ヒミコ七変化
エビカワはその水着を見て気が遠くなった。まさかビキニタイプだとは思ってもなかったからだ。普段着ないタイプの水着なのだ。
「本当にこんなのを着るんですか?」と李玲玉に確認すると、
「大丈夫!みんな着てるから!」と言われてしまった。
「でも‥」と言いかけるも「諦めなさい。ヒミコ様のご命令なんだから従うしかないでしょう?」と言われてしまった。
そして数日後、ついに収録が行われる日が来た。台本はすっかりと変えられてヒミコが変身して姿を変えているという設定にされてしまったのだ。
撮影が始まる前、スタッフ全員に集合がかかった。
「今日はヒミコ様の番組の初収録です。みなさん、準備はいいですか?」とADが呼びかけると一同は大きな声で返事をした。
そしていよいよヒミコが登場する時が来た。スタジオ全体がざわつく。
「じゃあまずは……女神の七変化から行きましょう」と森下絵里香はマイクを持ってヒミコにカメラを向ける。
「わかりました。じゃあ行きます」と言って変身魔法を使い女神姿になる。そしてそのままセットに入って座る。
スタッフは感動のあまり涙を流す者や声にならない声を上げるものまで居た。
そのまま何シーンか撮ったところで休憩に入る。
そして李玲玉のバニー姿を見た絵里香は絶叫していた。
「リリン!なんでそんなの着てるの!?恥ずかしくないの!?」
李玲玉は赤面しながら答える。
「べ、別にそんなに恥ずかしくないですわ。これでも総理大臣なのです。民衆を盛り上げるのも大切な役目ですから‥」と虚勢を張って答えるのだが……。
李玲玉は内心不安でいっぱいだったのだ。本当ならあんな恥ずかしい格好なんて絶対に嫌なのだ。しかしこれも民のためを思うと恥を忍んでやらねばならないと割り切っていたのだ。だが実際はそう簡単には割り切れるものではないようだ。
「ある時は有名女子高の女子高生」とナレーションが入り高校が映し出される。実際にある高校を貸し切っての撮影だ。ただし出演してくれる生徒は本物だが衣装だけはセーラー服に変更されている点だ。
そうすることで不自然さを緩和しているのだ。
ちなみにその女子高生は絵里香だ。かなり年齢にギャップを感じるが大人の色気があふれ出しているため文句が出てこない。そして教室にいる女の子に声を掛けるシーンが映る。
もちろん本当に出演している生徒なのだが……
「こんにちは。一緒に遊びに行かない?」「あ、あの……私これから授業が……」「そんな事言わないでさ。ちょっとだけ付き合ってよ」絵里香が女の子の肩に手を回すシーンが映る。
その時、先生の登場だ。
「こら!授業中だぞ。席に戻れ!」と注意する。だが絵里香はそれを無視してその女子生徒を連れ出す。
そして廊下に出る。
「ああ、もう仕方がない。私が説明しに行くしかない」と先生が愚痴をこぼしながら教室に戻ると絵里香は手を振って笑顔で見送る。
教室に入った先生は呆然と立ち尽くしていた。
「どうしたんですか?先生。もう授業が終わっちゃいましたよ」とクラス委員長らしき女子生徒が声を掛ける。
先生は慌てて時計を確認する。
「えっ!もう終わり?」
「そうですよ。次の授業は体育ですから遅刻しないでくださいね」と委員長が言う。
体育の授業が始まり今度は絵里香のブルマー姿での授業が始まった。もちろん周りもだ。いつの時代の風景なんだとみんな思っているのだが誰も口だしたりしない。
それほど似合っていたし何よりヒミコ様用に設定したものだからだ。
続いて「ある時は新米婦警」というナレーションと共に警察署が映し出される。アリスの新米婦警姿はなかなか迫力があり可愛らしさもあって非常に魅力的だった。
「よし!この事件を解決するのは私たちだけだ。ついて来てくれ!行くぞ!君たち」
というセリフと共にアリスは自分の部下と一緒に走り出した。その姿は凛々しくもあり可愛らしさもあり見る者を釘付けにした。
「おい、そこのお前!何をしているんだ!」と強面の大男を前にしても臆することなく声をかける。それはまるでドラマのような出来栄えだった。
そして最終的に事件を解決して「終わったな」と安堵の表情でその場に崩れ落ちる。その姿にスタッフ一同、大興奮だった。
「続いては……」
森下絵里香が次のシーンを読み上げる。
「ある時は白衣の天使!いや‥女神様」とナレーションが流れる。アリスは今度はナースの衣装に着替え、撮影現場へと向かう。
先ほどの新米刑事とは打って変わり、とても優しげな雰囲気を醸し出している。
ナース姿のアリスが手術室へと入ってくると手術が始まろうとしていた。医師達が慌ただしく準備に勤しむ中、アリスが手術台へと上がって患者に話しかける。
「これからあなたに手術を受けます。大丈夫、心配しなくてもいいから。私たちがついてます。必ず助けますから」そう言うと手術が始まろうとするが患者が暴れだし騒ぎ出した。
するとアリスは患者に向かって微笑みかけると優しく語りかけ始めた。
「大丈夫。落ち着いて。私がついてるわ」と言いながら頭を撫でる。
その姿に看護師は目を潤ませており、医師達も感動していた。
「では手術を開始します」と医者が宣言すると、アリスは患者に寄り添い励まし続けた。その姿はまるで天使のようであり、周囲からは歓声が上がるほどだった。
そして最後に「続いては……」と森下絵里香が言うとまたナレーションが流れた。
「ある時は女性コマンドー」ナレーションと共にエビカワの戦闘服姿が映る。
「さぁ、早く逃げて」と一般兵士たちに指示するが一向に逃げない。その様子を見てエビカワがため息を吐きながら言った。
「全く、仕方がないわね……私が敵を殲滅してやる」と言って敵陣へ突撃していく姿に観客は沸き立った。そして激しい銃撃戦の末、ついに敵を倒すことに成功したのだが、そこに敵の増援部隊が到着した。
「もう駄目なのか……」と絶望的な状況の中、エビカワが再び立ち上がり言った。「まだよ!みんな頑張って」というと彼女もまた敵に向かって突っ込んでいった。
そして勝利を収めた。観客はスタンディングオベーションでその健闘ぶりを称える。
「いやー良かったですね!これなら視聴率も取れますよ!ヒミコ様!!」と絵里香が言うがヒミコは渋い顔のままだ。
「これが私のイメージなの?こんな事私にやらせやかったの?」と不機嫌顔だ。
だがアリスは反論する。
「そうですよ!この私がこの姿でやったんですよ!ヒミコ様がこれをやってこそヒミコ教は世界に浸透するんですよ!」
「そうだ、そうだ!こんな可愛い女性がヒミコ教を宣伝するんですよ!最高じゃないですか!」と周りの人たちも賛同する。
ヒミコは顔を真っ赤にしている。
「ある時は泳ぐマーメイド」ナレーションと共に今度は水着姿に着替えたエビカワが登場する。
フィットネスタイプの水着を着て縦横無尽に泳ぎ回る。当初はビキニタイプの予定で行く予定だったのだがヒミコの拒絶により変更が決まったのだ。
しかしフィットネスタイプでもかなり際どいラインのものなので水着自体はしっかり目のものを用意したのである。
「では潜ります」とスタッフが声を掛けるとエビカワはプールに飛び込んだ。水中から顔を出して「ぷはっ」と息を吸う。その表情はとても可愛らしかった。
その様子を見て観客は湧き上がる。そしてエビカワが水面から出てきて言った。
「皆さん、お待たせしました。私、〇〇番目の魚です。よろしくお願いします!」と挨拶をして、再び水に飛び込むと大きくジャンプする。その姿に観客は驚嘆の声を上げた。
「おおーすごいな!まるでイルカみたいだ」などと観客が盛り上がっている。しかしヒミコは呆然とした様子で見ていた。どうやら彼女には理解できなかったようだ。
そして最後はやはりというべきか。李玲玉の出番となったのだ。
「続いてはある時は妖艶なバニーガール」ナレーションが流れる。
今度は黒色のレオタードだ。お尻の部分はなぜか透けている。おまけに網タイツ、頭にはウサギの耳を模したアクセサリーをつけている。
その姿はまさにバニーガールと言わんばかりである。
李玲玉がセクシーなポーズを取り、ウインクをする。
そして最後に手を振ると大勢の観客から歓声が上がったのだ。
スタッフも皆、拍手喝采である。




