ヒミコ、美食家になる?
(どうしよう……)と困惑しながらも考える。
「あの……ヒミコ様はそのような事はしないと思いますが‥」と躊躇いながら答えた。すると
「何か不都合な事でもあるのかしら?」と目を細めながら睨みつけられてしまう。
「いえ……特にはないと思いますが……ただヒミコ様はメリットもないような事で他人を若返らせたりはしないお方ですし。」とはっきりしない態度を示す玉兎に対してローラはイラついていた。
そこでとんでもない提案をする。
「よし!解ったわ!要するにお金を支払えばいいのでしょ?いくら払えばいいの?一千億?いや、5千億位?お金ならいくらでも出すわよ」と言い出した。これには玉兎も驚愕した。
そしてすぐさま否定する。
「いえいえいえ!そう言う問題ではなくてですね!それにヒミコ様がお金をそんなに欲しいわけでも……」
だがローラの圧は強い。ここまで強引な態度に出るのは珍しい。それだけローラにとって若さを取り戻すことにはこだわっているようだ。
「そうね、ヒミコ様は金銭面で困ってはいないようだものね……ではこうしましょう。だったら食料として男性を差し出せばいいのでしょう。定期的に希望した人数を差し出すというのはどう?」
たしかにヒミコ様ならその条件なら飲む可能性が高い。がそれを管理している自分たちにとってはすでに過剰供給状態であり管理するのが大変なのでその条件も却下した。するとローラは怒りだし始めた。
ヒミコの気持ちを買収するには何を差し出せばいいか教えろ!と迫ってきた。だがそれを教える訳にはいかない。というかそもそもそんなものがあるならとうの昔に自分たちが貢いでいる。
しかしどういう訳か玉兎はヒミコが何を求めているのか見当がつかなかった。
「お願いです。このままで醜く年を取っていくのが嫌なのよ」と泣き叫ぶローラ。
(この人も必死なのね‥)
「でもヒミコ様は基本的に気が乗らない事には興味すら示しませんよ。おそらく最初に言った通りあなたが若返る事に関してはメリットがまったくないので無理だと思いますよ」
と冷静に言う玉兎。しかし、ヒミコ様に若返らせる事を承諾させることができればヒミコ教国にとってもリザロン財閥を味方につける事が出来るという大きなメリットもある。
まあ、ヒミコ自身は興味ないだろうが。
「そんなのやってみないと分からないじゃない!とにかくまずはヒミコ様を説得させる方法を考えて頂戴!」と言い切られてしまう。
こうなったローラに理屈は通用しない。だが‥と、考え込む玉兎。何か良い手はないかと考え始める。
玉兎はしばし考えた後こう提案してみる事にした。それを聞いて、
「うーん!それしかないんでしょうけど難しいわねぇ…。でもやってみる価値は十分にありそうだしヒミコ様も絶対に喜びそうね」と提案を受け入れ現在にいたる。
###現代、ヒミコ邸
「そんなことよりローラ様、用件を話して頂きましょう。貴女の要件を話なさい」と玉兎はローラに要件を伝えるよう促した。
「そ、そうだったわ!ごめんなさい。私が悪かったです。いつもの癖であんな態度を‥」と冷静さを取り戻し謝った。
ヒミコはこのまま喧嘩してもいいかと思っていたので残念そうだったが。
「いいのよ。あんなこと言ってしまってごめんなさいね」とヒミコは謝った。
「いえいえ、こちらこそヒミコ様に失礼な態度を取ってしまい申し訳ないと思っています。ヒミコ様とお会いできて光栄です。噂通り本当に美しい方ですね」
(ふむ、確かに綺麗な人ね‥私好みの顔をしているわ。あぁ‥早く食べてみたいわ)とヒミコは思った。
「そう?ありがとう。でも私からしたらローラさんも美しく見えるわ」と言うと顔を赤らめながら照れるローラだった。
「いやだわ!こんなおばあさんが綺麗だなんて!本当にお上手ですこと」と言うが嬉しそうにしていた。
ヒミコは続けて言った。
「ところで今日はどういったご用件でお越しになられたのかしら?」と問いかけた。
「ヒミコ様のお力を借りたくて参りました。お願いできますか?」
「まあ‥内容によりますけど‥一応聞きましょう」と玉兎は答えた。
「単刀直入に話します。私を若返らせてもらえませんか?」
「嫌!面倒くさい、はい、話は終わりね」と言って席を外そうとしはじめた。が、ローラも引き下がらない。
「ちょっと待ってください!どうかお願いします!一生に一度のお願いなのです!」
必死の形相で懇願するローラに対しヒミコはあきれ果てたような表情をしていた。
「えー、私は興味ないんですよね。はっきり言って貴女の若返りなんてどうでもいいことなのよ」と言い放った。
だがここで引き下がるわけにはいかないローラは「そこをなんとか!」と食い下がる。
しかしヒミコの返事は変わらなかった。
「何度も言わせないで欲しいわね。何度言われても私の答えは変わらないわ。あなたに興味が沸かないわ」と断言した。
「ちょっと待ってください、ヒミコ様。ローラ様だって手ぶらできた訳ではないはずです。それなりに見返りは持ってきたと思いますから話位は聞いてあげてもいいかと思います。」と玉兎は助け舟を出した。
「あら、そう?まぁいいわ。話位は聞いてあげる。早く話しなさい」とヒミコはローラに先を促した。
ローラは意を決してこう切り出した。
「まずはこれをご覧ください。さあお前たち、例の物をここへ持ってきて!」と部下に指示を出す。
部下はトラックに積んであった何やら棺桶のような形をした装置を運び込んできた。
そして部下の一人をその中に入れて扉をロックしたのだ。
そしてタイマーのようなハンドルを回しボタンを押した。
装置は動き出した。
「しばらくお待ちくださいね。大体10分程度ね」とローラが言った。
ローラの側近が驚いた顔をしている。
「奥様‥これは‥」と震える声で尋ねる。
「まあ、見ていなさい」
それからきっかり10分後、装置の中に入っていた男が出てきた。しかし……
「あれ?私は一体どうなったんでしょうか?何も変わった気がしないのですが」と部下が困惑していた。
ローラは笑って答える。
「当然よ。あなたは何も変わっていないわ。見た目はね、ヒミコ様、この男を食べてみてください」とヒミコにお願いしてきた。
「え!?どういうことです。ローラ様…え?食べる‥嫌です。死にたくないです」そう言いながら男は逃げようとした。
しかしローラに同行してきた護衛が立ち上がり男の側に行き首根っこを掴みヒミコの目の前に投げつける。
「今です。食べてください」とローラは言う。
ヒミコは最初は戸惑っていたが、
「よく解らないけど美味しいんだったら食べるわよ」と言って食べようと手を伸ばそうとした瞬間、目の前にいる男は涙を流しながら逃げようとしたが無情にも護衛によって取り押さえられてしまった。
そしてそのままヒミコによって捕食された。
ヒミコの顔が驚きに染まる。
「これは‥凄いわね‥今まで食べた人間とは別次元だわ」と呟いた。
ローラは笑みを浮かべながら答える。
「そうでしょう。でも、こんなものは序の口よ。本題はここからよ」
と男が入っていた機械を見た。
ヒミコの顔色が変わる。
「これは‥」と言いながら唾を飲み込んだ。その反応を見てローラは続ける。
「さあ、どうかしら?」
「それは‥」と口籠もりながらヒミコは言い淀んだ。
それを察して玉兎が補足するように話す。
「これは人間の改造…というよりも精気の味付け行うためのマシーンです」
「まあ、詳しい解説はエンジニアではないのでできませんが、もしかするとヒミコ様は同じような味しか解らないかと思い科学者を集めさせて開発してみました。これで食事が一層楽しくなればと思いまして」とローラは誇らしげに胸を張って答えた。
「もしかして‥これを私に提供してくれるということなの?」とヒミコは信じられないといった表情で尋ねた。




