなみにどの会社を買収したいのですか?」と聞くので
「はい。長州きもの学園です」と答えると
「は?」と坂東は口を開けたまま固まってしまった。
長州きもの学園といえばここ1~2年株価が低迷していてほとんどが個人投資家が中心の会社で大株主は閑々グループが筆頭大株主。
その他はみなし子に近い個人投資家が8割を占めている弱小企業だ。
そんな会社をどうこうするつもりなんだとびっくりしたようだが星美は構わず話を進めた。
「では具体的な作戦を話しますが……」と言い始め、説明を開始した。その内容とは……
星美の作戦は以下の通り。
まず第一段階として現在この会社の理論株価は40円程度であり以前は50円台でウロウロしていたような株です。それなのに今は20000円以上まで上がってしまっていて市場での購入は無理と言う物。
だから価格70円で上限51%のTOBをしたいのですが。」と説明した。
「ええ、つまりはTOBを行い株価を下落させようという訳ですね!しかし相当市場はパニックになる事が予想されます。」と坂東は理解したようだ。
だが星美の言うことはこうだ。
「いえ、下落で儲けようとは思ってません。純粋にこの会社を手に入れたいのです。仕手株化状態はただの偶然です。株価70円程度なら時価総額は30億程度。そして51%分ならその半分で済む計算です。もちろん諸経費など色々加算されるとは思いますが」と答えた。
そして
「次に第二段階として仮にTOBが成功し目標株式保有比率に達した場合、さらに高値で株を買い集め完全子会社化。最終的に第三段階では長州きもの学園を上場廃止させようと思うんです」と言った。
それだけ聞くと完全な邪道っぽく聞こえるかもしれないがこれにはきちんとした理由がある。この計画をうまく進めれば上手く行けばヒミコ教国の国民全員に浴衣や甚平を着させることが出来るかもしれないと思ったからだ。その為にはこの長州きもの学園は喉から手が出るほど欲しかったのだ。もちろんヒミコ様のために。
「ところで……あなたが持ち込まれたこのお話はご主人が計画されたという事ですか?」と坂東は聞くが
「いいえ、これは私が考えたことです」と答える星美。すると坂東は考え込み始めた。
そしてこう答えた。
「ではご主人に確認したい事があります。あなた方ご夫婦はどういったご関係なのですか?夫婦であることは明白ですが……失礼ですが本当にただの夫婦なんですか?」
その質問に星美は微笑みを浮かべ
「私は夫の妻であります」と答える。
しかし旦那は「は?え?それってどういう意味なんだ?」
と困惑しているようだ。だが星美は続けて答える。
「私の大切な旦那様ですよ!失礼にもほどがあります。」と言ってから旦那に抱きつくように腰に腕を回す。
すると坂東は苦笑しつつも納得したようだ。そしてこう返した。
「そうですね、失礼しました。ではあなた方夫婦の将来性を考慮した結果、依頼を受けることに決めました」と答えた。
それを聞いた星美は安堵の表情を浮かべた。
さて、早速TOBが行われることとなり、星美はすぐに現金の準備に取り掛かる事となった。
そして長州きもの学園側もこの提案を前向きにうけとめ、好意的な感じだった。
会社としてもこの実体のない異常な株価、そして低迷している業績、今の状態では黒字化維持がやっとで下手をすれば上場廃止基準にすら触れてしまう危険水域でもあったからだ。
翌日、星美は長州きもの学園との契約に向け話し合いに臨んでいた。そして坂東も参加していた。
そこには株主代表として会長が出席しており、星美の隣には旦那が座っている。
その傍らで秘書らしき女性も参加していた。そして会長からの挨拶から始まった。
「初めまして、星美さん。是非とも我が長州きもの学園を宜しくお願い致します」と深々と頭を下げてきた。
「こちらこそ、ご丁寧な対応、痛み入ります」と丁寧に対応する星美。そして今回の本題に入り始めた。
「では本題に入らせていただきます。実は今回の私の目的は一つです。それは貴社のノウハウが非常に欲しいのです。そのため貴社を買う事に決めたのです」と真剣な眼差しで答えた。
長州きもの学園会長は不思議そうな顔で
「このような着物に関しての知識しかございませんが‥TOB価格も市場は間違いなく暴落するでしょうが価格としては破格の方だと思っております。」
「で、買収後はどなたが経営を行うおつもりで?」と会長。
それに対し星美は即答する。
「もし、よろしければ現経営陣にはそのまま残って会社経営を行って頂きたいのですが‥」
「ほう!なるほど。我々は雇われる側となりますがよろしいのでしょうか?もちろん株式に関してはみなし子株主も多く、市場買い取りは難しい状況ですので私共も全力で協力はさせていただきますが‥」
「もちろんですとも!私は会長の手腕を高く評価しておりますので、是非とも引き続き経営をしていただきたいと思っています」と笑顔で答える星美。それに対し
「恐縮です。ご期待に沿えるよう努力いたします」と会長。
「それと失礼ですが星美さんはどの辺りの方なのか詳しく教えていただけないでしょうか?」と質問する会長。すると星美はこう答える。
「そうですね‥強いて言えば私はただの主婦でございますね」と笑顔で答える。それを聞いて驚く一同だが会長は
「まさか!そんなはずがない!」と言ったが星美は
「いえ、本当なんです」と答える。すると会長は呆気にとられていたようだ。
「ではなぜこのような事に?と質問されましたが星美は
「私の夢を叶えるためにはどうしても必要な事なんですよ。このままいけばいずれ日本の伝統文化が衰退し消えていくのではないかと思ったんです」と答えた。
それを聞き驚く会長。
「それは何故でしょうか?」と質問してきた。それに星美はこう答えた。
「まず、最近は若い人でも成人式などで着物を着ることが少なくなりましたよね?これは時代の流れもあり仕方がない事です。そして浴衣に関してはまだまだ盛んですがこれも将来的にはどうなるのか不安ですね。浴衣も夏以外着る機会はありませんからね」と説明し続けた。
その後臨時取締役会が開かれTOBに賛成する旨を星美に伝えた。
そして会長自ら買い付けに協力する姿勢も示した。さらには既存の経営陣も残してほしいとの要望も聞いてもらいTOB期間中に社内で反対派が出ないように根回しも行っていくことも伝えられた。
星美としても思い描いている通りに事が運んでいった事に満足していた。
あとはTOBがうまくいき、上場廃止するかどうかは運任せだ。市場が異常な状態であればあるほど面白い展開になることだけは確かであった。




