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みすとら  作者: 詰乃 愛莉
第一章『Promised Love(約束された愛)』

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〔21〕妖怪参加型・演劇発表会③それぞれの自主練習

「あなたは、魔法使いここあの一番弟子ハリネズミもぐらの『デガス』です。師匠のここあさんと二人で、最初から最後まで出番があります。だから、全員の動きを把握していなければいけません。全員の練習を、良く見ておくように」と、筋子先生に言われました。校長先生が先生方全員に自主練習の指示を出し、筋子先生が生徒たちに自主練習の指示を出していました。演劇発表会まで、あと一週間になりました。勉強している時間を取れないので、先生方も生徒も全員が朝から晩まで演劇の練習をしました。

劇場では、特殊効果演出専門業者なるものが出入りし、舞台設備専門業者がセットを組むそうです。音響効果のプロ、照明技術のプロ、特殊メイクのプロ、有名ブランドのスタイリスト、グッズ販売の業者も参加し、何やら大掛かりな話になってきました。私立学園の演劇発表会ではないのでしょうか。

 脚本を見ると、私の台詞は、

「あ~!」、

「すっごーい!」、

「なにそれ~!」しかありませんでした。


まず、校長先生の練習を見に行きました。エキストラのハズですが、ド派手な衣装を着ていました。手に持って居たのは、青龍偃月刀でした。何か見えないものに話しかけていました。

「ふっ、『軍神の化身の下半身』とは俺さまのことよ。喜んでこの刀の(さび)になりな!

 え? この刀が気になるって? ネット通販で買ったのよ。二桁万円かかったよ。やっと使える時がきたよ。待ったね~、この時を。歌っちゃおうかな~? え~い、歌っちゃえ~!

 歌は世につれ~、世は歌につれ~

 釣って釣られて~、釣られて釣って~

 釣ったあなたが悪いのか~?

 釣られた私も悪いのよ~~~

 え~い、メンドウだ! 一文字斬りー! 8の字斬りー! へのへのもへじ斬りー!」手当たり次第に、まわりの物を斬っていました。近づくと危ないので、遠巻きに見ることにしました。脚本の何ページ目を練習しているのか、分かりませんでした。


 松柳先生は、寝っ転がって動画を見ていました。

「先生は、何の役を練習しているんですか?」と聞くと、

「『(じょく)(そう)を作る練習』だそうです。『お前はいつも、携帯電話で動画ばかり見てるから、褥瘡が出来るまで見てなさい!』と言われました。あんまりです・・・」

「罰なのか、ご褒美なのか、分かりませんね~」と言ってみました。

「? そーいう考えもありますか?」先生は考え込んでいました。


 シャベランカ-先生がむせていました。

「先生は、何の練習をしているのですか?」と聞くと、

「『誤嚥(ごえん)(せい)肺炎(はいえん)』の練習だそうデス。『お前はいつも、言葉を話せないふりをするから、いっそのこと話せないようになってしまえ!』と言われました。あんまりです・・・」

「出来ないふりを続けていると、本当に出来ないものだと思われてしまうんですね~」と言ってみました。

「? 出来ないふりをしてイルだけです。本当は出来るんです!」

「そうだと思います。先生は出来るお方です」シャベランカ-先生が、私の言葉に勇気づけられました。先生は、目からウロコとタラコを落としていました。

「私がやらねば、誰かがやりマス。誰もがやらねば、誰もやりません。その時こそが、私の出番です!」

「(あっちゃ~。改心したのかな~?)」私は、他の先生の練習を見に行きました。


 風鳥先生と加古先生は、お茶をしながら役作りをしていました。

「い~ね~。ステキ~。カ~ワイイ~」と、加古先生が言いました。

「サイテー。ダメねー。だっせー」と、風鳥先生が言いました。

「あら、だめよ。みっちゃん。今は『だっせー』とは言わないわ」

「『さいあくー』くらいの方がいいかな? ミキちゃん」

「そうね~。そっちの方がいいわねー」

「きゃっ、きゃっ、・・・」

「わい、わい、・・・」楽しそうなので、話しかけることが出来ませんでした。


ユキは、セリフの練習をしていました。洋風のお姫様のステキな衣装を着ていました。

「おぉ、ロミオ! アナタは何故ロミオなの? ロメオでもゴネロでも構いませんわ! 私に何か言葉をかけてくださいませ!」感情の入った良い演技でした。

「パチパチパチ・・・」と拍手をして、ユキに話しかけました。

「うまい、うまい、上手ね~」

「え~? 何なのこれ~? こんなシーンあったっけ?」ユキは、脚本を確認しました。

「何ページのどこのシーンか分からないけど、上手だったよ~」

「筋子先生は、こんな練習をさせて何を考えているのかしら? 他の人たちは、何の練習をしているの?」

「先生方は、病気の練習をしていたよ」

「一体どんな劇になるのかしら?」ユキは、不安を口にしました。


カスミは、能とヒップホップとラジオ体操の練習をしていました。

「カスミ~。頑張ってる~?」

「あ~、キヨちゃん」カスミはご機嫌でした。

「カスミはね~。ダンス部門の担当なの~。ダンスで世界を救う役なんだって~」カスミは嬉しそうでした。

「すごい役ね~。主役じゃない!」

「え~? 主役は、ここあちゃんでしょ? 劇に参加できるだけで、楽しいからい~よ~」セリフの練習は、なさそうでした。


そよりさんは、楽器の演奏をしていました。

情熱のトランペットであり、魂のドラムであり、可憐なフルートの演奏をしていました。

「そよりさんは、練習が多いね~。大丈夫~?」パートごとに演奏して、録音を繰り返していました。

「何かよく分からないけど、『多重録音』で劇の音響を作るそうよ。私は、本番でもそれにあわせて演奏するの」

「役での参加はないの?」

「筋子先生の話だと『演奏で世の中を救う役なのです』って言ってたわ」

「ユキはお姫様役、カスミはダンスで世界を救う役、そよりさんは演奏で世界を救う役なの? 全員が主役ね~」

「どんな劇になるのかしら? 全体練習が待ち遠しいわね」そよりさんの録音は既に終わっていましたが、追加録音が公演日の前日まで繰り返されていました。ここあちゃんが練習に顔を見せたのは、本番の当日でした。姉妹都市の美須(みす)法螺(ほら)市とのあいだで交換留学生に参加していたとのことでした。そして演劇発表会の前に、全員の前で筋子先生が衝撃のひと言を言いました。

「みなさん、頑張ってください。今日の演劇発表会は全て、アドリブになります」

「!」

「!!」

「!!!」

「あは~」

「お客さん、たくさん観に来るよ。どうなるの?」私は不安で仕方がありませんでした。私たち全員が、ワイヤレスマイクと、ワイヤレスイヤホンを装着しました。そして、舞台監督である筋子先生の最終確認が始まりました。

「みなさん、不安で一杯なことだと思います。ですが、その緊張感が欲しいのです。作り上げられた、練習されまくった演劇など私は演じたくありません!」

「(あなたは、演じさせる方ですが・・・?)」全員が疑問に思いました。

「本日の演劇では、皆さんが練習を重ねた台詞の半分の半分の半分くらいしか出てきません」

「(ほとんど全部、出て来ないじゃないですか~)」全員が辟易していました。

「ですが、ご安心ください!」

「(できません・・・)」

「イザとなれば、妖怪さんが乱入して助けてくれます」

「(それが、こわいんです・・・)」

「それでは、始めましょう! Let’s Show Time!」

「(グダグダになるのは困ります)」そよりさんは思いました。

「(折角の舞台演劇なのに~)」ユキは、残念そうでした。

「あは~」カスミはご機嫌でした。

「どうしよう・・・」私は不安でした。

「やるしかない!」ここあ師匠は覚悟を決めました。

抵抗する気もないのですが、ついに始まってしまいました。

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