リザロン財閥
「あのーうさ‥玉兎さん、入り口でお客様がお待ちです」と部下が内線で話しかけてきた。しかし玉兎は不機嫌モードだ。
「今、うさって言ったわよね。うさって?」と言ってくる。
内心ひやひやだ。もちろんうさぎなんて言ったら殺されてもおかしくないのだ。
「いえ、言ってません!」としらを切る部下。
玉兎は舌打ちをすると
「全く……あなた達はヒミコ教国の神殿で働く者としての意識が低いわ。私を何だと思ってるの。もっと敬意を払いなさい!」と叱責する。
「申し訳ございませんでした!」と謝罪する部下。玉兎はため息をつきながら内線を取った。
「こちらは神殿です。どうされました?えっ!ヒミコ様のお客様ですって?」
「はい!ヒミコ教国のトップに会いたいと」と内線電話の女性官僚が言う。
「えっ!私にですか?申し訳ございませんが、予定がありますのでお断りさせて頂きます」と断る玉兎。
「でも、どうしてもお会いしたいとの事です」
「解りました。これから行きます」そっけない返事をしヒミコと一緒に玄関へ向かった。
そこにはリムジンが止まっており紳士的な男性と運転手がいた。
「これはこれは、ヒミコ様、玉兎様、お目にかかれて光栄です」と紳士的な男性が話しかけてきた。
「私はリザロン財閥一族のローラ様の依頼を受けお迎えにまいりました」
「リザロン財閥一族!?」
「えぇ、ローラ様はヒミコ様と玉兎様のファンでして寄付をしたいそうです」
「へえー。ありがたいわね。では遠慮なく頂きます」そう言ってヒミコはその男性と運転手に冷気を浴びせ凍らせてしまった。
そして冷凍庫に放り込む。
玉兎は頭を抱えた。こういう所がヒミコの良くないところなのだ。
「ちょっと待ってくださいよ!なんでそんなことするんですか!?」
「え?だって寄付って言ったじゃない。だからありがたく頂こうかと」
「いや、絶対そういう意味じゃないと思いますよ。寄付と言ったら普通はお金と思うでしょ!」と呆れる玉兎。
しかしヒミコは
「私にとっては同じことよ。玉兎ちゃんも欲しいなら言ってくれればいいのに。遠慮しなくて良いんだから」
と悪びれもなく言うのだった。
「え?ちょっと待ってくださいよ。きっとお願いがあって来たんだと思いますよ!」と玉兎が言う。
「そんなの知らんがな、用があるなら自分が来いっていうの」とヒミコは答える。
「しらんがなって…」さらに呆れる玉兎。これだから困るのだ。
ヒミコは好奇心旺盛な為に興味があることはとことん追求するが興味がないことは全く眼中にないのである。
その上、ヒミコはかなり強欲だ。自分の物にしたいと思ったものがあれば手段を選ばずに奪い取ろうとする性格なのである。
しかし今はおとなしくしてもらっているので良しとしておこう。
「それでリザロン財閥ってどんな財閥なの?」ヒミコは玉兎に聞く。
「はい、世界を実質的に支配している大富豪ですね。でも何の用だったのでしょう?」
「なんでもいいわ、そんな事」
「…」
「それよりもうさちゃん、アリスを呼んでくれない」と言われアリスが呼び出される。
「何ですか?一体?」またろくでもない事で呼ばれたんだろうと思いぶっきらぼうだ。だがそれを気にも留めずにヒミコは言う。
「あなたにこれあげるわ、ちょっと試着してみて」
そう言ってアリスに一着のレオタードを渡す。玉兎の表情が引きつる。
「えっと…なんでこんなものを私が着なくちゃいけないんでしょう?」
とアリスが恐る恐る聞く。
「あら?興味ない?それ、私の手作りよ?」
「……」
「それに玉兎も喜ぶわよ?」
「え?」と驚くアリス。そう言われたら着るしかないだろう。
「どう?気に入った?」とヒミコが嬉しそうに聞いてくる。
「いえ、まあ、いいんじゃないでしょうか……」と玉兎は棒読みで答えた。
ヒミコが手渡してきたのはレオタードだった。しかも身体のラインが丸わかりの物でかなりきわどいデザインである。
そんな物を渡されて着れるはずもない。
そもそも女性にセクハラだろ。と思う玉兎だったが言えなかった。玉兎がアリスを見ると彼女は無表情でいた。
しかし仕方がない。断ってもしつこいだけだと思い渋々着てしまう。
「ほら、よく似合うじゃない!曲線美が凄いわね」ヒミコはご満悦な様子である。
「しかし思った通りね。胸が少し垂れてるわ」
ヒミコがニヤつきながらそう言うとアリスの顔が青ざめていく。
「ちょ、ちょっとヒミコ様!それは言わないでください!」と必死に訴えるアリス。だがヒミコは容赦しない。
「そんな事ないでしょ?ちゃんと胸は整ってたわよ?さっきちょうど男が二人手に入ったのよ。アリスにあげるわ」
アリスは、ギクッとした。その意味はこれから自分の若返りをするという意味なのだから。
ヒミコ自身は年を取らないからいいのだが、人間は違う。この場合はヒミコが精気を吸い取ってそれをアリスに与えるという事だ。一見若返らせてもらった女性はメリットしかないようだが実際はいろんな意味できついのだ。
何と言っても人が食べたものを吐き出してそれを口にすると同義なのだ。簡単に言えばゲロを食べさせられることだ。
大体男一人の犠牲で1年若返る。今回は2名だから2年という事だ。アリスからしてみれば自分が吐き出してしまいたい心境にもなる。
もちろん、玉兎も定期的にこの儀式を行っているがいつまでたってもなれるものではない。
しかしそんなことはヒミコの知ったことではない。彼女にとっては食べ物と同じ事なのだ。食べられた人からすればいい迷惑でしかないが。
そしてアリスの苦痛の時間が始まろうとしていた。玉兎は固唾を呑んで見守っている。
「ヒミコ様……」とアリスは弱々しく言ったが無視される。そしてヒミコは、二人の男をベッドの上に寝かせた。
「さあ始めましょう」と言うヒミコ。
「あんた達は幸せよ。私の儀式に参加できるんだからね」
先ほどの男達を床に並べて無造作に精気を吸い取っていく。みるみる男たちは干からびて行った。
そして次にアリスに入れ替えだ。ヒミコがアリスの肩に触れると段々と‥いや見た目では2年程度だから区別はつかないが精気を流し込んでいく。
「うわ…この感覚‥気持ち悪いよー…うえ、胸がむかむかしてきた」とアリスは内心で思っていた。
これが一番の問題なのだ。食べられた人間の意識が移ってくるのだ。簡単に言えば憑依のような現象が起きるのだ。これがすごくキツいのだ。
ヒミコの儀式は1時間にも及びようやく終わった。
「はあ……終わった」とアリスがぐったりしている。これでしばらくは若いままでいられるだろう。
「どうだった?」とヒミコが聞く。
「凄く気持ち悪いです」とアリスは苦笑しながら答えた。
「そう、良かったわ」とヒミコが言う。
「いや、どこがよかったのよ」と見ていた玉兎は心の中で突っ込みをいれていた。




