サハラ砂漠に大仏が建つ
そして再び教団活動が始まった。
「ヒミコ様。今日はどのようなご予定でしょうか」と李玲玉に聞かれるので
「特に決めてないわよ。何かあるの?もうあんた達はあんた達で勝手にして!」と答えた。
すると
「はい。では勝手にさせて頂きます」と言ってヒミコ教団による信者の勧誘が行われた。
そのうえヒミコは女性には厳しいので病気や怪我を治したいのに男性を用意できなかった女性のために巨大で最先端技術の研究や治療を行なえる医療施設すら作ってしまったのだった。そしてこれが人類史上最大級の施設となり世界各国の病人などがこの施設に殺到してくることになるのだが当の本人であるヒミコはそんなこともつゆ知らず、冷凍餌を一人食べ終えまたのんびりと眠りに就いた。
しかし彼女達は気づかない。そのせいで新たな問題が起きるとは思ってもいなかっただろう。
そして数か月後ヒミコと李玲玉は顔面蒼白になって驚きを隠せないでいた。
なんと……なんと……なんと……ここに全世界の数百万いや数千万単位の女性達が集まってきたのだ。いや違う。男性も結構いる。旦那さんや恋人達なのであろう。
例え男であっても本人の承諾がなければ食べられることはないという噂が広がってしまったようだった。そしてさらに驚くべきことにその半分は外国人なのだ。
「嘘でしょ……なんでここにこんなに……」と驚くヒミコに対して李玲玉は「まあ、我々も有名になりましたからね」と平静を装っていたが内心かなり焦っていた。
さらに移住者達はおのおの勝手に家を建て道路を引きなぜか行政まで作り住民管理さえ行い始めた。
しかも住民の人数は日に日に増え、今では村どころか街となってしまっていた。更には貯水タンクに貯め込んだ水を利用しヒミコの力を借りずとも畑を耕し農作物を栽培している。これは完全に李玲玉の失敗である。ヒミコが砂漠でも住める環境を整えてくれるという情報を聞いて引っ越してきた者達もいるのだがまさかここまで来るのは予想外だった。完全に想定外だ。しかしそれはそれで好都合でもある。ヒミコ教団としては布教活動も兼ねており信徒を集めたいという点では大きな進歩であった。しかもそれだけでなく、他国の要人たちの接待もし始めたのだ。つまりヒミコ教団が世界的宗教法人と名乗るのももうすぐなのかも知れない。
しかし……しかし、いくらなんでも増え過ぎだ。そしてヒミコが恐れている女もかなり増えてきた。
ヒミコは砂漠でゆっくりのんびりするのが目的でやってきたはずなのに。
「ヒミコ様、お久しぶりでございます。以前は命を助けていただけありがとうございました。」と若い女性の信者が挨拶に来たのだが
「いちいち挨拶なんていいから、それよりあんた誰?あなたを助けた覚えなんてないんだけど」と尋ねる。
「覚えてないのも無理はありません。昔、ヒミカ様の命を狙った時に回りの男性兵士は全員殺されてしまいましたが私はまずいからという理由で山に置き去りにされたアリスです」と言って来た。あの時の!アリス。ヒミコの食料である男たちに囲まれていた女の子だ。そしてその女の子を無傷で山に放り投げて捨ててきたのは紛れもなくヒミコだった。
「ああ、いたわねそんな女。で、なんでここに来たの?まあ、この際どうでもいいけど」と結構いい加減なヒミコだった。
「私、ヒミカ様を尊敬しているんです!」と言ってきたので思わず「はぁ?尊敬って……何言ってんの?」とヒミコは驚くが構わず話を続ける。
「だってヒミコ様は女性達も助けてくれるって聞いて。女性のために医療施設まで作ってくれるなんて。しかも医療費は格安だし。」と言ってくる。
「なによ!あんたおかしいんじゃないの!」と言っても気にせず続けるので
「あんたはまずいからあっちいけ!」と怒鳴ると、
「ひぃー!やっぱり私なんか食べたくないんですね?そうですよね。こんな小娘じゃ食べ応えも無いですよね。わかりました」と言って帰ってしまった。
「まったく、なんなのよあの女。まあいいわ」と諦めたヒミコであった。しかしアリスはこれだけで終わらない。再び現れる事となるのである。
ヒミコの知らない所で。
なんとかヒミコに気に入られたかったアリスは李玲玉に提案を持ち出したのだ。
「李玲玉様、ご提案があります。」ととつぜん現れて提案を持ち出した。
「何?その提案って言うのは?」どうせ大したことではないだろうとぶっきらぼうに聞いた。
「それはですね、ヒミコ様の大仏を作ってみてはいかがかと思うのですが‥」
それを聞いて李玲玉はハッとした。そんな考えが一度も出なかった自分が恥ずかしくなったのだ。
尊敬するヒミコ様の銅像を作る事さえ思いつかなっかったのに大仏だと…それはいいと瞬時に直感するのだった。
早速ヒミコ教団の総本山のような所を建築する事になった。しかも隣にヒミコの巨大な銅像を作って、それを安置する大聖堂も作る事にした。
この計画はヒミコに秘密にしている。
完成して初めてのお披露目としてヒミコの驚く顔を拝んでやろうと意気込んでいるからだ。
そしてヒミコもこの事を全く知らないのである。
というわけで翌日の朝から建設工事が始まったがヒミコは無関心なので何が出来上がるのかは全く興味がなかった。そして何ヵ月後。
ヒミコの目の前には信じられない程の巨大な大仏とそれに合うように作られた大聖堂が建っているではないか!
「なにこれ!」と驚いていると、
「驚きましたか?ヒミコ様、お誕生日おめでとうございます」と李玲玉は微笑みながら言うのであった。
「私の誕生日?いやいやあんた達知らないでしょ。私だって忘れたのに、ま、そんなことはどうでもいいわ。それよりなにこれ?なんで私の仏像があるのよ。やめてよこんなの!わたし、これでも捕食者なのよ、殺人鬼なのよ。悪魔教か何かなのこれ?」と珍しくかなり動揺していた。そんなヒミコの様子を李玲玉はニヤニヤしながら見ているだけだ。
そして李玲玉はヒミコの耳元で囁いた。
「ヒミコ様、私達はヒミコ様の事が大好きなのです」と。それを聞いた瞬間顔が真っ赤になるヒミコ。どうやら照れているようだ。ヒミコ教団の者たちからすればヒミコは命の恩人であり信仰の対象である。
だがその一方でヒミコを救世主として崇拝する者達も多くいた。ヒミコの持つ神のような美貌も手伝い多くの人々が集まって来るようになり今では世界各地から信徒が押し寄せてくるほどになってしまった。
しかしヒミコにとって女はおいしくない。ただただ鬱陶しいだけだった。
こうしてヒミコのサハラ砂漠での静かで快適な生活は完全に崩壊したのだった。
それでもヒミコは、静かな日常に戻りたいという一心で李玲玉に言ってみるがやはりというか当然というかそれは無理だと答えられた。
せめて大仏だけは取り壊そうと冷気で破壊を試みたのだが一応は信仰の対象だからか信徒に必死に止められてしまう。




