ヒミコ教国建国
そしてついに信徒の一部が抗議し始めたのだ。曰く、
「この大仏を壊すことはヒミコ様に対する冒涜行為だ!」とか「これは信仰の対象なのだ。故にこれを壊すということは我々への宣戦布告だ!」と騒ぎ出したのだ。
それを見た李玲玉はヒミコをなだめながらヒミコ信者たちに事情を説明して静まるように説得し始めた。
「皆さん落ち着いて下さい。ヒミコ様は何もこの大仏を取り壊したいのではありませんよ。ただ静かに暮らしたいだけなんです。皆さんの想いもよく分かります。しかしあまり騒いでいるとヒミコ様が怒ってしまいます。そうなったら皆さんも困りますよね?」と言うと信徒たちは黙って去っていった。
ホッと一息ついた李玲玉であった。が、大仏が話題になり聖地巡礼旅行として大人気となり旅行客で溢れかえってしまいお土産屋など異様にたくさん出没し、女神人形なるものまで売られ始めた。
なんなら、各国の通貨まで使えるほどになっていた。また各個人の家にはヒミコ像が祭られている家まで出現する。しかもこのヒミコ像が高級品とされており世界中に輸出されていくようになったのだ。
李玲玉は内心で焦っていた。
(これはまずいぞ……)
案の定ヒミコはご立腹だ。
「何勝手に私の人形とか作って売ってるのよ!肖像権とかどうなってるのよ!」少し怒りの矛先がずれてるようだが。
いやその方向でよいのかもしれない。そう考えた李玲玉は
「お、落ち着いて下さいヒミコ様。あの人形の売り上げはこの国の税金となって立派に役に立っております」と言い訳をしているが勝手に作った事には触れないでいる。
するとヒミコは
「そ、そうなんだ……。ならいいわ…っていい訳ないわ…何よ!女神人形って。何度も言うけど私は捕食者、人間を食べてる存在なの!また変な誤解で人が集まって来るでしょ。それより税金て何よ!誰が決めたのそんなこと!なんで私には情報が入って来ないのよ」とご立腹。まあ、普通に考えればそうだよね。
李玲玉は苦笑いをするしかなかった。
「まあまあヒミコ様、一旦落ち着いてください」李玲玉は宥めようとするが火に油を注ぐばかりだ。
「落ち着ける訳ないでしょ!なんなのよ税金って。私がいない間に何勝手に決めてるのよ!バカじゃないの!」とヒミコの怒号が響き渡った。
李玲玉は焦っていた。とにかくヒミコの機嫌を取らなければならない。
「税金などは私が決めました。だってヒミコ様に予定を聞くといつも勝手にやればっていうからそれじゃっという事でこの国の事を思って勝手にやらせてもらったんですけど」
「‥‥」ヒミコは言葉が出ない。まさかこんなことになってるとは想像もしてなかったのだ。
勝手にしろと言われても普通はやらんだろう。せめて政治がらみ位は聞いてからやれよとヒミコは内心突っ込みを入れていた。
「そ、そう……じゃあしょうがないわね……。でもさあ……これからの為に国の正式な名称だけでも決めたほうがいいわよ。ヒミコ教国では長いでしょ」と言った瞬間李玲玉は「グッジョブヒミコ様」と心の中で盛大に拍手喝采を送った。
しかしヒミコはまた失敗してしまったのだった。
まさかそれが世界史上で最古にして最大の宗教国家になると夢にも思っていなかったのである。
李玲玉はすぐに全世界に向けて発信したのだ。
『これよりこの地域をヒミコ教国と改名する』と。
「なんでやめておけって言う名前をわざわざ採用するのよ!」
「だっていい名前だなと思いましたから。ヒミコ様も暗にこの名前にしろと言ってるようだったので意向をくみ取っただけです」
「ちげーよ!」と心の中で叫ぶヒミコだったがこうなるとこの女はもうどうしようもないと悟り何も言わなかった。さすがにそこまで野暮なことはしなかった。
「それよりサハラ砂漠の持ち主にはどうするのよ。どこかの国の領土だと思うけど。領土を奪ったことになってるのよ」とヒミコは心にもない発言をしている。
ヒミコにとって他人の領土なんて本当はどうでもいいのだ。逆らえば力づくで叩きのめして奪うだけなんだから。しかしそれを知らない李玲玉は必死に弁解する。
「領土って言っても、ここは誰も住んでいない不毛の地ですし」
「いや、モロッコ、西サハラ、アルジェリアなどいろんな国が分割して支配してるはずよ」とヒミコは急に知識人のようなことを言い出した。
「まあ、大丈夫ですよ。どうせ文句を言ってくるような国なんてヒミコ様が潰しちゃうでしょ」ときっぱり言った。
確かにその通りだしヒミコの言う事は正しいのだが李玲玉の言い分も一理ある。
「それはそうだけど……」と言いかけてやめた。これ以上話しても無駄だと思ったからだ。
その後の顛末は語る必要もないだろう。
そして各国の王族貴族などをも収容する立派なお城が完成した。ヒミコをかたどった巨大な城下町には華美な装飾の建物が並んでいた。
「ヒミコ様。完成しましたよ」と言うと、ヒミコは「まあ……きれいね……」と言ったっきり立ち尽くしていた。
「でっ‥これ全部あんたが指示したの?」と聞き返したが、李玲玉は笑顔のままうなずくだけである。
「さすがにこれはやりすぎたんじゃないかしら?」と冷や汗を流しながら尋ねるが、李玲玉は
「大丈夫ですよ。これくらいしないと威厳が出ませんから」と自信満々だ。
「ハァ…」もうため息しか出ない。そして疲れたのか呆れてヒミコはもう何も言わなくなった。
「まあいいわ、任せるわ」と答えるヒミコに李玲玉は安堵の表情を浮かべた。
するとヒミコは
「ところで、私にはまだ報告が上がって来ていないのだけど、この国のことについて教えていただけるかしら?税金のことや政治のこととか」と聞き始めたのだ。
李玲玉はギクッとする。ヒミコ様に隠して色々やってたからだ。
「も、申し訳ございません……」と謝罪するしかなかった。だがここで諦めるわけにはいかない。なんとかしなければ。そう思った李玲玉は必死に説明することにする。
「まずこの国はヒミコ教国と命名され宗教国家と位置づけられております」
「あと、防衛大臣にアリスを任命しました」
「はぁ?アリス?防衛大臣?なんなのそれ?必要なの?」
「必要に決まってますよ!ここは宗教国家ですしヒミコ様のお膝元。防衛は必須ですよ。だから選挙で決まったわけです」
「まあ、何が防衛かは知らないけど選挙で決めたならいいわ。あと私を殺そうとした女の名前が出て来たから驚いたわ」
「ハッ!申し訳ありません。ヒミコ様の命を狙うなんてとんでもないことをしたことは事実ですが今は熱心な信者であり忠誠心もあります」と李玲玉は平謝りした。
「別にいいわよ。あいつは美味しくなかったし。それに私は許すつもりも許さないつもりもないから」と返した。
「そういえばヒミコ様、国民から税金を集めてるじゃないですか。あれについて何か意見はありませんか?せっかくなんでヒミコ様に決定権を与えて……」と話を逸らす。
「何よ急に。まあ別にいいんじゃない。私の命令で集めてるみたいだけど」
「あと、色々知りたいことがおありならぜひ国会に出席してみてはどうでしょうか?」と提案するが、
「そんなものまで作ったの?私に内緒で色々やってくれるはねぇ…、あんたとアリスがそろうとロクな事しないわね」と不満を漏らすと
「おほめに頂きありがとうございます」とかえって来た。褒めたんじゃないんだけど……
「褒めてない!もういいわ!とりあえずあんた達が作ったこの国を見に行くわ」と言って立ち上がった。




