身代わりバンク
傷跡も見当たらないくらいに綺麗に回復していく。
そして李玲玉は
「ヒミコ様!ありがとうございま・・す」
と言い残し意識を失った。ように思われたが強烈なものを目の当たりにして失いかけた意識を取り戻してしまった。
それは、彼女を抱えて空中へ飛び出したかと思ったら機体をカッチカチ氷漬けにし、何とサハラ砂漠に無造作に放り投げてしまったのだ。こいつには助けるという概念はないのか…と
「ちょ、何してるんですかヒミコさま…いや、ちょ…酷いんじゃないんですか?」と驚いて抗議し始めた。彼女は怒りが込み上げてきたのだ。
しかし、ヒミコは
「なにがよ。私はあなたを助けてあげたんですけど?それよりもお礼の一つも無いなんて失礼じゃないの?」
「そういう問題じゃありませんよ!あれを見てください!せっかく救出したのに機体ごと投げ捨てるなんてあんまりですよ!」
「だから投げる前に氷でプロテクターのようなものを作ってから投げたでしょ。中の人間だって凍らせたから大丈夫よ!ちょっとやそっとで壊れるようなやわな凍らせ方なんかしてないつもりよ」と反論してるがなんかちょっとずれてるところがヒミコ様だ。何を言っても無駄そうだ。
「もういいです。それより今は何とかして地上に降りましょうよ」と提案した。すると、
「当たり前でしょ。ご褒美は受け取らなきゃね。」と言って地上へおり解凍を始めた。全員解凍され喜んでいた。怪我をした人も何人かいたがヒミコにより男性だけは治療してもらえたが。
その凄さをみてハイジャック犯は呆然としていたが。
ヒミコの行動を見ていた李玲玉がヒミコに尋ねてみた。
「あのー、つかないことをお聞きしますが…ご褒美って何のことですか?えっとまさかとは思いますが男性の怪我だけ治してるって事は…まさか冗談ですよね」
「そうよ。ご褒美は男性よ」とあっさり認めた。李玲玉はため息をついた。
「やっぱりか……まぁ、そのつもりだと思ったけど……」と諦めたように呟いた。そしてヒミコは
「ほら、そいつら女性はどうでもいいでしょ。ここに置いとけば誰か助けに来るでしょ」と言ってはいるが事情をしらない女性達からは怪我は放置されてるとはいえ軽傷ばかりだったから感謝されまくっていた。
しかしそれを無視して巨大な氷の入れ物をつくって楽しそうに男共を放り込んでいた。その時の男性達の表情は恐怖と不安でいっぱいだった。……
「あの‥私たちはこれからどうなるんでしょうか?」と一人の男性が不安そうに尋ねてきた。
「もちろん食べるのよ!」と笑顔で答えた。本気で食べるつもりらしい。だが、それを聞いた李玲玉がまたもや止めに入った。そう言うと犯人達や女性客達は「ひぃ!」と怯えている。
一方の男性陣は悲鳴をあげ
「食べないでくれーー」「嫌だー死にたくない!」「俺には妻と子がいるんだ!」と氷の入れ物の中で氷壁を必死に叩きながら泣き喚いている。
「あなた達は本来ならとっくに死んでるのよ。それを私が助けたの。だからご褒美としていただくだけじゃない」とめちゃくちゃな事を言ってるヒミコ。
それを聞いてみんな恐怖で真っ青になりながら呆然としていた。
しかしそんな中一人の中年のおじさんだけがなぜか余裕の顔をして一枚のカードを取り出しヒミコにみせてきた。
そのカードはエメラルドグリーンの色をして何やら番号が書いてある。
「これがあれば私は助けてくれるんですよね」と何やらどや顔で勝ち誇った態度だ。
「何これ?そんなの知らんし‥」と言いながらカードを放り投げてしまった。
そうしたらおじさんは急に怒り始めてしまった。
「な、なんでですか?助けてくれる約束のカードなんでしょ!約束は守れよ!」
「うっさいわね!約束なんてしてないしそんなもの知らないから」とヒミコは言うと、
「ちょ、ちょっと待ってください!ヒミコ様!その人は餌にしてはいけません」と李玲玉が割ってはいってきた。
ヒミコは「なによ?」と不機嫌そうに言うと、
「この方は身代わりバンクの会員なんです。別名エメラルドカードとも言いますが」と李玲玉が説明してくれた。
「何よそれ?私そんなの知らないんだけど?」ヒミコは少しキレ気味に言い返した。李玲玉は説明した。
「元々は女性のためのバンクだったんですけどね。ヒミコ様は女性の病気や怪我を治してくれませんから」
「当たり前でしょ!治したって何にもメリットないし」
「そこなんですよ。問題は。病気や怪我で苦しんでる女性がお金が欲しい男性にお金を払って餌になってもらう代わりに女性がヒミコ様に治療をしてもらう。ここまではわかりますよね」
「ええまあ、あんたが勝手に決めたシステムよね。まあそれにはメリットがあるから了承はしたけどさ」
「その延長上のようなシステムです。ヒミカ様に恩はあるが食べられたくはない。そういう時にお金をもらって身代わりになってくれる人をヒミコ様に差し出す。そしてヒミコ様は仲介料‥いや、保険料と言った方がしっくりくるかな‥その保険料を毎月頂くというサービスです」
「…」開いた口がふさがらないとはまさにこの状況だ。
本当に意味が分からない。なんだって?保険料?そんなの知らなかった。
「あんたは‥本当に何を考えているのよ!信じられないわ。それにそんなお金貰ってないわよ!」
「えっとですね。ヒミコ様はお金に興味がないので国庫に入っていきます。そしてそのお金は国のために使われてるんですよ」
「いや、そいうことじゃなくてさーなんで私に一言も相談なく勝手にやってるのって言ってるの!」ヒミコは文句を言ってるが李玲玉は悪びれもせずに話し続ける。
「これもヒミコ様のためを思っての事なんです。ほら、この方のカードが身代わりバンクのカードで。しかもVIPなお客様なんです」
「そうじゃなくてさ、黙って事を進めるなって言ってんの!わかんないの」ヒミコはブチギレ寸前だ。
「ああ、すいません。つい癖で」李玲玉はテヘペロっとかやってる。
「ふう。もういいわよ。とっとと身代わりを連れてきなさいよ」とヒミコが言うと李玲玉はどこに電話をかけて手続きの指示をしはじめた。カードをみせたおじさんもタブレットを使って指定された口座に身代わり料を振り込む手続きをしていた。
そして20分も経たないうちに中年の男性が連れて来られてその場で美味しそうに召されてしまった。ヒミコなりの嫌がらせのつもりでもあった。
「いやー毎月高いお金を払っていたかいがありましたよ。一千万近く払ってましたからね。そして今支払った紹介料の一千万を合わせて2千万だが命を変えたと思えば安いもんですね」と喜んでる。
「それでは今後のためにも会員を続けられますか?」と李玲玉が聞くともちろんと言う返事が返ってきた。
そして支払い手続きをして会員を継続した。ヒミコは「ああ、そう」と適当に返事をして無視を決め込んだ。
ただヒミコにとってまたしても誤算が生じたのだ。嫌がらせて精気を吸い取られ干からびて死んでいく姿をみた他の男性たちから
「俺も会員になるから助けてくれ‥少しくらい高くなってもいいから」と喚く者達がというより全員だが。が集まって来てしまった。
「まいどありー」と李玲玉はニコニコしながら対応をし始めたのだ。
ヒミコは思った。『ああ、面倒臭いことになってきた』
だが、こういうことをやってもらってるおかげで食事に困る事がなくなったわけだしだからこそ助けに来たのだ。……だが、毎度毎度こんなことではたまったもんじゃない。なので李玲玉はあとでシメルことにする。




