〔24〕妖怪参加型・演劇発表会⑥『第三幕:妖怪牧場②妖怪ゾーン』
「まぁて~」師匠と私は、ハリネズミを追いかけました。
「ちゅっちゅちゅ~」とことこハリネズミは逃げました。そして、とうとうハリネズミを妖怪ゾーンの奥に追い詰めました。
「ででどん。ででどん。ででででどん・・・」ティンパニーの音色が、緊迫感を表現しました。
「さぁ、追い詰めたぞ。おとなしくホウキに戻るのだー! だー! だー! ・・・」師匠の台詞は迫力に欠けたので、音響さんがこだまをつけてくれました。
「ちゅっちゅちゅ~、いやっちゅ~」ハリネズミは必死に抵抗の鳴き声をあげました。
「何をさわいでおるのかぇ?」奥から、妖怪の女王が現れました。頭と右半身が雪女で、左半身と下半身が蛇の女王でした。背後に、ゴールデンレトリバー、白黒のブチ猫、黄色い猫、白いウサギ、ヤギ黒い柴犬がズラリと勢ぞろいしました。
「これはこれは、妖怪の女王さま。お騒がせしました。こちらのハリネズミは我が家のホウキなのです。ハリネズミに化けたので、イタズラせんように追いかけてきました」妖怪の女王は、ハリネズミをチラリと見やると、
「おいた(ズラ)はいけませんよ」とハリネズミをたしなめました。
「ちゅっちゅちゅ~」ハリネズミは観念しました。
「さぁ、デガスよ。お主の魔法で、ハリネズミをホウキに戻すのだ」師匠から命じられました。私は、杖を構え魔法をかけました。
『ぬばめら~』ハリネズミは、半魚人に変わりました。
「おいおい、どうせなら人間に戻せよ~」半魚人は不機嫌そうでした。
「これこれデガスや。杖ではなくて、それはつくねじゃ」
「どっわっ!」会場は大爆笑でした。
「ていっ!」
「えいっ!」
「そ~れっ!」
「・・・」私は、つくねを杖に持ち替えて、手当たり次第に魔法をかけました。
『どろへっぷ』ゴールデンレトリバーは、ケンタウロスになりました。
『ぴっぱぴり~ん』白黒のブチ猫は、パンダコアラになりました。
『がばべぽ~ん』ヤギは、ペガサスになりました。
『かんぶりこ~ん』黄色い猫は、ピューマになりました。
『ぬ~でるばーぐ』黒い柴犬は、ミイラ男になりました。
『とにゅへろ』白いウサギは、一反木綿になりました。
「おおおぉ~!」会場はざわつきました。
「これこれ、デガスや。おぬしの腕が未熟なのではない。それは杖ではなく、チュロスじゃ」
「どっわっはっ!」またしても会場中に大爆笑を巻き起こしました。
「どれってっぷ~、ぴろ~ん、ぺ~ん、ぷぅ、ぱろ~ん~。ぽらぴ~ん、ぺ~ん、ぽぉ~・・・」トランペットとオーケストラの豪華な演奏で、妖怪たちがダンスを始めました。
妖怪の女王さまは、艶やかな舞いを披露しました。日本的な表現で舞っているのに、伴奏はトランペットとオーケストラでした。文化がステキに融合した表現でした。会場の拍手も、手拍子も、カスミのものとは違ったしっとりしたものでした。
「(ユキちゃん、すてき~)」師匠は、演技を忘れて感動していました。
「(ユキって、こんな一面があるんだ~)」私も感動していました。
妖怪の女王の舞いが終わると、追いかけっこが始まりました。
「まぁて~」私は、パンダコアラに魔法をかけました。
『とへきゅん』パンダコアラは、ネコ魔導士になりました。
「逃げまどう、ネコ魔導~」と言って、どこかに逃げてしまいました。
師匠は、ピューマに魔法をかけて黄色い猫に戻しました。
「戻りなさい!」私は、ミイラ男に魔法をかけました。
『がぼっきゅ~ん』ミイラ男は、骸骨になりました。
「ぐっへっへ~。スケルトン、すけべるとん!」私のローブのすそを引っ張り始めました。
「や゛め゛て゛~!」私は叫びました。
「戻りなさい!」師匠は、骸骨を黒い柴犬に戻しました。
妖怪の女王は、ケンタウロスに話しかけていました。
「ケンタウロスさん、もとに戻ってください」
「私は、ここにいません。ケンタウ留守」
「ならば仕方がありません」妖怪の女王は諦めました。
「戻ってくださいね」師匠は一反木綿に魔法をかけました。
「い~よ~」
『にゅたこりぷ』一反木綿は白いウサギに戻りました。
「ペガサスさん、戻ってください」妖怪の女王がお願いしました。
『ぺにゅへると』ペガサスは、ドラキュラになりました。
「魔が差すペガサス。これは、失礼」ドラキュラは、じっと妖怪の女王を見つめました。
「・・・」妖怪の女王は表情を変えませんでした。
「女王様、血を吸わせてください」
「だ・め・で・す!」妖怪の女王は強く拒みました。
「・・・この失恋を癒すために、ラーメンでも食いに行こう・・・」スタスタと、歩いて何処かに行ってしまいました。
その場に残った妖怪の女王、師匠、私、ケンタウロス、ピューマ、半魚人、白いウサギで、音楽に合わせて踊りました。
ふしぎなことに、練習もしていないのに上手に踊れました。
踊りが終わると、半魚人が逃げて行きました。
「こんなんじゃ、いられないよ~」
「まぁて~」師匠と私は、追いかけました。




