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みすとら  作者: 詰乃 愛莉
第一章『Promised Love(約束された愛)』

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〔23〕妖怪参加型・演劇発表会⑤『第二幕:妖怪牧場①けものゾーン』

「デガスや、着きましたよ。ここがあやしいですね」動物園に見えましたが、看板に『ようかい・ウェルカム・パーク』と書いてありました。

「師匠、ここに書いてあるのですが、私には信じられません。『妖怪牧場』なんてものが、本当に存在するのでしょうか?」

「うむ、良い質問です。あると思えばあるし、無いと思えばないのです。もし『妖怪牧場』がなかったら、話が先に進みません。だから、あると考えることにしましょう」

「便利な考え方ですね。勉強になります」

「大人の知恵と言うやつです。おおいに、なまなびなさい」

「はい!」私たちは、魔術師用の料金を二人分払って中に入りました。ときどき、10%割り引きになるか、10%割り増しになるか分からないシステムでした。サービスで、ナッツクリームアイスを二つもらえました。だからおそらく、割り増しだったかもしれません。私たちは、アイスをぺろぺろなめながら、先に進みました。

「おいし~、ナッツクリームなのにチョコミントが入っています」師匠に教えました。

「おいし~ね。イチゴも入っているよ~」師匠は怖い魔術師ではなく、まるで女子そのものでした。

「ジャーン! てれって、ぱらりら、ぴろりーんこん!」生演奏が、何か事件が起こることを教えてくれました。


ねじり鉢巻きをしてお面を三つかぶった、おじさんがお菓子や飲み物を売っていました。

「へい、らっしゃい! へい、らっしゃい! へい、らっしゃい! さぁさぁ、ご利用しておくんなまし!」

「あ!」私は大声をあげそうになりました。

「おっと、可愛らしいお嬢さん魔法使いさんたちだ。飲んでいきな~、食べていきな~。おっちゃん、機嫌がいいからタダにしとくよー。おっちゃんは、校長先生じゃないよ~」

「おっちゃん、おーきにー」師匠は、綿菓子を食べ始めました。

「おっちゃん、まいどー」私は、焼きイカを食べ始めました。

「お嬢ちゃん、『まいどー』は、おっちゃんの台詞だ。とっちゃいけないねー」

「あ! 間違えた!」会場は、『どっ!』と笑いが起きました。

「おっちゃん、ここいらでハリネズミ見なかった? ホウキが化けて逃げてったの」師匠がたずねました。

「ハリネズミか~。ちっこいのが逃げてったな~。奥の『けものゾーン』だ」

「おっちゃん、ありがとー」二人で、お礼を言いました。そして、奥に進みました。

「どーん! じゃじゃーん、ぷりっと~」音響効果で、場面転換を伝える賢い演出でした。


「師匠、妖怪牧場の『けものゾーン』についたらしいです」

「うむ、何が出てくるか分からん。用心するように!」

「はい!」私は、ちくわを構えました。

「デガスや。それは、杖ではありません。ちくわです」

「どっ」会場の笑いを誘う役が、板についてきました。

「すいません、師匠」と言って、私はヒノキの杖を構えました。

『あしきものはこんちうに、良いものは妖怪かドーブツに、はやく人間になりたいな~』と、『けものゾーン』の入り口に書いてありました。

目の前に、ゴールデンレトリバーが現れました。

白黒のブチ猫も現れました。

ヤギも現れました。

黄色い猫が現れました。

黒い柴犬が現れました。

白いウサギも現れました。

「じゃじゃーん、ぷっぽぷう~ぽっぽ~」トランペットとオーケストラの豪華な演奏で、ドーブツたちがダンスを始めました。

ドーブツたちは、立派に前座をつとめました。ダンスパートの主役が現れました。

「どっどっど! じゃじゃーん、ぱらりらぽ~~~~ん!」頭と右上半身は虎の女王で、左下半身はカモシカでした。それがグラデーションでつながっている奇抜(シュール)な衣装でした。けものの女王はカスミでした。ヒップホップと、能と、ブレークダンスを混ぜたようなダンスを披露しました。会場の手拍子に合わせ、カスミは気持ちよさそうに踊っていました。

「おやおや、ステキなダンスじゃないか。きっと彼女は、ここの(あるじ)に違いない。話をしてみよう」師匠は、ドーブツの女王様に話しかけました。

「もしもし、ちょっとおたずねするが、ここにちっこいハリネズミが逃げてきませんでしたかのぅ。ホウキが化けておるのじゃ。いたずらされたらえらいことじゃ」

「あは~。あっちに逃げたよ!」女王は軽やかに答えました。

「あなたのダンスは見事です。見とれてしまいました」

「ありがとー。カスミはね。ダンスで世界を救うんだよ!」女王はご機嫌でした。ドーブツたちと、女王様のダンスに見送られながら、私たちは奥に進みました。


途中で、鳴きながら寝っ転がってケータイ動画を見ている「なまけるジョクソー」と、(むせ)びながらお茶を飲んでいる「スマン・ハナセン」がいました。

「くわばら、くわばら。彼らは妖怪になりかけだ。にんげんのままでいて欲しいものだ」師匠は、言いました。そして『けものゾーン』の奥に、『妖怪ゾーン』がありました。私たちは、ハリネズミが逃げていくのを見ました。

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