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みすとら  作者: 詰乃 愛莉
第一章『Promised Love(約束された愛)』

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〔25〕妖怪参加型・演劇発表会⑦『第四幕:大団円フィナーレ』

「まぁて~」師匠と私は、半魚人を追いかけました。

「ぎょわん、ぎゅわん、ぎゃわん、でゅわん。でででっで、でででっで・・・」ティンパニーと管楽器が金属音剥き出しの原始的な表現で、緊迫感を(あお)りました。

「さぁ、追い詰めたぞ。おとなしくホウキに戻るのだあああぁぁぁー!・・・」師匠の台詞は迫力に欠けたので、音響さんがエコーをつけてくれました。

「ぎょっぎょぎょ~、いやっぎょ~」半魚人は必死に抵抗の叫び声をあげました。

「何をさわいでおるのじゃ?」奥から、太陽の女王そよりさんが現れました。頭と右半身が太陽で、左半身と下半身が雲の姿でした。左右に侍女(風鳥先生と加古先生)が二人控えていました。

「これはこれは、太陽の女王さま。お騒がせしました。こちらの半魚人は我が家のホウキなのです。半魚人に化けたので、イタズラせんように追いかけてきました」太陽の女王は、半魚人をチラリと見やると、

「イタズラはいけませんよ」と半魚人をたしなめました。

「ぎょ~にもなりません」半魚人は観念しました。

「さぁ、デガスよ。お主の魔法で、半魚人をホウキに戻すのだ」師匠から命じられました。私は、杖を構えました。

「おぬしは、なんどもしくじっておる。それは、杖ではない。ごぼうじゃ」

「どっわっは~。またか~」会場は暖かく笑ってくれました。私は杖を構え魔法をかけました。

「ホウキにもどりゃんせ~!」杖の先から青い光が放たれ半魚人に注がれました。

『どすこりばでなとぅるきめろ~ん』半魚人は、一瞬ぬりかべに変わりましたが、男の子になりました。

「お~っす! やっと人間に戻ったぜ!」切り傷だらけの元気な男の子でした。背番号6のユニフォームを着ていました。

「(はじめて、人間化できたのは・・・)」太陽の女王役のそよりさんは、驚いていました。

「(本当に、男の子になるんだ・・・)」師匠役のここあちゃんも、驚いていました。

「(あは~、元気でカッコ良いよ~)」けものの女王役のカスミは、ご機嫌でした。

「(半魚人って、さめとだったの?)」妖怪の女王役のユキは、半信半疑でした。

「(ハリネズミくんが、ぬりかべで、半魚人で、この男の子だったんだね~)」私は、理解しました。

「おいおい、何だよ、その反応(リアクション)は! まだ演劇の続きだろ?」私たちは、ハッとしました。

「めでたいことです。そなたは、ホウキにもどらず、そのまま生活しなさい。悪さをしたら、ホウキに戻すから気をつけなさい」師匠は、男の子に注意しました。

「あぁ、ホウキだった頃を思い出して、一生懸命生きてやるぜ!」男の子は誓いました。


「でゅわ~ん、びろ~ん、ば~りぞ~ん・・・、じゃじゃじゃじゃ~ん!」オーケストラの荘厳な演奏が始まりました。そよりさんが演奏した音楽が多重録音で再現されました。

「いとおしく、しんじみて~

 なやましく、かんがみる~

 ゆくさきの、しあわせを~

 うたがわぬ、すなおさよ~

 あいあふれ、さちあふれ~

 くるしみを、しらぬゆえ~

 しあわせに、まみれたる~」

 けがれなき、むくなひと~」

師匠と私は、歌いました。

太陽の女王と侍女たちが、両脇に寄り添い歌ってくれました。

妖怪の女王と妖怪たちが、私たちの後ろに並び歌いました。

けものの女王とドーブツたちが、その後ろに並び歌いました。

オーケストラの演奏が演劇を盛り上げ、大盛況のうちに演劇発表会が終わりました。


発表会後、男の子が私に近づいて来て言いました。

「何だよ、お前。夢で見ていたモグラに、本当にそっくりだな~」私は照れてしまいました。

「キミも、ハリネズミくんや、ぬりかべくんにそっくりだよ~」

「ぬりかべ? それ、俺なのか? 足を怪我してしばらく動けなかったからな~」

「もぅ、だいじょうぶなの? 痛くないの?」

「すっかり治ったよ!」

私たちのやり取りを、そよりさん、ここあちゃん、ユキ、カスミが見てました。


「(ゴールデンレトリバーが、ケンタウロスなのは分かったわ! 彼もそのうち、男の子になるのかしら? だって、いちばん仲がいいんだもの!)」そよりさんは、疑問に思いました。

「(好意を寄せてくれる、ヤギはペガサスで、ドラキュラなのね・・・。お断りだわ! 白黒のブチ猫がパンダコアラなんだけど、カンガルーなの? 今日はいなかったわね・・・。黒い柴犬はミイラ男なのね。論外だわ!)」ユキが思いました。

「(あは~。白いウサギが一反木綿なんだね~。素直な性格だよ~)」カスミは思いました。

「(私が、一番仲が良いのは、黄色い猫のピューマなんだけど。妖怪にならなかったわ・・・なぜ?)」と、ここあちゃんは思いました。ここあちゃんに、金色の髪の毛が肩まで伸びている青い目の男性が近づきました。黄色いネクタイをして、青いワイシャツを着て、赤いジャケットを着ていました。

「とってもステキな劇でしたよ」と言って、白いバラを一輪手渡しました。

「だっれ、あれ? カッコイイ!」ユキが興奮しました。

「王子様みたいだね~」カスミが言いました。

「ここあちゃんも人間化に成功したのかしら?」そよりさんが言いました。

「どこかの貴族かな?」たたずまいがステキだったので、お似合いでした。

「ありがとう」と言って、ここあちゃんはバラを受け取りました。

「今日は、お疲れでしょう。また、会いましょう」と言って、王子さまはどこかに行ってしまいました。


校長先生が言っていた「結婚相手にするつもりで、相手を育てなさい」と言う言葉が、少しずつ現実味を帯びてきました。

誰にも邪魔さえされなければ、穏やかに愛を育てることが出来るのです。

邪魔さえ、されなければなのですが・・・。


演劇発表会後に、ユキやカスミのご両親が楽屋まで遊びに来て下さいました。

「とっても面白かったわよ~」ユキのお母さんが言いました。

「お客さんもたくさん入ったし、喜んでもらえたね~」ユキのお父さんが言いました。

「キヨちゃんは、ほとんど主役だったね~」カスミのお母さんが言いました。

「主役のここあちゃんもいい演技だったね」カスミのお父さんが言いました。

みんなで、わいわいやっていると、そよりさんのお父様とお母さまがいらっしゃいました。

「みなさん、お疲れ様です。大変楽しませて頂きました」

「ありがとうございます」私たちはお礼を言いました。

「こんなに盛大な発表会を準備して頂いて、ありがとうございました」ユキが言いました。

「なかなか礼儀正しいお嬢さんじゃ。今度みんなで、うちに遊びにいらっしゃい」

「ぜひ、喜んで」私たちは、そよりさんの家に遊びに行くことになりました。

さて次に人間化するのは、一体誰なのでしょうか?


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